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「ビオトープ」事業開始15年で4店目の神戸店 厳選した立地で「オンリーワンの店」を作る秘訣

ジュンは、大型路面店「ビオトープ神戸(BIOTOP KOBE)」をきょう8日に開く。場所は近代建築が点在する神戸市中央区の旧居留地。歴史を感じさせる空間に、ファッション、コスメ、生活雑貨を豊富にそろえ、飲食店を併設した複合型セレクトショップとなる。ジュンの佐々木進社長と、クリエイティブディレクターである迫村岳・常務取締役の2人の仕掛け人は、どんな店を目指しているのか。神戸で聞いた。

新規出店は「まず物件ありき」で決める

WWD:「ビオトープ」は東京・白金(2010年開店)、大阪・南堀江(14年開店)、福岡(19年開店)に続く4店舗目。神戸を選んだ理由は?

迫村岳クリエイティブディレクター(以下、迫村):「ビオトープ」に関しては物件ありきで決めている。通常の業態であれば、まず東京に数店舗、次に大阪、続いて名古屋となるだろう。これまでの3店舗はいずれも大勢の人が行き交うターミナル立地でもなく、商業施設のテナントでもない。ユニークな建物や空間、周辺環境を重視して厳選してきた。今回の神戸も1958年竣工のビルにたまたま空きが出たため、出店を決めた。

佐々木進社長(以下、佐々木):神戸港に近いこのビルは海運商社のオフィスビルとして建てられたと聞いている。港町らしい独特の匂いがある。これまでの3店舗とは異なる個性があって面白い。

WWD:神戸のマーケットをどう分析しているか?

佐々木:旧居留地で当社は古くは「アーペーセー(A.P.C.)」(現在の運営は別の会社)を運営してきたし、13年からは「サタデーズNYC(SATURDAYS NYC)」を出店しており、エリアの特性は深く理解している。目的意識を持って来店されるお客さまが多く、一度ファンになれば繰り返し来てくださる。商圏には芦屋をはじめ富裕層のお客さまもたくさんいる。「ビオトープ」の世界観に共感してくださるはずだ。

迫村:神戸はもちろん、中・四国を含めて広範囲からお客さんを呼びたい。落ち着いた空間で、じっくり買い物していだけるよう空間設計した。仮に同じ服であっても「ビオトープ」の店内で手に取ると他店よりも魅力的に映る。そんな工夫をこれまでの3店舗で磨いてきた。ていねいに接客して、商品の背景まで伝える。

「物販」と「飲食」を両立する手法

WWD:神戸にもカフェ&レストランを併設した。

迫村:この区画は市民の憩いの場である東遊園地にも近く、休日には家族連れも多い。旧居留地は意外にカフェが少ないので、そんな方たちにも気軽に立ち寄ってもらえる場所になるだろう。メニュー開発は東京・日本橋の「ネキ」や世田谷代田の「ソングブック」を手掛ける西恭平さんにお願いした。ワインも充実しており、昼も夜も楽しめる。

佐々木:同じ店で物販と飲食を両立させるのは、けっこう難しい。「服を買う」と「食事をする」はモチベーションが違うから、無理に一緒にすると失敗する。でも「ビオトープ」は既存の3店舗とも相乗効果を生んでいる。

WWD:コツはあるのか?

佐々木:「ビオトープ」の場合は物販と飲食のゾーニングを一体化しずぎるとダメ、明確に区切りすぎてもダメ。言葉で表現するのは難しいけど、適度なゾーニングの塩梅がある。「サタデーズNYC」や「サロン アダム エ ロペ(SALON ADAM ET ROPE)」、昨年12月に表参道に開いた「V.A.」など、当社は物販と飲食の併設店をいくつか運営しているが、それぞれ業態によってやり方は異なる。

迫村:飲食の併設は「ビオトープ」の強みだ。服だけが目的であれば、来店の頻度が限られてしまう。でも居心地の良い空間で食事をしたりお茶をしたりするため立ち寄れる店であれば、お客さまは頻繁に来店してくれる。ついでに服や生活雑貨を手に取る。

WWD:秋に出店予定の札幌はどんな店になる?

迫村:札幌の円山公園付近になる。広大な緑が広がる円山公園は札幌市民のオアシスであり、周辺は閑静な住宅街だ。ここもいわゆるショッピングエリアではない。既存の店舗とはまた違ったユニークな店になるだろう。

WWD:事業開始から15年で、神戸は4店目。現在の「ビオトープ」の売上高はどれくらいに成長しているのか?

佐々木:具体的には言えないが、神戸を含めた4店舗とEC(ネット通販)で30億円が見えてきた。中長期的には7〜8店舗とECで50億円は見込めるだろう。ただ、迫村が述べた通り「ビオトープ」の出店は物件ありき。性急な成長は求めない。厳選した立地とオンリーワンの店作りで、わざわざ訪れるに値する「ビオトープ」であり続ける。

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