コロナ禍以降、スポーツ・アウトドア市場の成長がグローバルで著しい。ここでは、2024年度のスポーツ・アウトドアメーカーの売上高ランキングをまとめるとともに、各社に共通する成長の背景をまとめた。(この記事は「WWDJAPAN」2025年8月11&18日号からの抜粋です)
POINT1:
ナイキは減収も
2ケタ増収企業続出
下記は2024年度の世界のスポーツ・アウトドアメーカーの売上高ランキングだ。目下大改革中のナイキ(NIKE)は23年度に比べ10%近い減収となったが、業績の底は打ったという見方が広がっている。一方で、ルルレモン・アスレティカ(LULULEMON ATHLETICA)やプーマ(PUMA)などは、25年度は雲行きが怪しくなってきた。とは言え、グローバルで景況感が悪化し、ラグジュアリー領域などの減速が著しかった24年度においても、スポーツ・アウトドア分野では前年度対比で2ケタ増企業が目立ち、マーケット全体として勢いを感じさせる。特に伸び率が大きかったのは、オン(ON)、ニューバランス(NEW BALANCE)、アシックス(ASICS)、「アークテリクス(ARC'TERYX)」「サロモン(SALOMON)」を抱えるアメアスポーツ(AMER SPORTS)、「ホカ(HOKA)」のデッカーズ(DECKERS)など。
コロナ禍前の19年度との対比では、2倍前後に伸びた企業も多い。コロナ禍以降、このマーケットが大きく成長していることを如実に表している。アンタスポーツ(ANTA SPORTS)やリーニン(LI-NING)、Xtepといった、中国企業の存在感が強まっていることにも注目したい。
今後のマーケットの伸び代の1つはウィメンズだ。スポーツ各社は基本的にメンズが強く、その中でルルレモン・アスレティカは女性の共感と支持を集めて成長した経緯がある。ナイキも再浮上の原動力とすべく、この間ウィメンズ強化を打ち出している。
世界のスポーツメーカー売上高ランキング
1位 ナイキ(アメリカ) 売上高(円換算):463億900万ドル(6兆8537億円)
対23年度比:↓ 9.8%減 対19年度比:1.24倍 決算期:25年5月期
2位 アディダス(ドイツ) 売上高 (円換算):236億8000万ユーロ(4兆492億円)
対23年度比:↑ 10.5%増 対19年度比:1.00倍 決算期:24年12月期
3位 ルルレモン・アスレティカ(カナダ) 売上高 (円換算):105億8812万ドル(1兆5670億円)
対23年度比:↑ 10.1%増 対19年度比:2.66倍 決算期:25年1月期
4位 プーマ(ドイツ) 売上高 (円換算):88億1700万ユーロ(1兆5077億円)
対23年度比:↑ 2.5%増 対19年度比:1.60倍 決算期:24年12月期
5位 アンタスポーツ(中国) 売上高 (円換算):708億3000万人民元(1兆4166億円)
対23年度比:↑ 13.5%増 対19年度比:2.09倍 決算期:24年12月期
6位 VFコーポレーション(アメリカ) 売上高 (円換算):95億469万ドル(1兆4066億円)
対23年度比:↓ 4.1%減 対19年度比:0.91倍 決算期:25年3月期
7位 スケッチャーズ(アメリカ) 売上高 (円換算):89億7000万ドル(1兆3275億円)
対23年度比:↑ 12.1%増 対19年度比:1.72倍 決算期:24年12月期
8位 ニューバランス(アメリカ) 売上高 (円換算):78億ドル※1(1兆1544億円)
対23年度比:↑ 20%増 対19年度比:ー 決算期:24年12月期
9位 アメアスポーツ(フィンランド) 売上高 (円換算):51億8330万ドル(7671億円)
対23年度比:↑ 17.7%増 対19年度比: ー※2 決算期:24年12月期
10位 アンダーアーマー(アメリカ) 売上高 (円換算):51億6431万ドル(7643億円)
対23年度比:↓ 9.4%減 対19年度比:0.98倍 決算期:25年3月期
11位 デッカーズ(アメリカ) 売上高 (円換算):49億8561万ドル(7378億円)
対23年度比:↑ 16.3%増 対19年度比:2.34倍 決算期:25年3月期
12位 アシックス(日本) 売上高 :6785億円
対23年度比:↑ 18.9%増 対19年度比:1.79倍 決算期:24年12月期
