「異常ともいえるほどの伸び。正直びっくりしている」「かつての1年間の売り上げを、半年間で叩き出すようになっているブランドもある」。百貨店の高額品販売の勢いがすさまじい。各百貨店の売り場担当者からは、冒頭のようなコメントが相次いでいる。特選や宝飾のブランドは今春夏にかけ、一様に5〜10%ほどの値上げを行っている。それが消費に水を差すかと思いきや、「影響はほとんどない」と各百貨店が口をそろえる。絶好調の2022年1〜6月の百貨店高額品商況をレポートする。(この記事は「WWDJAPAN」2022年8月29日号別冊付録の定期購読者特典「ビジネスリポート」からの抜粋です)
特選や宝飾といった高額品の売り上げが、前年同期実績を超えているのは当たり前。銀座や渋谷など、コロナ禍前の免税売り上げ比率が非常に高かった一部百貨店を除けば、19年の実績も超えているという声が大多数だ。コロナ禍以降、百貨店各社は外商部門を強化するなどし、従来は海外で買い物をしていたような富裕層、特に20〜40代の若年富裕層へのアプローチを強化しており、成果につながっている。
例えば阪急うめだ本店。元来はトレンド先取りのMDと駅直結の客数の多さを強みにし、呉服店を起源とする他百貨店ほどには富裕層への手厚いサービスを打ち出してはいなかった。しかし、6月に特選フロアの自主編集売り場「ザ D ギャラリー(THE D GALLERY)」を刷新。ドレス類をそろえるだけでなく、富裕層の社交シーンをトータルプロデュースし、買い物のパーソナルアテンドサービスなども同売り場から行う。また、“超”富裕層の要望に細かく応えることを目的とした“クライアンテリング”の部署も4月に新設。「サービスの観点で関係性を強めていけば、富裕層の消費はまだまだ掘り起こせる」と担当者は話す。
大丸松坂屋百貨店では、「大丸・松坂屋アプリ」会員(21年末時点で130万人)の購買データを分析し、高額品購入の可能性がある客に重点的に特選や宝飾ブランドの新作情報、催事情報を配信。デジタルを活用し、富裕層の消費を深耕する策が奏功しているという。「物価高などで今後景気が悪化することがあっても、富裕層の消費に大きなダメージはない」と担当者は言い切る。
駆け込み購入後も反動落ち込みなし
実際、既にその言葉通りになっている。今春夏は大多数のブランドが値上げを実施。例えば「ディオール(DIOR)」は、人気のアイコンバッグ“レディ ディオール”のラム革の小さなサイズを7月の改定で約12%値上げし、70万5000円(税込)とした。また、中には今年に入って2回値上げしたブランドもある。ただし、これまでもラグジュアリーブランドは為替調整などを理由に定期的に値上げを行っている。従来と今回が異なるのは、値上げ後に大きな落ち込みが見られない点だ。
「値上げした翌日も、特に気にすることなく購入していく」(高島屋)、「値上げしたからといって、やめようとはならない。欲しいものは欲しいという意識」(岩田屋本店)、「値上げで客数が減っても、客単価でカバーしている」(そごう・西武)という。宝飾ブランドはバッグや服に比べて単価が高く、「駆け込み購入があった」という声が多いが、たとえ反動で値上げ後に若干売り上げが落ち込んだとしても、富裕層が数億円のジュエリーを購入すれば消し飛んでしまう。そんな消費環境となっている。