PROFILE: 右:MEGUMI/プロデューサー、俳優、タレント、実業家 左:永野/芸人
「恋愛なんて」。全世代が恋愛離れしていると言われる今、Netflixで新たな恋愛リアリティーショー「ラヴ上等」が始動した。本企画のプロデューサーは、俳優・タレント・実業家のMEGUMI。そして、従来のリアリティーショーを「嫌い」と公言していたスタジオメンバーの芸人・永野。この異色の2人が、現代の恋愛観、番組制作の「本気」、そしてヤンキーたちの純粋すぎる「生き様」について熱く語り尽くした。
既存の常識を“上等”と跳ね除ける2人の視点から、「ラヴ上等」が示す、令和の時代に必要な愛と覚悟の形に迫る。
好きも嫌いも喜怒哀楽を全部出して
世の中に投下する
——今、恋愛リアリティーショーが乱立している中で、この番組をプロデュースした背景を教えてください。特に今の時代の恋愛観に対する意識や、若い人に伝えたい思いがあるかと思います。
MEGUMI:最初は、同郷(岡山)で同世代の、千鳥の大悟さんと2人でロケをしていたときに、「なんだろうこの懐かしみは」みたいなものを感じたんです。私は中学生のときヤンキーだったんですけど、恋は不器用だけど優しいとか、ヤンキー独特のレディーファースト感とか、とにかくあったかい!みたいな。それを思い出して、その帰りの車の中でマネージャーさんに、「ヤンキーの恋愛リアリティーショーっておもしろそうじゃない?」と話したことがそもそものきっかけです。
今って、私たちの世代もそうですけど、「恋愛なんて」と言ってる人が多い。雑誌とかも昔は恋愛特集があったけど、今はあまり読者がついてこないからか、料理や美容にいってますよね。若い子は恋愛が気まずいから、趣味を通して人間関係を深めたりする。とにかく全世代が恋愛から離れている感覚がすごくあったんです。
でもヤンキーの子たちは、好きも嫌いも喜怒哀楽の感情を全部出して、それを世の中に投下する。恋愛を通じてそれを表現するというのは今、必要なことではないかなと思い、この企画を立ち上げました。
——ヤンキーにとって、恋愛は不可欠なものですか?
MEGUMI:もちろん大事ですよ。だって、すぐ恋をする。今作を観て、たぶん(視聴者は)そう思いますよ。でも実のところは、「大事」という意識すらないかも。もう気持ちで生きてるから。無意識で恋、喧嘩、食う、寝る、みたいなことをしているんだと思うんですよ。ものすごく人間的ですよね。
令和のヤンキーにも残る、
変わらない精神性の尊さ
——恋愛リアリティーショーはスタジオ陣のMCも楽しみの一つです。今回はどういう人選を?
MEGUMI:スタジオメンバーの人選では、多様な視点と化学反応を重視しています。ラッパーのAK-69さんは、「ヤンキーの解説者」という役割でご参加いただきました。出演者たちの行動には、彼らなりのルールや意味があります。AK-69さんには、そうしたヤンキー文化特有の作法や背景をすべて解説してもらっています。
永野さんは芸人さんとしても本当に大好きなんですけど、従来の恋愛リアリティーショーを「嫌い」と公言しているんですよね。
永野:余裕がなくて、他人の人生を観ても覚えられないんですよ。最近の人達は名前も難しいじゃないですか。◯◯子、◯◯男とかでもないし!
MEGUMI:こういう面倒くさい人に来てもらわないと。ちゃんと突っ込んでくださるから。実際どうでした?
永野:恋愛リアリティーショーって、出演者だけでなく、視聴者たちにとっても「こういう時って女子はこうなるよね」「そこはそうじゃないだろ」といった理屈や先入観に基づいているコンテンツに見えていたんです。昔から僕は、いわゆるおしゃれなバーではなく「ブックオフ」にいるような人間だったので(笑)、おしゃれな恋愛の世界観や空気感は全く理解できず、「初見お断り」という雰囲気が強くて、自分には縁遠いものだと思っていました。
でもこの番組はそうじゃないんですよ。本能むきだしというか、頭でっかちになってしまった恋愛を、本来あるべき姿に引き戻してくれたように感じて、見ていて楽しかったです。「人と人が好きになる」という、恋愛の最もシンプルな本質に立ち返っているというか。もうこれは「恋愛リアリティーショーの祖」なのでは?
MEGUMI:ありがとうございます。ここから恋リアが始まりました。
——実際、MEGUMIさんは元ヤンだったというお話がありましたが、当時のヤンキーと、令和のヤンキーに違いはありましたか?
