ファッション

「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」がロンドンのテート・モダンで一夜限りのパフォーマンス マティスの代表作から着想したカプセルコレクションを発表

オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSE ISSEY MIYAKE)」は9月16日夜、英国ロンドンを代表する現代美術館テート・モダン(TATE MODERN)内にあるザ・タンクス(THE TANKS)で一夜限りのイベントを開催した。世界のさまざまな場所でブランドのモノ作りの成果を発表する「オープンステュディオ(OPEN STUDIO)」の第2弾となる今回は、テート(TATE)と協業。数ある所蔵作品の中でも象徴的なアンリ・マティス(Henri Matisse)の「かたつむり(The Snail)」を起点に制作したカプセルコレクションを、ドレスデン・フランクフルト・ダンス・カンパニー(Dresden Frankfurt Dance Company、以下DFDC)による生き生きとしたパフォーマンスと共に披露した。

アーティストが制作現場を公開する慣習にちなんで名付けられた「オープンステュディオ」は、2013年に設立された同ブランドが25年に新たに始めたプロジェクト。世界を巡り、各地の人々や異なるクリエイティブ分野と交流しながら、場所や発表形式に縛られずブランドのモノ作りを多面的な体験として発信することに取り組んでいる。第1回は、25年6月に“名誉招待ブランド”として参加したフィレンツェのピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)で、ショーとエキシビションを通して26年春夏コレクションを披露した。ただ、プロジェクトとしてはシーズンごとの発表にとらわれることなく不定期で行われており、今回は構想から約2年間をかけて実現した。

「かたつむり」に宿る生命力を表現

今回の協業にあたり、テートがブランドに提案したのは「かたつむり」を用いることだった。1953年に完成した同作は、晩年のマティスを代表する切り絵作品の1つ。病によって絵筆を取ることが難しくなった彼は、鮮やかな色を塗った紙を切ったり裂いたりして、それらを助手の手を借りて貼り付ける方法で制作を続けた。「かたつむり」は、その殻が削ぎ落とされたイメージから生まれたもので、色とりどりのパーツが渦巻くように配されている。

そんな作品の実物を初めて目にしたデザインチームは、「作品の大きさに驚くとともに、その生命力に強く惹かれた」という。そして、作品を構成するそれぞれのパーツが服になるという発想から制作をスタート。その服をまとった体が切り絵の枠からはみ出したり戻ったりするさまを、ダンサーと共に表現することを構想した。根幹となるのは「今でもマティスの『かたつむり』は生き続けているんじゃないかという感覚」。そのカギとなるのが重い思いの動きを見せるダンサーの存在であり、「体を通すことで、プリーツはエレガントにも彫刻的にもなる。プリーツには自由や喜びがあることを改めて伝えたかった」と説明する。

ダンサーが1人の観客のために踊る親密なパフォーマンス

タッグを組んだDFDCは、監督のヤニス・マンダフニス(Ioannis Mandafounis)が考案した独自の方法論をもとに、振付の既存の概念に挑み、現代的な思考とダンスの伝統を融合。ダンサーたちがステージ上でリアルタイムに振付を生み出すことで知られる。今回は、観客とダンサーが1対1で向き合うセッション「ワン ワン ワン(One One One)」を軸に、約50分にわたるパフォーマンスを繰り広げた。それは、「TAKE A SEAT」と記された椅子に座った観客とダンサーが視線を交わした瞬間に始まり、目が合っている間だけそれぞれのダンサーが“パートナー”となった観客のためだけに即興で踊るというもの。広々とした空間の中、1人に集中し、見つめ合い、心を通わせるような没入体験は、緊張感と気恥ずかしさ、そして親密さが入り混じる。通常のランウエイショーや舞台を“見る”行為とは異なり、観客自身もパフォーマンスの一部になったような新鮮な感覚を覚えた。

1対1のセッションを終えると観客は入れ替わり、ダンサーたちは床に敷かれたフェルトの下に隠されていた切り絵の形をしたカラフルな服を手に取り、次々に着替えては、脱いだ服を無造作に置いていく。これは、制作途中の切り絵が壁や床に散らばっていたマティスのアトリエ風景へのオマージュだという。フィナーレを迎え、中央の床に敷かれたフェルトがめくられると、切り絵のパーツを忠実にかたどったプリーツの服によってほぼ原寸大で再現した「かたつむり」が出現。その周囲を作品が立体となって飛び出してきたかのようにダンサーたちが躍動的に舞い、デザインチームの思いを体現した。

カプセルコレクションにはテート限定品も

そんな独創的なパフォーマンスと共に発表されたプリーツアイテムのカプセルコレクションは、「かたつむり」を大胆にプリントした白のVネックカーディガン、ノースリーブチュニック、半袖Tシャツ、そして作品に用いられた5色を再現した長袖トップスをラインアップ。さらに、「かたつむり」を全面にプリントしたクロスボディバッグとスカーフをテート限定アイテムとして用意する。現在はテート・モダン内のテラスショップとテートのオンラインストアのみで販売しており、ウエア類は2027年1月から日本国内とロンドンにある一部の「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」取扱店舗でも販売予定だ。

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