
ファッションを学ぶ学生がリポーターとなり、今会いたい人を訪ねる本連載。今回は文化服装学院1年生の西田玲奈さんが、イラストレーターやYouTuber、モデルなど幅広く活動し、今夏に自身のアパレルブランド「ハスア(HASUA)」を立ち上げたhannahを訪ねた。同世代だからこそ聞いてみたい、仕事やクリエイション、将来への思いに迫る。
PROFILE: hannah/クリエイター、ブランドディレクター

PROFILE: 西田玲奈/文化服装学院1年生

高校時代は100社に電話で売り込み
「いつか独立したい」と選んだ道

西田玲奈(以下、西田):学校を辞めて、イラストレーターとしての活動を始めたと聞き、同世代の私はとても刺激を受けました。もともと高校生の頃から、イラストレーターとして独立することを考えていたのでしょうか?
hannah:ずっとイラストレーターになりたくて、高校を卒業する前から、いつか独立したいと考えていました。絵を描くことは、私にとってセラピーみたいなものなんです。
西田:18歳くらいから、出版社に自分のイラストを売り込んでいたんですよね?
hannah:はい。出版社に売り込みの電話をかけていました。今考えると結構やばいことをしていたと思うのですが(笑)、両親がどちらも本を出していたこともあり、「私もいつか書籍を手掛けたい」と、とにかく必死でした。
100社くらいに電話した中で、3、4社くらいは話を聞いてくれて、実際に会ってもらうことができました。当時は出版にはつながらなかったけれど、その数社が話を聞いてくれたことは自分の中ですごく大きくて、今の自分の糧になっていると思います。
西田:高校卒業後はデザインの専門学校に進学しましたが、2年生になる前に退学しています。学校を辞めて、自分の道を進むことに不安はありませんでしたか?
hannah:独立するまでの道を探すためにデザインの学校に通っていたのですが、そこではイラストを学ぶことができず、2年生になる前に退学することにしました。両親もフリーランスでクリエイティブな仕事をしていたため、昔から会社に就職することはあまり考えていませんでしたし、少しずつ仕事をいただけるようになっていた時期だったので、学校を辞めること自体にはそれほど不安はありませんでした。
とはいえ、友だちと将来について話していても、私と同じような進路を選ぶ人はほとんどいなくて。そういう部分では、少し不安を感じていましたね。
西田:18歳の頃には実現しなかった書籍の出版も、2025年にはかなっています。KADOKAWAから発売したエッセイ本「ハイライトには残せないけど、生きていた日」は、どのようなきっかけで出版することになったのでしょうか?
hannah:KADOKAWAの編集者の方が私の活動を見てくれていたみたいで、お声掛けをいただきました。エッセイ本ですが、松岡一哲さんが撮影してくれた写真や、私が描いたイラストもたくさん使っていただいています。いつか、ずっと作りたいと思っていたイラストの本も出版できたらうれしいです。
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西田:現在はイラストレーターだけでなく、YouTubeやモデルなど活動の幅も広がり、今年8月にはアパレルブランド「ハスア」も立ち上げました。今、最も力を入れていることは何ですか?
hannah:どれもやりがいはありますが、今頑張っているのは、立ち上げたばかりの「ハスア」の運営です。もともと、いつか自分で描いたイラストのグッズを作ってブランドにしたいという思いがありました。そんな中、ある企業にお声掛けいただき、ブランドを立ち上げることになったんです。11月に東京、12月に上海でのポップアップも実施予定で、今準備を進めています。また、ファンの人たちとのつながりを感じられる場として、YouTubeの活動も楽しいです!
「今、自分が考えていることが一番大事」
日常から生まれる発信

