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連載 小島健輔リポート

LVMHに見る「ラグジュアリービジネスの模範解答」【小島健輔リポート】

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 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。「ルイ・ヴィトン」「ディオール」「ロエベ」「ブルガリ」「ティファニー」など多くの高級ブランドを運営するLVMHの2022年度業績が発表された。単に好業績というだけでなく、利益の水準も驚異的なレベルだった。最新決算をどこよりも詳しく分析してみた。

 東西分断や為替変動、インフレに四苦八苦する多くのアパレル関係者には高天原(たかまがはら)の出来事でしかないが、1月26日にLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)が発表した2022年12月期の決算報告はラグジュアリービジネスの「模範解答」というべきパーフェクトなものだった。

満点にあと一歩の業績報告

 プレスリリースではまず、「地政学的および経済的状況にもかかわらず記録的な年だった」と総括し、売り上げが791億8400万ユーロ(11兆5000億円)と23.3%、営業利益が210億5500万ユーロ(2兆9380億円)と22.8%も増加したと報告。世界中とりわけ欧州、日本、米国で大きく伸び、ファッション&レザー部門は記録的な売り上げと利益を達成したと誇る。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の売り上げが初めて200億ユーロを超え、全てのウォッチ&ジュエリーメゾン、とりわけ「ティファニー(TIFFANY)」「ブルガリ(BVLGARI)」「タグ・ホイヤー(TAG HEUER)」が勢いを増し、化粧品販売の「セフォラ(SEPHORA) 」も著しい回復を見せたと好業績を列記している。

 成長をけん引したのが「ルイ・ヴィトン」「ディオール(DIOR)」を主力とするファッション&レザーグッズ部門で、売り上げは386億4800万ユーロ(5兆3930億円)と25.1%(現地通貨では20%)伸びて全社売り上げの48.8%を占め、営業利益は157億900万ユーロ(2兆1920億円)と22.3%伸びて全社営業利益の74.6%を占めた。営業利益率は40.6%と驚異的な水準(41.6%)を記録した前期からは1.0ポイント落としたが、それでも粗利益率かと錯覚する水準だ。

 売上伸び率が最も高かったのは化粧品販売の「セフォラ」や免税店「DFS」、スペシャルティデパート「ル・ボン・マルシェ(LE BON MARCHE)」などからなるセレクティブリテーリング部門だが、売り上げが148億5200万ユーロと26.4%(現地通貨では17%)伸びて全社売り上げの18.8%を占めても、コロナ前19年の147億9100万ユーロをようやく回復したに過ぎず、営業利益は7億8800万ユーロと47.6%伸びても全社営業利益の3.7%強を占めるに過ぎない。営業利益率は5.3%と全社の26.6%とは格差が大きく、コロナ前で絶好調だった18年でも10.1%に過ぎず、仕入れ型小売業の限界が見える。

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