ファッション

「日本製」打ち出すエドウイン、トレンドを追い風に世界で存在感

デニム大手のエドウインが、復活の狼煙を上げている。伊藤忠の傘下に入って10年。大手ジーンズ専門店チェーンが相次ぐ破たんなど日本のジーンズ市場が激変する中で、直営店の拡大や新商品の開発、生産拠点の再編成などの手を打ってきた。インバウンドの拡大に伴う”メード・イン・ジャパン”の世界再評価などを追い風に、強い”ジーンズのエドウイン”が戻りつつある。伊藤忠出身の俵修一社長は「復活の形はほぼ見えている。新生とまで言うと大げさだが、以前と中身はだいぶ変わった。世界に向けて”EDWIN”を打ち出していく」と意気込む。

変わる市場が変革促す

PROFILE: 俵修一エドウイン社長

俵修一エドウイン社長<br />
PROFILE: (たわら・しゅういち)鳥取県出身。一橋大学経済学部を卒業後、1993年に伊藤忠商事入社。ユニフォーム製品部、開発戦略室などを経て2010年レリアンに出向、12年に董事兼副総経理として上海レリアンの立ち上げに携わる。2017年エドウイン取締役、20年4月ファッションアパレル第一部長を経て、23年4月から現職 PHOTO:MAYUMI HOSOKURA

エドウインはピーク時にグループで売上高500億円、年間で数百万本を日本の自社工場で生産してきた。ただ、主力販路だったジーンズ専門チェーン店は、ライトオンやマックハウス、ジーンズメイトなどの大手が軒並み大幅に売り上げを減らし、身売りやリストラを強いられ、販路は大きく縮んだ。エドウインも直営店を増やし、直近では60店舗に拡大、専門店を中心とした卸以外の売り上げを4〜5割にまで引き上げたものの、主力の卸の減少をカバーできていない。俵社長は「今は規模よりも利益を重視している。3年以内に、まずは営業利益率5%をコンスタントに稼ぐ体制に持って行き、将来的には8%を目指していく」という。伊藤忠の決算資料によると、25年3月期の純利益は4億円。売上高が仮に200億円だとすると営業利益10億円なので、現実的な数値と言える。「復活の形はほぼ見えている。新生とまで言うと大げさだが、以前と中身はだいぶ変わりつつある」という。

最も大きく変わったのは、生産体制だ。かつてエドウインの国内工場は生産ラインに独自改造した自動化ミシンを組み込み、世界的にも突出した効率性を誇っていた。ジーンズ専門店で5000〜7000円で販売していた商品も、その多くがメード・イン・ジャパンだった。

だが時代は変わった。今は効率よりも、いかに多彩で高付加価値のジーンズをタイムリーに作れるかが問われている。そのため青森県内の4工場(十和田、みちのく本社、弘前、青森)のうち、みちのくと青森、弘前の3工場を青森と弘前の2工場に集約。特に弘前工場は通常ラインに加え、小ロット多品種に対応できる生産ラインを構築したほか、熟練スタッフと若手を混在させ、技術継承と人材育成にも取り組んでいる。

また、昨年10月には秋田のエドウインベースをリニューアル&リノベーション。「秋田から世界へ」を掲げ、外部からの見学者などを受け付け、モノ作りを発信する拠点としても活用する。「スタッフを多能工化し、新しい技術に対応し、付加価値の高い製品をどれだけタイムリーに作れるか。そういったことを起点に今後も生産改革を続ける」(俵社長)という。

生産改革のベースには、エドウインの持つジーンズ開発と生産のノウハウを、ジーンズの新しい産業構造にフィットさせる狙いがある。原宿と京都に構えるコンセプトショップには、海外の訪日客からひっきりなしに訪れる。「訪日客の売り上げが月間で8割を超えることもしばしば。セルビッジを筆頭に、日本の高い技術が高く評価されている」という。

エドウインの場合、「エドウイン」ブランドのほか、「ラングラー」「リー」といったグローバルブランドのアイテムでも、ビンテージアイテムを本物同様に復刻させたアイテムや、過去のエドウイン製ビンテージアイテムもマニアの間でも高い値が付くほど人気がある。こうした訪日客からの高い評価を軸に、「エドウイン」の既存ラインのブラッシュアップに加え、来年以降は、「エドウイン」「サムシング」に関してもグローバル市場に向けた日本製の高付加価値ラインの販売も計画する。欧州及び米国のハイエンドラインの販売については、俵社長自らトップセールスも積極的に仕掛けていく。「日本製のセルビッジにはかなり引き合いがある。海外ならば200〜300ユーロの価格帯でも全然勝負できる。欧米の有力セレクトなどのリアクションはかなりいい」という。

この10年は、ジーンズをビジネスシーンに定着させる"デニスラ(デニムとスラックスをあわせた造語)”キャンペーンなども行い、新たな商品開発にも着実に取り組んできた。デニスラは、トレンドに左右されず、着実に新しい需要を開拓。すでに累計で数十万本にまで来ている。「エドウインは磨けば磨くほど、輝きを増す。3年後には、名実ともに変わった”新エドウイン”を見せられるはずだ」(俵社長)。

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