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ファストリ&しまむらが過去最高、一方コロナの傷深い企業も【22年度決算まとめ・専門店編】

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ファッション企業の2022年度の決算が出そろった。20年以降、新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の逆風に耐えながら、各社は改革を重ねてきた。コロナ前を上回る過去最高業績を達成した企業がある一方で、コロナの傷が深くて回復が遅い企業もある。取り扱うカテゴリー、主戦場とするマーケット、消費者の変化への対応、どこで明暗が分かれたのか。主要な専門店系企業とアパレル系企業のコロナ前から現在まで振り返ってみた。(この記事は「WWDJAPAN」2023年7月10日号からの抜粋です)

ユニクロは欧米で軌道に乗る

2022年度はV字回復した企業が多いが、最も力強い復活劇となったのが「ユニクロ(UNIQLO)」「ジーユー(GU)」を展開するファーストリテイリングである。22年8月期(国際会計基準)は、売上高に相当する売上収益が前期比7.9%増の2兆3011億円(うち海外ユニクロが同20.3%増の1兆1187億円、国内ユニクロが同3.8%減の8102億円)、営業利益が同19.4%増の2973億円(うち海外ユニクロが同42.4%増の1583億円、国内ユニクロが同0.6%増の1240億円)となった。

ファーストリテイリング

中国のゼロコロナ政策によってグレーターチャイナ(中国、香港、台湾)は振るわなかったものの、コロナ下の業務改革によって欧州と米国が黒字化を達成した。課題だった欧米の収益基盤を整えた意義は大きい。

自信を深めた柳井正会長兼社長は23年度を「第4創業」と位置づけ、アクセルを踏み、「10年後の売上高10兆円」達成をぶち上げる。為替やコスト高騰に伴い、22-23年秋冬商品から一部の値上げに踏み切ったものの、国内ユニクロ事業の既存店売上高は前年実績を上回り続ける。4月には、23年8月期の業績予想を上方修正し、売上収益2兆6800億円、営業利益3600億円を狙うとした。アパレル専門店の世界2位であるH&M(22年度で約2兆8000億円)に迫る。

しまむらはコロナどこ吹く風

ファーストリテイリングと同様に海外店舗が多い「無印良品」の良品計画は、対照的に苦戦している。22年8月期は出店攻勢によって増収だったものの、営業利益は22.8%減の327億円。同社は数年にわたって値下げによって、客数を伸ばす戦略をとってきた。だが想定するほどの効果が得られず、円安によって輸入コストが増えたため利益が目減りした。出店拡大したものの、1㎡あたりの売上高が落ち続けるなど、販売効率も悪化した。4月には23年8月期の連結営業利益の予想を300億円(修正前は340億円)に下方修正している。

良品計画

良品計画

厳しい結果を受けて「無印良品」は昨年から衣料品改革に本腰を入れる。売上高の3〜4割を占める衣料・雑貨は収益へのインパクトが大きい。持ち味であるシンプルなデザインを生かしながらも、カラフルな差し色やトレンドを盛り込むようにMDを見直す。

一方、「ファッションセンターしまむら」を運営するしまむらは、ほぼ国内市場であるにもかかわらず、コロナを追い風にしたような業績推移を見せる。同社は“しまらーブーム”がピークだった17年2月期から3期連続で減収減益。コロナが本格化した21年2月期以降は右肩上がりの成長を遂げて、直近の23年2月期は2年連続での過去最高業績更新となった。緊急事態宣言で都市部の商業施設が長期間の休業を強いられる中、地方・郊外の路面店が多いしまむらは営業を続けた。外出自粛でお出かけ服よりも日常着に消費がシフトしたことも幸いした。いわゆる新常態を味方につけた。

しまむら

しまむら

だが、コロナが収束しても変わらず伸び続けている。外部環境だけでなく、コロナ禍の20年に就任した鈴木誠社長のもと進めてきた商品改革が軌道に乗った。安さや値引きに頼らず、商品力で売り切る。具体的にはプライベートブランド、サプライヤーとの共同開発品、インフルエンサーらとのコラボ商品の強化だ。コラボ品ではすぐに売り切れる話題作も続いた。10〜20代の若い女性の来店頻度も増えた。売れ筋商品の追加発注の仕組みも整え、売れ残りを減らすことに成功している。

アダストリアも23年2月期で売上高が前期比20.3%増の2425億円となり、過去最高を更新した。「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」「ラコレ(LAKOLE)」といった業態がけん引した。24年2月期は売上高で前期比7.2%増の2600億円、営業利益で同21.6%増の140億円を見込む。

アダストリア

アダストリア

紳士服専門店とセレクトショップ

コロナの影響を最も受けたのは、ビジネススーツに代表される外出着である。青山商事、AOKIホールディングス、コナカなど紳士服大手は、コロナ前からスーツ市場の縮小に悩まされてきたが、コロナで拍車がかかった。いずれも従業員や店舗のリストラを含む構造改革を断行した。

最大手の青山商事は21年3月期の営業赤字144億円を底にして徐々に回復しつつある。主力の一つだった「ザスーツカンパニー(THE SUIT COMPANY)」の屋号を「スーツスクエア(SUIT SQUARE)」に改め、新しいスーツ需要に合う店に変えていく。

青山商事

青山商事

高単価のブランド商品などハレの消費を強みにしてきたユナイテッドアローズも回復途上だ。23年2月期は売上高が前期比9.9%増の1301億円、営業利益が同278.0%増の63億円だった。不採算店の撤退やプロパー販売の強化には一定の成果が見られ、「シテン(CITEN)」をはじめとした新規事業の滑り出しもよい。中期経営計画の最終年度である26年3月期は、連結売上高1600億〜1700億円、営業利益90億〜100億円と、コロナ禍前を超える過去最高水準を目指す。

ユナイテッドアローズ

ユナイテッドアローズ

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