MEGUMI:全くなくて、それってすごいなと思うんですよね。アウトプットの表現も、「仲間は絶対」「女は大事」、威嚇をして、喧嘩をして、お互いの力関係や立ち位置を理解し合う。それが古典芸能のようにずっと受け継がれているというか。変わっていく世の中で、変わらないものがあることがすごい尊いなと思いました。
——永野さんは、ヤンキーの精神性をどう見ましたか?
永野:ずっと自分には理解できないと思っていたんです。でも、自分もお笑いの世界で何十年も結構変わったセンスや角度で闘ってきたことを思うと、「根性」とか「気合い」みたいなものはかなり自分も持ち合わせているんですよね。ヤンキーとはまた違うかもしれないけど、この番組を見終わったあとに、実は似ている部分はあったなと思いました。今まではただただ「ヤンキー怖い」とか言ってましたけど、呼び方が違うだけで「一緒だったんだな」みたいな。
MEGUMI:芸能界で長くやるってそういうことですよね。
永野:本当にそう思いました。コンプレックスに抗うように個性派で勝負して。ヤンキーって、コンプレックスを「上等!」と燃料にする存在なのかもしれない。そういう意味では、僕はヤンキー的な精神を持っていたかも。
企画・美術・音楽に込められた「本気」
——恋愛以外にも、社会貢献の要素があることに本作の良さが出ていました。子ども食堂のアイデアはどこから?
MEGUMI:ヤンキーというとビジュアルが怖かったり、感情が抑えられない印象があるけど、本当はめちゃくちゃに傷ついてる人たちなんですよね。本当はピュアで優しいんだけど、ちょっとモンスターみたいに扱われちゃうような生き方をしてきたり。もちろん、人を傷つけてもきたから、その過去とちゃんと向き合うというのも、もう一つテーマとして私はしっかり描きたいと思ったんです。
そのためには、子ども食堂を手伝うのがいいんじゃないかと。子どもはヤンキーだからといって態度を変えたりしないし、ヤンキーの人たちも、そんな相手だけに見せる笑顔や真の姿ってあると思うんです。そこに、何か気づきがあるのではないかというところで。
永野:やっぱりなんか似てます。自分も結構荒い芸風でやってきましたけど、最近はいろいろな番組で新たな一面を出すこともできているというか、成長ができてる感じがしていて。この番組もそうですけど。なんか自分を投影して見ていたなと思いました。ヤンキーじゃなくても自分を振り返ってリンクする部分があると思う。自分の人生的にも、この「ラヴ上等」は考えさせられるものがありましたよ。
MEGUMI:「そうじゃない、そうじゃないのよ」っていう時あるじゃないですか。本当はそういうキャラじゃないのにって。たぶんみなさん、世の中にズレを感じている人たちはいると思うし、特に永野さんとか私は芸能をやってると、本当に泥水みたいなものをいっぱい飲んでいて、世の中に中指立てて。それでこういう人(自分たち)が出来上がってるから(笑)。
永野:そうですよね。それで傷つくけど、それでも心は裸でいかなきゃね。
——分かりやすい面白さ・エンタメ性と、番組づくりの誠実さのバランスも大事です。プロデューサーとしてどう意識されましたか。
MEGUMI:参加者のみなさんには共同生活をしてもらう前に一人ひとり個人面談をして、「こういう意味を持って私は番組を作っている」というのを伝えました。ただ恋愛するのではなくて、さっき言った贖罪であったりとか、今世の中がこうなってるから、あなたたちの生き様を見せてほしいと。ちゃんと目的をみんなに持ってもらうようにはしました。あとは、気持ちを抑え込んだり、無理にキャラを作り込んだりはしないこと。
カメラの前で取り繕ったり、変なことしないでいい。そのままいてほしいと。あとはこれが配信した後のことですよね。いろんなことをいろんな人が言うと思うけど、本当はそういう人たちって裏アカとかでつぶやいてるだけだから(人の意見は気にしなくていい)、とか。いろんな角度からきちんとお話をそれぞれにしっかりさせてもらいました。
——撮影中に参加者の心理的なケアをする体制はあったのでしょうか。
MEGUMI:一人ずつに専属のメンターをつけました。総合のディレクターの一人は「校長先生」とみんなに呼ばれていて、何でも相談するみたいな関係値を築いてくださったので、そこは大変助かりました。
それでも、すごいじゃないですか。参加者同士で揉めたりとか、突然お酒をかけたりとか。びっくりしましたよね。私たちの想定の100倍の熱量。「感情を抑えんな」とは言ったけどさ、みたいな感じで(笑)。何度か私も現場に行って、気にかけつつも、はっきり小言を言う、みたいなことはしていました。
——美術の作り込みや音楽のセレクトも秀逸でした。MEGUMIさんはプロデューサーとしてかなり意識した部分では?
