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年内に362億円の借金返済が迫るスパイバー、関山社長が経営危機説を一蹴「むしろ事業価値は高まっている」

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4月1日に公表した決算公告に
年内に362億円の返済に絡み「GC注記」

人工タンパク質素材「ブリュード・プロテイン(以下、BP)」を展開するスパイバーが、危機を迎えている。2025年12月28日を期限に362億円という巨額融資の返済が迫っており、24年12月期の決算公告には「継続企業の前提に関する注記(GC注記)」がついた。世界でも先頭を走る技術力で巨額の資金を集めてきたスパイバーに何が起こっているのか。そして「夢の繊維」は、一体どうなるのか?渦中の関山和秀社長に直撃した。(この記事は「WWDJAPAN」2025年6月30日号からの抜粋です)

スパイバーの24年12月期業績は売上高にあたる営業収益4億1400万円に対し、営業損失が48億9000万円、純損失は295億円だった。純損失がここまで膨らんだのは、米国で建設中の工場の資材高騰や工期遅れで、減損損失を280億円計上したため。加えて、決算公告のGC注記として「25年12月28日に到来する金銭消費貸借契約について、返済資金の確保に疑念が生じており、継続企業の前提に重要な疑義を感じさせる事象又は状況が存在しております」と記された。

「金銭消費貸借契約」とは、20年12月〜21年10月にかけて三菱UFJモルガン・スタンレー証券をアレンジャーに行った「事業価値証券化」で調達した400億円だ。「事業価値証券化」は技術や将来の事業価値を担保に融資に近い形で資金を調達する手法で、スパイバーは自社の優れた技術を担保に、かなりレバレッジを効かせて借金をしたということ。この点について関山社長は「借入金の返済については、リファイナンス(資金の借り換え)すべく各所と調整を重ねている」という。スパイバーの開発した人工タンパク質素材は、ベースとなるタンパク質を遺伝子レベルで手を加え糸やプラスチックを設計・製造し、多彩な機能や物性を付与できると言われている。また、原料に植物性のバイオマスを使用し、生産に発酵法を使用するため、大量の熱エネルギーを使う石油由来の合成繊維やプラスチックに比べると、著しく環境負荷が小さい。そのため次世代の本命サステナブル素材として注目を集め、世界の先頭を走るスパイバーは大規模な資金調達に成功してきた。

米国での工場建設も、スパイバーのこうした技術に目をつけた米国の穀物メジャーであるアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)が出資をした上で、20年から同社の工場の敷地内で行っていた。ただ、直後に始まったコロナ禍に伴う工期の遅れや、コロナ禍明け後は金利の上昇やインフレによる物価上昇などで「割合早い段階から計画通りに行かないことは判明していた」という。「その一方で、先行して稼働していたタイ工場で生産効率向上の研究開発が想定以上に進んでいて、今年初めには生産性を従来の2〜3倍以上に高める製造技術を確立できた。資金難の今は計画を見直し、設備は当初よりかなり小さい規模でスタートするが、BP素材の原料の生産コストは劇的に下げられる。為替の関係もあるが、いわゆる普及ラインと言われる“100ドルの壁”は大幅に超えられる」。

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