アディダス(ADIDAS)は4月26日、独ヘルツォーゲンアウラッハにある“キャンパス”と呼ぶ本社内で、サポート契約するアスリートや卸先専門店、メディア関係者、ランニングコミュニティーである“アディダスランナーズ”リーダー、自社社員、地域住民らが集うランニングイベント「アディゼロ:ロード トゥー レコード 2025(ADIZERO : Road to Records 2025)」を開催した。「これほど多くのパートナーやチームメンバーが同じ瞬間、同じ気持ちを楽しめる場は他にない。われわれが一つになる場だ」と、アルベルト・ウンチーニ・マンガネリ(Alberto Uncini Manganelli)アディダス ランニング グローバルジェネラルマネジャーは意義を語る。
「ロード トゥー レコード」では、“キャンパス”内に世界陸連公認の特設コースを設置。男女別で10キロメートル、5キロメートル、1マイル(約1.6キロメートル)、800メートルのレースを開催し、世界中から約140人のアスリートが参加した。女子10キロメートルでは、ケニア出身のアグネス・ゲティチ(Agnes Ngetich)選手が29分27秒で世界記録を更新。ほか、年齢別、国別、大陸別などを含め、計11の記録を更新した。
日本からは、青山学院大学や國學院大学、創価大学といった「アディダス」がパートナーシップを結ぶ大学陸上部や実業団の選手ら11人が招待を受けて参加した。男子5キロメートルに参加した青山学院大学の黒田朝日選手は、「海外の有力選手が集う中で彼らについていけたことに手応えを感じた。こうしたハイスピードのレースを体験することで、国内のレースに出たときの心の余裕も変わってくる」とコメント。
ステークホルダーが
ブランドの考え方や取り組みを体感
アスリート向けレースの終了後は、“アディダスランナーズ”メンバーや、地元の市民ランナー、アディダス社員らが参加する5キロメートルのファンランも開催。また、レース前日には、パフォーマンスランニングシューズの最新モデル“アディゼロ アディオス プロ エヴォ 2(ADIZERO ADIOS PRO EVO 2以下、エヴォ2)”のメディア向けプレゼンテーションや、本社内のアーカイブルームをめぐるツアー、プロトタイプ製品を身に付けてのラボテスト体験、“アディダスランナーズ”のカンファレンスなども実施し、イベントに合わせて世界中から集まった関係者が、ブランドの考え方や取り組みを改めて体感できるようにした。
アディダスでは21年から「ロード トゥー レコード」を毎年開催しており、24年までの4回の開催で計33の新記録が生まれたという。なお、今年の「ロード トゥー レコード」翌日の4月27日に開催されたロンドンマラソンでは、女子、男子共にアディダスがサポートするアスリートが1位を獲得。エチオピア出身のティギスト・アセファ(Tigist Assefa)選手は女子単独レース世界新記録で1位となり、男子はケニア出身のセバスチャン・サウェ(Sebastian Sawe)選手が1位となった。
EDITOR’S VIEW
第1四半期は絶好調で着地

ナイキ(NIKE)が17年に厚底のカーボンプレート入りシューズを発売したのをきっかけに、それまで薄底が当たり前だったランニングシューズの世界に革命が起きた。各社が厚底カーボン入りシューズを競い合って開発する中で、アディダスが23年に発売した“アディゼロ アディオス プロ エヴォ 1(ADIZERO ADIOS PRO EVO 1以下、エヴォ1)”は、片足200グラム前後が一般的というカーボン入りシューズの中で、138グラムという圧倒的な軽さを実現。24年のマラソン世界6大大会では男女優勝者の半数が“エヴォ1”を着用するなど、アディダスはいま、競争激しいランニングシューズのイノベーションにおいて、世界トップの座にあると言っていい。
今回の「ロード トゥー レコード」は、“エヴォ1”の進化版である“エヴォ2”のお披露目が目玉の1つだった。女子10キロメートルで世界新を更新したゲティチ選手は“エヴォ2”ではなく“エヴォ1”を着用しており、「(発表直後だったため)“エヴォ2”はまだ履いていない。これから試す」と話していたが、翌日のロンドンマラソンでは男子1位のサウェ選手、同3位のアレクサンダー・ムニャオ(Alexander Munyao)選手が“エヴォ2”を着用(女子1位のアセファ選手は“エヴォ1”を着用)しており、既にそのパワーを証明している。
先日発表されたアディダスの25年1〜3月期業績は、売上高が前年同期比12.7%増の61億5300万ユーロ(約9967億円)、営業利益は同81.7%増の6億1000万ユーロ(約988億円)と予想を大幅に上回り、ビョルン・グルデン(Bjorn Gulden)CEOは「全エリア、全販路で2ケタ増を達成した」と喜びと共にコメント。“サンバ”“ガゼル”などのテラスシューズや、ロープロファイルと呼ぶ“テコンドー”“バレリーナ”などのライフスタイルシューズ群がけん引すると共に、パフォーマンスカテゴリーではランニング部門が「2ケタ成長」(決算資料から)し、「“アディゼロ”シリーズの継続的な人気により、アディダスはランニング市場での存在感をさらに高めている」(同)。足元業績は絶好調ながら、トランプ関税による米国市場の不透明感が下期以降強まると見て、25年12月期の通期予想は据え置いた。