MEGUMI:うれしいです。今までの恋愛リアリティーってわりと抜け感のある海の近くの素敵なお家とか、ラグジュアリーな海外のホテルとかがあったんですけど、そうじゃないところを見せたいなと思っていて。ヤンキーってカオスなんですよ。いい意味でのいろんなカルチャーをミックスした人たちなので、それこそタトゥーもあれば、歌舞伎っぽい世界観もあれば、ヒップホップもあればって。
カオスなこの人たちのアイデンティティーを美術でも見せたいと思い、まずはイメージボードを作成しました。コラージュを作るのが大好きなんですけど、写真を切って貼って、「今回この感じでいきます」とまず世界観を制作陣に共有したんです。地方のラブホテルの看板とか、いろいろなのを見せて、決して「かっこよくないかっこよさ」みたいなものを理解していただいきました。
作り込みは、日本を代表する映画とかドラマを作っている美術の会社の方にお願いして、たぶん今までの恋愛リアリティで一番だったと自負しています。音楽は痒いところに手が届くというか、「うっそ!これだ!」みたいなものがほしくて。ヤンキーたちのジェットコースターのような感情の起伏に合うのは、もうTK(小室哲哉)しかないでしょう。
永野:結局ですよ! 結局あいつなんですよ! 大事なのは。あいつを久しぶりに出しましたよね。最高すぎるよ。
MEGUMI:私もglobeが大好きだったんです。globeのライブに行ってないってことが、私の人生でもなかなか上位に残る後悔なんですよ。
永野:Oasisは行ってたのに(笑)。
MEGUMI:そうなの! globeの「Love again」はとんでもない歌詞だし、言うことが本当にリンクしている。我々の世代は「きたー!」ってなると思うし、若い子は初めて聞いても「何これ、分かんないけど中毒性あるわ」って言ってカラオケで歌ってほしいなと思って、それでチョイスをさせていただきました。
永野:オープニングもいいですよね。一人ひとりにキャッチコピーがついて。
MEGUMI:やっぱあの人たち、決めコメントが多いですね。キャッチフレーズ、やっぱすごい大事なんですよね。
永野:ぶち上がりますよね。オープニングで「これ何、これ」って毎回笑っちゃうけど。本当に「ミッション:インポッシブル」みたいな。最初テ・テ・テ・テってなって「おお、始まる!」みたいな。やっぱりすかしてないよね、「ラヴ上等」。
人生における「上等」なものとは
──タイトルにもある「上等」という言葉には、本気や覚悟のような意味が込められてると思います。お二人にとって、恋愛に限らず、人生にとっての「上等」なものとは何でしょうか。
永野:これはもう、「お笑い」です。いかにもですけど、やはり自信があるんで、私。
MEGUMI:やっぱり、そうでしたか。
永野:もちろんです。だから「お笑い上等」みたいな感じで。さっきも言いましたけど、結構似てるんですよ、感性が。気合とか覚悟とか、意外とそっちは好き。思い出しましたよ、ヤクザ映画とか好きだったなとか。
人生の比重って人それぞれじゃないですか。人によっては家族とか、この番組は恋愛ですけど。だけど良いも悪いも自分の芸人としての仕事は、やりたくてやっていることなので、それはもう大事ですね。
MEGUMI:思い返すと私が後悔していることって、やりきれなかったことなんですよね。やりきればできると最近すごく身に沁みて思うので、「やりきり上等」ですかね。とにかく何でも、やりたいことはやりきることを最近は掲げてます。途中でいろんな人がいろんなことを言って、ちょっとダメかなと思ってしまっても「いや、最後までやりきろう」とする。今回も3年かけて制作していて、「ダメかな、もう形にできないかな」っていう場面もいっぱいあったから、やりきれたのが自分の中ではすごく大きかったですね。
PHOTOS:MITSUTAKA OMOTEGUCHI
Netflixリアリティーシリーズ「ラヴ上等」
喧嘩上等。羅武上等。恋も喧嘩も命懸け!純度100% 危険度120%。MEGUMIプロデュース、社会のはみ出し者として生きてきた男女11人が、14日間の共同生活で本気(ガチ)の「愛」を学ぶ、血の気たっぷりな新感覚恋愛リアリティーショー。12月9日からNetflixにて独占配信開始。Netflixリアリティシリーズ「ラヴ上等」独占配信中
配信スケジュール:12月9日 からエピソード1〜4、12月16日から エピソード5〜7、12月23日からエピソード8〜10
企画・プロデュース: MEGUMI
主題歌: Love again / globe
MC:MEGUMI、AK-69、永野
エグゼクティブ・プロデューサー:太田大 (Netflix)
プロデューサー:緒方夏子
演出:木村剛
総合演出:池田睦也
制作プロダクション:スタッフラビ
製作:Netflix
https://www.netflix.com/jp/title/81769466





