「生まれるべきものが生まれ、広がるべきものが広がり、残るべきものが残る世界の実現」をビジョンに掲げるマクアケによる、“アタラシイものや体験の応援購入サービス”の「マクアケ」には、伝統技術を現代的なアイテムに活用したプロジェクトが数多い。この連載では、全国各地の匠の技に注目。実行者の思いとともに、匠の技をどう活用し、どう訴求しているのかを考える。目指すは、47都道府県の匠の技の探訪だ。今回は、長野県を訪れた。
今回の技術は…
山ブドウの籠バッグ
マウンテンクラフト社の山ブドウの籠バッグブランド「ヤマビコ」は2012年、天然素材を愛する船生憲享アトリエチーフと土居一忠代表によって設立されました。拠点は雄大な北アルプスを望む長野県大町市。担い手不足で廃れつつあった山ブドウの籠作りを受け継ぎ、より多くの人に知ってもらいたい。そんな思いからブランドは始まりました。
原料となる山ブドウは、木に巻きつきながら成長するつる性植物です。太いつるが木を覆い、時に枯らしてしまうため、林業では切り落とされる“厄介者”の一面を持ちます。「ヤマビコ」は行政から許可を得て国有林や県有林でつるを採取し、籠へとアップサイクルしています。さらに、役目を終えた籠を土に埋めれば、数年で森へと還る。「本来なら捨てられるものを籠バッグにする。森と人の小さな循環が一番のこだわりです」と土居代表は語ります。この取り組みは、国や県が進める森林保全の一例としても認められています。
「実は、一番大変なのは編みではなく材料取りなんです」。山ブドウのつるを採取できるのは、梅雨のわずか2〜3週間。植物が水を吸い上げ、樹皮が自然に剥がれやすくなる、限られた時期だけです。クマやイノシシが生息する山奥に分け入り、ときには木を10数m以上登って絡みつくつるをほどきます。一定の基準に満たないつるは翌年以降に残し、種を枯渇させない配慮も欠かしません。
アトリエに持ち帰ったつるはまず乾燥させ、なめしと削りの加工を経て、均一な太さと厚みのヒゴに整えます。曲がりやねじれは1本ごとに異なるため、竹とは異なり機械は使えません。繊維の流れを見極めながら、1本1本手作業で刃を入れていきます。「籠を編む工程の約7割がヒゴ造り。ここの出来が、完成時の姿を決めます」。
シリーズ第4弾となる“アントルラ”は、花のテッセンに由来する幾何学模様の“鉄線編み”で編みました。今も江戸時代に作られた籠の修理依頼が届くほど、長い歴史を持つ模様です。とりわけ苦労したのは、丸みを帯びたフォームの成型でした。「これは木型がないとできない。削って編んで、『ここをもう少し』と言ってまた削って。前後左右を対称にしなければならず、時間がかかった」。乾燥させたヒゴを水に漬けて柔らかくし、編んでまた乾燥させる。これを繰り返しながら、木型に隙間なく巻きつけます。編むだけで約3日、ヒゴ造りから数えれば1週間はかかるため、量産はできません。
「ヤマビコ」の籠はインテリアデザインの見本市「メゾン・エ・オブジェ・パリ」への出展を機に、パリやモナコ、ロンドンなどのセレクトショップで取り扱われるようになりました。並行して、国内では籠編み教室を主宰し、採取からヒゴ造り、籠編みまでを指導。数多くの作家や講師を送り出してきました。「まずは、こういうものが存在していることを知ってもらいたい。森と人がつながって循環している。そう伝えたい」。
“アントルラ”の4つのポイント
1.つるの採取
山ブドウのつるは、樹皮が自然に剥がれる梅雨時期のわずか2〜3週間しか採取できません。クマやイノシシが生息する山奥で、木に10数m以上登って、つるをほどくようにして切り取ります。基準に満たないつるは翌年以降に残し、資源を枯渇させないようにしています。
2.ヒゴ造り(なめし・削り)
曲がっていたりねじれていたりする天然のつるを、なめしと削りによって均一な太さと厚みのヒゴに整えます。機械での加工が難しいため、つるの繊維の流れを見極めながら、1本1本手作業で刃を入れていきます。籠作りの工程の大半を占める、仕上がりを大きく左右する最重要工程です。
3.鉄線編み
テッセンに由来する幾何学模様を、1つ1つ丁寧に編んでいきます。つたを3軸に交差させることで、美しさに加え、高い強度も生み出します。平面の模様を作るだけでなく、カゴ全体の奥行きを捉える感覚が求められるため、模様をゆがませず仕上げるには、高い技術と経験が必要です。
4.経年変化と修理
植物の樹皮から生まれた素材ですが、まるで革が育つように変化していきます。使うほどに手の油分がなじみ、深い色としなやかさを帯びます。江戸時代に作られたつる籠には、漆黒に変化したものもあるそうです。取っ手のほつれなどは修理が可能で、手入れしながら3代にわたって使い続けることもできます。
長野発!
応援購入が高額なプロジェクト3選
“アタラシイものや体験の応援購入サービス”の「マクアケ」で大きな反響が寄せられた長野県発のプロジェクトを3つ紹介する。
PICK UP 1 : 応援購入総額1173万2000円
全て対応、本格派オール真空管アンプ
今年創業103年を迎えた上田市の城下工業による真空管アンプ「SWL-T20U」。人気機種にUSB DAC機能(デジタル音源をアナログ音源に変換する機能)を搭載した上位機種で、レコードでも配信音源でも、真空管ならではの温かく艶のある音色に変える。聞き疲れしにくい音楽を楽しめる。
PICK UP 2 : 応援購入総額1015万4700円
本気でつくるキャンプ用ハンガーラック!
1919年に創業した、スキーポール専門メーカーとして国内トップシェアを誇るシナノのハンガーラック“スナイプハンガー”。幅68〜99cmの無段階調節と3段階の高さ調節を実現した。アルマイト染色加工で傷にも強い。キャンプなどのアウトドアはもちろん、自宅のハンガーラックとしても使える。
PICK UP 3 : 応援購入総額685万3500円
変える!成長に寄り添うキッズ用枕
ベビー・マタニティーブランドの「ケラッタ」が、シリーズ累計60万個を売り上げた「ヒツジのいらない枕」と共同開発したキッズ用枕。やわらかなTPE素材を三角格子状に成形し、頭の圧力を分散させる。通気性にも優れ、丸洗いもできる。高さは2.5〜4.5cmの2段階で調節できるため、成長期に入っても使える。