ファッション

「グッチ」が7日連続の映画公開で最新コレクション発表 ミケーレの思いは?

 「グッチ(GUCCI)」のクリエイティブ・ディレクターを務めるアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)は16日、1週間連続で7本のショートフィルムをアップして最新コレクションを紹介するプロジェクト「グッチフェスト(GUCCIFEST)」をスタートした。30年来の憧れという映画監督ガス・ヴァン・サント(Gus Van Sant)を招き、“終わることのない序曲(Ouverture of Something That Never Ended)”と銘打ったムービーとコレクションの発表を続けている。以前のインタビューで、「使い古されたシーズンという業界慣習を捨て去り、私の表現タイミングに近い頻度でショーを開催する。年に2回だけ集うこととし、そこで物語の新たな1章を共有する。それはイレギュラーで喜びにあふれ、完全に自由な1章だ。ルールやジャンルはブレンドされ、新たな空間や言語、コミュニケーションプラットフォームの中で発表する」としていたミケーレの思いとは?日本で唯一招かれた、ガス・ヴァン・サントとのオンライン会見のやりとりは、以下の通り。

今のスタイルの起源は「マイ・プライベート・アイダホ」

Q.なぜ、ガス・ヴァン・サントを選んだのか?

ミケーレ:ガスと働けるなんて、本当に光栄だ。彼の「マイ・プライベート・アイダホ(My Own Private Idaho)」を見たのは、30年以上前。感動した。自分自身が何者なのかをより深く理解できるようにり、以来、Tシャツに茶色のコーデュロイパンツを合わせ、ケープのようにフェイクファーのコートを羽織っている。全ての指に指輪を、両方の手首にバングルをつけるようになったのも、あれ以来だ。

Q.映画で発表する洋服は、どのように映った?

ミケーレ:ランウエイよりずっと自由で、解放されているように思えた。「衣装」とも違う。洋服は映画の中に溶け込み、映画も洋服の中に溶け込んだ。そして、私が思い描くストーリーを余すことなく伝えている。私が重んじている「対話」のツールとして、完璧だ。もしミケランジェロ(イタリアのルネサンス期を代表する彫刻家で画家)が現代に生きていたら、彼は映画監督になっているだろう。映画は、とてもパワフルだ。

ガス:映画に現れる洋服が全て「グッチ」というのは、私には新鮮な経験だった。普段は子役にも3コーディネートを提案し、どれが好きか選んでもらう。だから演者にフィットするんだ。でも「グッチ」の洋服だけでも、それは何も変わらなかった。映画に自然と溶け込んだ。

オンライン会見が開かれたのは、11月13日の昼間(イタリア時間)。ミケーレとガス・ヴァン・サントは、「今日、ようやく作品が完成した」と語った。構想段階は遠隔でのキャッチボールを繰り返したが、撮影はリアル。ローマで、1カ月を費やした。

Q.ファッションショーに比べ、準備は大変だった?

ミケーレ:とても疲れた。でも食事さえ忘れ、夜明けと共に眠りにつく日々は、とっても楽しかった。

ガス:いまだコロナが猛威を振るうローマでの撮影は、決して簡単なものではなかった。(感染の再拡大に伴い)政府の規制は日を追うごとに強くなった。だが状況が厳しくなるにつれ、やり甲斐が増したのも事実。こんな状況下で作品作りを続けることの意味が増したからね。

ミケーレ:これまで洋服は、ファッションショーの直前までに仕上げれば間に合った。でも、今回はそれじゃダメ。(映画の撮影をスタートした)1カ月前には、揃っていなくちゃならない。撮影に1、2年を費やすことさえ珍しくない映画とのコラボレーションは、とっても大変だと痛感した(笑)。でも、挑戦する価値があったと思う。

ガス:ただ振り返れば、大変だったのは皆がPCR検査を受けたことくらいだったかもしれない。撮影期間中、ローマの街は普段よりずっと静かだった。

Q.7つのショートムービーに分けた理由は?

ミケーレ:決して終わることのない「時間」を描いてみたかった。クリエイティビティーは、循環する。決して終わらない。新たなキックオフは、過去の延長戦なのかもしれない。そんな感覚だ。映画では、従来よりもスローな生活を描きたかった。今「ラグジュアリー」なのは、「時間がゆっくり流れること」。急いで飛行機に搭乗するのではなく、自宅でゆっくり一杯の紅茶を楽しむ。そんなイメージだ。
ガス:ありふれた、でも美しい場所での撮影もポイントだね。7つのエピソードは、すべてが美しく繋がっていない。大きな作品の中の、バラバラのエピソードかもしれない。蚤の市みたいな感覚かもしれないね。大きなフェアに、個性的な店が軒を連ねている。

ビョークなら、洋服に「命」を与えられるかも

Q.次のコレクションもムービーを通して発表するとしたら、どんな映画を作りたい?

ミケーレ:難しい質問だ。ハリウッド映画からドキュメンタリーまで、いろんな映画を見ている。母が映画産業に携わっていたからね(編集部注:母親は、イタリアの映画会社でプロデューサーのアシスタントを務めていた)。人生の中で一番泣いたのは、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」。ビョーク(Bjork)は、素晴らしいパワーをもたらしてくれるだろう。ファッションにとって必要な力だ。昔は、コスチュームデザイナーになりたかった。今回映画を作って、自分の仕事はデザイナーなのか、コスチューム・デザイナーなのか、曖昧になった。でも、それで良い。私の仕事は、洋服に「命」を与えることだ。

撮影はローマで行われ、俳優兼アーティストのシルヴィア・カルデローニ(Silvia Calderoni)が主役を務めた。ほかにもビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)やハリー・スタイルズ(Harry Styles)、スペイン出身の作家であるポール・B・プレシアード(Paul B. Preciado)、美術評論家のアシール・ボニート・オリバ(Achille Bonito Oliva)、アーティストのダリウス・コンサリー(Darius Khonsary)、歌手兼俳優のルハン(鹿晗、Lu Han)、俳優で劇作家のジェレミー・O・ハリス(Jeremy O. Harris)、振付師のサシャ・ヴァルツ(Sasha Waltz)らが出演する。

Music: ‘Another Time’
‘Quieter and Louder’
Written by Kim Gordon
© Kobalt Music Publishing Worldwide Ltd obo Forgetful Songs [BMI] ‘Therefore I Am’
Written by Billie Eilish O'Connell and Finneas O'Connell
(P) 2020 Darkroom/Interscope Records
‘Grande messe des morts, Op. 5, Requiem: Hostias’
Kölner Rundfunkchor, SWR Vokalensemble Stuttgart, Mitglieder des Chores der Württembergischen Staatsoper Stuttgart, Radio-Sinfonieorchester Stuttgart des SWR, Michael Gielen (Conductor)
Courtesy of NAXOS Deutschland – www.naxos.de

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