アディダス(ADIDAS)の2024年12月期決算は、売上高が前期比10.5%増の236億8300万ユーロ(約3兆6945億円)、営業利益はおよそ5倍(同398.9%増)の13億3700万ユーロ(約2085億円)、純損益は前年の1400万ユーロ(約21億円)の赤字から8億3200万ユーロ(約1297億円)の黒字に転換した。
カテゴリー別での売上高は、売り上げ全体の59%を占めるフットウエアが同15.7%増の139億7500万ユーロ(約2兆1801億円)と業績をけん引。同じく35%を占めるアパレルは同4.6%増の82億1600万ユーロ(約1兆2816億円)、アクセサリー&ギアは同0.7%増の14億9900万ユーロ(約2338億円)だった。
地域別の売上高は、同社の最大の市場である欧州が同19.8%増の75億5100万ユーロ(約1兆1779億円)、中国(大中華圏)は同8.4%増の34億5900万ユーロ(約5396億円)、新興市場は同16.1%増の33億1000万ユーロ(約5163億円)、南米は同21.0%増の27億7200万ユーロ(約4324億円)、日本と韓国は同3.6%増の13億3900万ユーロ(約2088億円)といずれも増収だった。一方、同社にとって欧州に次ぐ市場である北米は、「イージー(YEEZY)」事業の終了や卸の軟調により、同1.7%減の51億2800万ユーロ(約7999億円)と減収。しかし、10~12月期(第4四半期)には回復し、2ケタ成長となっている。
「イージー」の在庫販売は24年で完了
アディダスは22年10月、カニエ・ウェスト(Kanye West)ことイェ(Ye)の反ユダヤ主義的な発言を含むヘイトスピーチや相次ぐ問題行動を受けて関係を解消し、約7年半にわたって共に手掛けていた「イージー」事業も同時に終了した。これに伴って発生したおよそ12億ユーロ(約1872億円)相当の在庫の一部を、23年5月から2回に分けて販売。残りの在庫は24年度に全て販売し、この分の売り上げはおよそ6億5000万ユーロ(約1014億円)となった。なお、そのうち2億6000万ユーロ(約405億円)程度を、同社が設立したヘイトクライムなどの被害者支援を行うチャリティー団体に寄付したという。
CEOのコメント
23年1月に就任したビョルン・グルデン(Bjorn Gulden)最高経営責任者(CEO)は、「24年は2ケタ増収を実現したほか、営業利益が前年から10億ユーロ(約1560億円)以上増えるなど、予想を超える結果となりうれしく思っている。現在の経営体制となって2年が経つが、23年は立て直しに集中し、24年にはその成果が表れてきた。改善すべき点はまだ沢山あるものの、尽力してきたチームを誇らしく思う。マクロ経済上の先行き不透明感が続いているが、“ローカルマインドを持ったグローバルカンパニー”として機敏に対応し、25年もさらに成長できるものと確信している」と語った。
25年は米政府による関税の引き上げを警戒
一方、同社は25年の見通しとして、売り上げの成長率は現地通貨ベースで1ケタ台後半、営業利益は17億〜18億ユーロ(約2652億〜2808億円)と発表。24年の好業績を踏まえるとやや保守的な数字だが、グルデンCEOによれば、2ケタ成長も視野に入れているものの、地政学上の先行き不透明感が継続していることや、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領による関税の引き上げを警戒した結果だという。「上り調子だった24年第4四半期に続き、25年も好調な滑り出しとなっているが、社会情勢が非常に不安定であることを加味せざるを得ない」と説明した。同社は数年前からサプライチェーンの分散化に取り組んでおり、調達先をこれまでの中国からベトナムやインドネシアなどにも拡大している。このため、対中関税の引き上げによる影響は以前より抑制できる見通しだが、中国以外の国にも関税の引き上げが適用される可能性があり、実際の影響については「予想のしようがなく、その都度、機敏かつ柔軟に対応するしかない」と話した。
なお、同社は1月、ドイツ本社で最大500人規模の人員整理を行うことを発表。これはコスト削減のためでなく、持続的な成長に向けた組織の合理化を図ることが目的だが、こうした機敏性を高めるためでもあるという。また、同社はデザインチームをドイツ本社に加えて、米ロサンゼルスとポートランド、中国・上海、そして東京の拠点に置いているほか、生産工場も中国市場向けのものは中国に、インド市場向けのものはインドに設立するなど、主要市場におけるローカライズ戦略を推し進めている。