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連載 小島健輔リポート

絶好調!アダストリアとしまむら 比較して分かった事実【小島健輔リポート】

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ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。有力専門店・SPAであるアダストリアとしまむらの2023年2月期決算が発表された。業績自体は過去最高を更新するなど絶好調だが、数値を細かく分析すると、興味深い事実が浮かび上がってくる。

 アダストリア、しまむらの2023年2月期決算は他社に抜きん出た絶好調で、アダストリアの連結売上高は20.3%増の2425億5200万円と過去最高を更新、しまむらの連結売上高は6161億2500万円と2期連続して過去最高を更新し営業利益、純利益とも過去最高を更新したが、両社の実情は微妙に異なる。

両社の23年2月期売り上げを検証する

 アダストリアの連結売り上げは20.3%も伸びたが、22年2月に子会社化した飲食業のゼットンなど買収効果の111億3600万円を除けば14.8%増、国内合計で13.1%増(海外は35.7%増)、アダストリア単体では13.0%増とやや勢いが鈍る。単体も既存店売上が12カ月連続で前年を超え、「グローバルワーク」の売り上げは20.7%、「ベイフロー」の売り上げは11.6%、雑貨中心のラコレの売り上げは63.8%も伸びたが、他の主要ブランドは1ケタ増にとどまった。

 売り上げについて辛い見方をするのはコロナ禍で落とした売り上げの回復には不十分だからだ。23年2月期の売り上げをコロナ前20年2月期の売り上げと比較すると、買収効果を除く実質連結で4.1%増、国内合計で1.7%増、アダストリア単体では0.4%減と、しまむらの18.0%増、「ザラ」を運営するインディテックスの15.1%増(23年1月期対20年1月期)とは格差がある。

 単体売り上げの中身を見ると、最近の華々しい新規事業連打とは違う風景が見えてくる。20年2月期より成長したのは「ラコレ」(増加額計算不能だが60億円強か)と「グローバルワーク」(増加額38億8700万円)、「ベイフロー」(3億2800万円)だけで、「ニコアンド」は21億9200万円、「ローリーズファーム」は23億2200万円、「スタディオクリップ」は21億1900万円、「レプシィム」は19億2100万円、「ジーナシス」は7億1500万円減少している。つまり、国内事業の成長けん引役は「ラコレ」と「グローバルワーク」だけで、新たな成長を見込める新ブランド・新業態の開発が急務だったのだ。

 しまむらの連結売り上げは5.6%増と穏やかな伸びだったがコロナ前の20年2月期からは18.0%も伸びており、主力業態「ファッションセンターしまむら」は15.0%(601億3000万円)、「アベイル」は20.0%(99億9200万円)、「バースデイ」は33.9%(182億9400万円)、「シャンブル」は49.7%(48億6500万円)、台湾の「思夢楽」も19.9%(11億8300万円)を積み増しており、売り上げが減少した業態はない。

アダストリアの運営効率と給与水準

 アダストリア単体の23年2月期末合計店舗数は1222店と20年2月期末から7店減少しており、増えたのは「ベイフロー」(7店)と「ラコレ」(開示ないが40店前後か)のみで、「レプシィム」は14店減、「スタディオクリップ」は9店減、「ローリーズファーム」は7店減など、軒並み減店している。効率化を図って集約したのかというと、1店平均売り上げを20年2月期と比較すると必ずしもそうとは言い難い。「グローバルワーク」の12.0%増を除けば「ベイフロー」の8.5%減から「レプシィム」の2.8%減まで軒並み減少しており(「ラコレ」は計算不能だが大きく伸びているはず)、アダストリア単体平均は0.1%増の1億5849万円にとどまる。

 連結の1店平均売り場面積は221.7平方メートルと前期から4.6%拡大して20年2月期の205.0平方メートルからも8.1%拡大し、平方メートル当たり売り上げも76万1000円と前期から12.3%増加したが、20年2月期の77万3000円には1.6%届いていない。それでも1人当たり売り上げは推計2109.9万円(5月26日発表の有価証券報告書に開示される)と前期から9.4%向上しており、20年2月期の1994.5万円を5.8%上回るが、ここにマジックがある。

 この間に連結のEC比率は20.5%から28.7%に、EC売り上げは436億円から626億円に190億円増加しているが、同期間の連結売り上げは201億7600万円しか増加しておらず、買収効果の111億3600万円差し引けば店舗売り上げは99億6000万円減少したことになる。この間に平均従業員数は1万1149人(臨時雇用者数は正社員勤務時間換算)から推計1万1496人に347人(3.1%)増加しており、店舗の1人当たり売り上げは1847.7万円と20年2月期から7.4%低下したという見方もできる。店舗の運営効率に課題を指摘しただけで、連結の経営指標とすれば大きく改善されている。

 連結の1人当たり総利益額は20年2月期(総利益率55.5%)の1106.7万円から23年2月期(同54.7%)の1154.0万円と増収効果(EC売り上げ増や買収効果)で4.3%伸びているが、労働分配率は31.7%から32.5%に上昇している。24年2月期は正社員の給与を平均6%賃上げすると発表しているが(以下は臨時従業員も含めて6%賃上げで計算)、予算通り売り上げが7.2%伸びて総利益率が56.2%に上昇するなら、総員数が変わらないとすれば労働分配率は31.2%に収まる。逆に労働分配率を32.5%で維持するなら平均給与を6%上げても総員数を4.0%増やすことができる。

 アダストリアの給与水準は22年3月期の単体で年間401.9万円と開示しているが、連結の人件費を従業員数で割って会社負担の社会保険料など福利厚生費を差し引いた推計は313.5万円(若い女性が大半なので人件費の90%を給与と仮定)と格差があり、23年2月期も同様な計算では329.7万円になる。24年2月期は平均6%の賃上げで349.5万円ほどになる計算だが、しまむらの23年2月期の444.8万円に対しては79%弱、6.5%賃上げする24年2月期の473.7万円に対しては74%弱と格差が大きい。

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