西田:YouTubeでは「ファッション予測」など、ファッションをテーマにしたコンテンツも多いですよね。ファッションを取り上げるようになったきっかけはありますか?
hannah:もともと洋楽や海外セレブのゴシップ誌が大好きで、今でも当時の雑誌を大切に保管しています。そういった雑誌でいろいろなファッションを見て好きになって、昔からファッションのイラストもよく描いていました。YouTubeでは、私自身が好きなファッションを取り上げることもありますし、もともと自分で情報を集めることが大好きなので、TumblrやPinterestでトレンドをリサーチしています。だから動画内でも、好きなものが自然とあふれちゃっているような感じだと思います(笑)。専門性の高いコンテンツやラグジュアリーブランドについて発信するというよりは、視聴者が身近に感じられるようなカジュアルな配信を心掛けています。
西田:「自分の好きな服の見つけ方」「散財する前の動画」「服あるのに着る服がない時」など、私自身も共感する動画が多く、つい見てしまいます。そういったコンテンツのアイデアはどこから生まれるのでしょうか?
hannah:私が撮る動画は結構日常的なものが多くて、自分自身の悩みから生まれることが多いです。初めて自分の悩みを動画で打ち明けたとき、想像以上に共感してくれる人がたくさんいて。その経験から、「私が思っていることって、もしかしたら他の人も思っていたことなのかも」と気付きました。遠いところではなく、身近なところ。今、自分が考えていることが一番大事だと思いながら、動画作りを続けています。
視聴者には同世代でファッションが好きな子も多くて、DMで悩みや意見を聞かせてくれることもあります。そういった感度の高い子たちの気持ちを知ることができるのはすごくありがたいし、“今だからこそ”抱える気持ちだと思うので、それを大切にして、発信すべきなんじゃないかと感じています。
西田:映像の編集やテロップの入れ方も好きです。特に「台北VLOG」の雰囲気がすごく好きなのですが、映像作りで影響を受けているものはありますか?
hannah:ドキュメンタリーが大好きなんです。最近のYouTubeは効果音をたくさん使ったコンテンツも多いと思いますが、私はもっとリアルで、空気感を感じられたり、見ている人が同じ時間を過ごしているように感じられたりする動画が好きで。昔テレビで放送されていたようなドキュメンタリー番組からヒントをもらうこともあります。
西田:今年8月には、アパレルブランド「ハスア」を立ち上げました。どのようなコンセプトで作っているのでしょうか?
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hannah:同世代の女の子たちにとって、お守りになるようなブランドにしたいと思っていて、実際にお守りも販売しています。デザインには私が描いたイラストを使ったり、「ハスア」のキャラクター“ハスアちゃん”を取り入れたりしています。私のインスピレーション源は、2000年代の雑誌やファッション、昔のブログなどです。だから、少しビンテージライクなアイテムが多いかもしれません。
ブログって、今はそんなにはやっていないかもしれないけれど、知らない人の部屋をのぞけるような感覚にしてくれるところが大好きなんです。だからこのブランドでも、ブログのようなものを作れたらいいなと思って、“ハスアちゃん”の架空のブログを意識していて、オンラインショップでもブログを展開しています。ファーストシーズンのテーマは「好奇心」。襟元のカッティングなど、シンプルでありながらディテールにはかなりこだわりました。
西田:私が韓国に留学していたときも、現地ではブログが流行していました。日本では、私たちの世代でブログをやっている人をあまり見ないので驚きました。
「自分は何になりたいんだっけ?」
1人の時間を大切に

西田:ブランドを立ち上げたり、さまざまな仕事に挑戦したりと積極的に活動している姿からはあまり想像できませんが、不安や孤独を感じることもありますか?
hannah:もちろんあります。そもそもイラストレーターとして活動を始めたときも、自分の中でコツコツとやり続けてきたという感じで、周りの人にはほとんど言っていなかったんです。学校を辞めたときも、社会から一歩外に出てしまったような感覚がありました。「自分と同じ進路の人なんて誰もいない」「インターネットで探してもいない」と思っていたけれど、孤独を極めたら、その先にいる人がいるような気がします。
ある意味、孤独は私にとって大切なもの。人といるのは楽しいけれど、本当の自分が何を考えているのか分からなくなってしまう気がして。「自分って何になりたいんだっけ?」みたいなことって、結構置き去りになってしまうと思うんです。だから一人になって、自問自答する時間が必要。そんな時間をすごく大事にしています。
落ち込むこともありますが、そんなときは期限を決めて気持ちを切り替えたり、あまり後ろを見ないようにしたりしています。今が一番、自分が全力を出せる時期だと思っているから「やり切るしかない!」みたいな気持ちで乗り切っています。
西田:アパレルブランドは企業と協力して運営していると思いますが、それ以外の活動は基本的に1人で行っているのでしょうか?
hannah:そうですね。請求書などの経理関連から、モデル依頼のメール対応まで、基本的には全て自分でやっています。確定申告も、やっていくうちに学びました。でも、分からなかったら両親に聞くことができるので、その環境もありがたいです。毎日のルーティンは日によって全然違いますが、“仕事イコール趣味”みたいな感じなので、あまり苦痛ではないです。
西田:同世代の多くは、ちょうどこれから進路を決めたり、就職したりする時期だと思います。最後に、同世代に向けてメッセージをお願いします。
hannah:今って情報がすごく多いじゃないですか。SNSでは常に新しいトレンドが流れてくるし、疲れちゃうこともあると思うんです。顔や体型、ファッションも、トレンドはすぐに変わる。
だからこそ、自分自身のことを考えることが大切だと思っています。情報に惑わされず、自分が1番心地良いと思える自分でありたい。私にとっては、いかに自分を見失わず、律して過ごすかが大事です。みんなにも、そんなことを大切にしてもらえたらいいなと思います。
「ハスア」ポップアップストア情報詳細
■東京 ポップアップストア
日程:11月28、29日
会場:ベルデ青山ビル 2階
住所:東京都渋谷区渋谷2-6-12
■上海 ポップアップストア
日程:12月5、6日
会場:上海申報館
住所:中国上海市黄浦区汉口路309号申报馆
PHOTOS:TOSHIYUKI MAEGAWA