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「ザラ」大量閉店の真相、コロナ禍だけじゃない「深謀遠慮」

 「ザラ(ZARA)」の親会社であるスペインのインディテックス(INDITEX)が2021年にかけて1200店舗を閉店すると発表して話題になっている。「ザラ」を擁するインディテックスは、H&Mや「ユニクロ」擁するファーストリテイリング、ギャップを加えた4大SPAの中でも売上高は3兆円を超え、頭ひとつ抜ける世界最大のファッション小売企業の一つ。その大量閉店ということもあって、日本経済新聞では「インディテックスが世界で大量閉店を決めたのは、新型コロナで業績不振に陥ったことが引き金だ」という報道も出ているが、実はこの“減店舗政策”はこれまでの施策をさらに加速させた“既定路線”なのである。

 彼らが目指しているのは、「店舗とオンラインストアの完全な統合」だ。デジタル時代にマッチした未来の店舗のあり方を模索し、6年前から店舗ネットワークの再編に着手。ネットで注文して店舗で受け取る「クリック&コレクト」や店舗での返品などのサービス機能を加えた、広い面積を持つ大型旗艦を一等地に構える戦略を打ち出した。複数あった小型店を集約することで、在庫を効率化し、人員・オペレーションも効率化した。

 たとえば、フランク・ゲーリーが設計したグッゲンハイム美術館があることでも有名なスペインのビルバオでは、市内の4つの店舗を1つの旗艦店に再編。「売上げは以前の4店舗の合計を上回り、ほぼ同じスペースで在庫を20%削減して運営している」とパブロ・イスラ会長はアナリスト向け説明会で述べている。

また、インテリア雑貨やホームファブリックを扱う「ザラホーム(ZARA HOME)」を「ザラ」と業態を統合することで、オペレーションの効率化と、相乗効果によるブランド力の発揮、ライフスタイル提案などにつなげている。

 確かに、1200店舗という閉店数は、例年の3倍以上に当たる。だが、すでに2019年1月期は370店舗を出店する一方で、ほぼ同数に近い355店舗を吸収合併して閉店。(他に、226店舗を改装し、112店舗を拡張した)。さらに、2020年1月期は、307店舗のオープンに対して、それを上回る328店舗を吸収合併して閉店している(他に、182店舗を改装し、87店舗を拡張した)。

 これにより、期末店舗数は7469店舗となり、前期末の7490店舗に比べて21店舗減少している。これは、H&Mの108店舗増、ファーストリテイリングの144店舗増、ギャップの253店舗増(ただし、買収企業の増加分も含む)のグローバルSPAトップ4の中でも、いち早く減店舗政策・OMO(店舗とオンラインストアの統合)が進んでいることを示している。

 店舗が減っても、売上高は283億ユーロ(約3兆4809億円)と増加している。これらの店舗網の再編により、2020年1月期の既存店売上高は6.5%増と高い伸びを記録。オンライン販売は前期比23%増加し39億ユーロ(4797億円)となり、EC化率は2ポイント高まり14%に上がった。

 2020年末までに、店舗とオンラインの在庫の完全一元化を実現させる予定。これにより、主要市場では即日または翌日配達の体制が整うことになる。

 店舗再編によりオープンした旗艦店では、広々とした空間に、美術館のようにゆったりと美しく服やシューズを陳列し、タグのQRコードやバーコードを読み取ることで簡単にECにつながったり、色違いやサイズ違いなども選ぶことができるなど、実店舗とオンラインとをつなぎ、買い物客が自由に行き来しながら使用できるようになっている。大型のデジタルサイネージを活用してさまざまなルックやイメージビジュアル、メッセージなどを発信することも含めて、店舗での顧客体験の向上させている。

 クリック&コレクトや返品を店舗で行うことで、来店動機としていることも、集客増、売り上げ増につなげている。

 ちなみに、96カ国・エリアに出店しているインディテックスだが、EC強化の一環として、自社のショップがないところを含めて世界中のどこからでもグループの商材が購入できるように、「オンライン販売プラットフォーム」を立ち上げている。昨年1年間に中東を中心とした18カ国での販売をスタートし、202カ国・地域に販売網を広げているのも特筆点だ。

 2009年から業界を先駆けて導入してきたRFID(無線情報タグ。無線周波数識別技術を使用した最先端のロジスティクスシステム)に加え、魅力的な店舗作りや、減店舗政策、オンライン販売網などで、他の小売企業の先を行くインディテックス。新型コロナの影響で成長スピードは鈍化するかもしれないが、改革スピードはむしろ上がった。アパレル専門店トップの独走はまだまだ続きそうだ。

松下久美:ファッション週刊紙「WWDジャパン」のデスク、シニアエディター、「日本繊維新聞」の小売り・流通記者として、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)

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