13位 リーニン(中国) 売上高 (円換算):286億7600万人民元(5735億円)
対23年度比:↑ 3.9%増 対19年度比:2.07倍 決算期:24年12月期
14位 コロンビアスポーツウェア(アメリカ) 売上高 (円換算):33億6858万ドル(4985億円)
対23年度比:↓ 3.4%減 対19年度比:1.11倍 決算期:24年12月期
15位 オン(スイス) 売上高 (円換算):23億1830万フラン(4242億円)
対23年度比:↑ 29.3%増 対19年度比: ー※2 決算期:24年12月期
16位 Xtep(中国) 売上高 (円換算):135億7700万人民元(2715億円)
対23年度比:↑ 6.5%増 対19年度比:1.66倍 決算期:24年12月期
17位 ミズノ(日本) 売上高 :2403億円
対23年度比:↑ 4.6%増 対19年度比:1.42倍 決算期:25年3月期
1ドル=148円、1ユーロ=171円、1人民元=20円、1スイスフラン=183円で換算
※1=非上場のため報道数字による ※2=非上場だったため対比不能
POINT2:
第3極ブランド群が浮上
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「ホカ」
「ホカ」が6月に「アトモス(ATMOS)」などで限定的に発売した“マファテスリー2 グリッドJP”(2万9700円)
「オン」
「オン」が7月に発売した“クラウドサーファー マックス”(2万3100円)
「アシックス」
「アシックス」が「エミ(EMMI)」とのコラボで7月に発売した“ゲルキネティック フルーエント”(2万5850円)
スポーツブランド、中でも花形のスニーカー市場では、かつては「ナイキ(NIKE)」か「アディダス(ADIDAS)」が圧倒的で、オルタナティブとして「プーマ(PUMA)」「コンバース(CONVERSE)」「ニューバランス(NEW BALANCE)」など、という時代が続いてきた。しかし、そんなお決まりのプレーヤーによる寡占市場が多様化し、大きく変化しているのが近年の特徴だ。ハイプスニーカーブームの終焉と共に王者「ナイキ」は失速したが、それによってスニーカー市場全体が地盤沈下することはなく、むしろ「人とかぶらないモノが欲しい」という消費者の心に火をつけた。そうしたニーズを「オン(ON)」「ホカ」「サロモン」「アシックス(ASICS)」などが満たし、第3極とでも呼ぶべきカタマリを構成している。盛り上がるスニーカー市場を目掛けて、これまではウエア中心だった「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」「アークテリクス」「デサント(DESCENTE)」などもフットウエア強化を打ち出しているほか、小規模ブランドも増えている。
POINT3:
世界中で直営店出店が加速
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アシックスが“ラグジュアリーライフスタイルブランド”と位置付けて運営する「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」は7月、世界有数のショッピングストリート、パリ・シャンゼリゼ通りにグローバル旗艦店を出店した。ラグジュアリーブランドも並ぶ同通りへの出店は、「日本企業のブランドとして初」と同ブランド。これ以外にも、世界中でスポーツメーカーによる好立地への出店が相次いでいる。例えばロンドンでは、「サロモン」が5月にバタシー発電所跡の再開発エリアに出店した。同ブランドは日本でも今春夏に6店をオープン済みだ。日本ではほかに、「コロンビア(COLUMBIA)」が6月に原宿の明治通り沿いに2フロアで出店したほか、丸の内エリアでも今春夏は出店が相次いだ(関連記事はこちら)。今秋は「アークテリクス」が9月にニュウマン高輪、10月に東武百貨店池袋店に出店。「オン」は銀座・並木通りに旗艦店を出店する。「パタゴニア(PATAGONIA)」は東京・京橋に出店、「ホカ」は心斎橋、高輪、丸の内、渋谷と25年内に一気に4店オープンと、出店情報を挙げ出したらきりがない。利益率が高く、イメージを作りこめる直営店の強化は、近年のスポーツメーカー共通の成長戦略となっている。