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ティファニーを買収したLVMHアルノー会長インタビュー 「私はティファニーを深く敬愛している」

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「ディオール(DIOR)」などを擁するLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)がティファニー(TIFFANY & CO.)を162億ドル(約1兆7496億円)で買収した件について、ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼最高経営責任者(CEO)が米「WWD」の取材に応じた。

 買収が合意に至ったことが正式に発表された11月25日に、アルノー会長兼CEOはティファニーのおよそ1万4200人の従業員に対して、「われわれの目標は『ティファニー』がさらに成長できる理想的な環境を用意することであり、そのために長期的に投資する。ブランドの豊かなヘリテージや個性を尊重しながら、いっそう発展させていきたい」とメッセージを送ったと語る。

 同氏は、「私は『ティファニー』を深く敬愛している。長い歴史を誇るアメリカのラグジュアリーブランドであり、そうした意味では唯一ともいえる存在だ。ブランドを次世代に向けて磨き上げるのは時間が掛かるものだが、米国で上場していると短期的に利益を出すことを強く求められる。もちろん私も利益を上げたいと思っているが、ブランドの魅力を最大限に引き出すには長期的な視点が必要だ。10年後にブランドがさらに発展しているようにするには何をするべきなのか。それをしっかり考えて行動すれば、利益は後からついてくる。経済的な成功はあくまでも結果であり、それが目標ではない」と話し、LVMHの傘下となったことで短期的な利益を求める投資家からのプレッシャーに晒されなくなるという利点があることを説明した。

 LVMHによる買収手続きが完了するのは2020年半ば頃だと見られているが、ティファニーの経営陣に変更があるのかどうかについて現段階では発表されていない。ジャン・ジャック・ギヨニー(Jean-Jacques Guiony)LVMH最高財務責任者が、「穏当かつ論理的な戦略でいく」とアナリスト向けの発表会で述べているのみだ。今回の取材でも、この点については明かされなかった。

 クリエイティブ面での方向性についても、アルノー会長兼CEOは、「『ティファニー』の既存コレクションをまだ全て見ていないし、クリエイティブチームとも会っていないので、詳細について話すのは時期尚早だろう」と述べるにとどめた。しかしLVMHは、「ティファニー」のジュエリーコレクションに注力し、既存のスタイルを生かしつつ新たなものも提案していくという計画を立てているようだ。中でも、鍵をモチーフにした“ティファニー キー”シリーズや、6つの小さな爪でダイヤモンドを支える“ティファニーセッティング”の婚約指輪、そしてモダンな“ティファニー T”コレクションなどは今後も力を入れていくと思われる。なお、“ティファニー T”コレクションはフランチェスカ・アムフィテアトロフ(Francesca Amfitheatrof)前「ティファニー」デザイン・ディレクターが15年に発表したものだが、同氏は18年4月に「ルイ・ヴィトン」ウオッチ&ジュエリー・アーティスティック・ディレクターに就任している。

 ニューヨーク5番街にある「ティファニー」本店は現在改装中で、21年に新装オープンする予定だ。アルノー会長兼CEOは、「米国内のほかの店舗も改装したほうがいいかもしれない。どのブランドもそうだが、『ティファニー』にも改善すべきところがたくさんある。当社が擁する『ブルガリ(BVLGARI)』も全面的に改装して、以前よりもずっと魅力的になった。われわれは、こうしてブランドをいっそう輝かせることができる」と話した。

 ちなみに、17年に新装オープンした「ブルガリ」ニューヨーク5番街旗艦店は57丁目と交差する角にあり、道路を挟んだ隣には「ティファニー」5番街本店が、斜め向かいには「ルイ・ヴィトン」5番街旗艦店が建っている。世界に冠たる高級ショッピングエリアの中心地にある交差点の角のうち3つをLVMH傘下のブランドが占める格好となったわけだが、残り1つの角には米老舗百貨店バーグドルフ・グッドマン(BERGDORF GOODMAN)がある。この交差点を完全に独占したいと思うかと問いかけると、アルノー会長兼CEOは、「フランスには“二度あることは三度ある”という言葉はあるが、“三度あることは四度ある”という言葉はない」と笑顔で答え、バーグドルフ・グッドマンを買収するつもりはないことを示唆した。

 「ティファニー」は世界におよそ320の直営店を構えており、その93店が米国内にある。欧州を本拠地とするLVMHにとって北米市場を強化できる機会ではあるが、同市場では苦戦も経験している。LVMHは01年に「DKNY」の親会社ダナ キャラン インターナショナルを買収したものの、業績が振るわない年が続き、16年にG-IIIアパレル グループ(G-III APPAREL GROUP)に売却した。アルノー会長兼CEOは、「『DKNY』はアメリカの素晴らしいスポーツウエアブランドだが、ヨーロッパのラグジュアリーとはかけ離れている。当社が得意とする分野とは違っていたかもしれない。しかし、『ルイ・ヴィトン』などのブランドでは現地チームが米国での経験を積んでおり、最近はテキサス州に米国で3カ所目の工房をオープンした」と成果を披露した。

 LVMHの19年7~9月期決算の売上高は、前年同期比17.0%増の133億1600万ユーロ(約1兆5846億円)と上期に引き続き増収だった。こうした業績の好調ぶりを背景に、今回はアメリカを代表するラグジュアリーブランドであるティファニーを傘下に収めたが、今後もラグジュアリー業界の世界的なリーダーとしてたゆむことなく進んでいくと同氏。ファンであり、いい友人でもあるというテニス選手のロジャー・フェデラー(Roger Federer)を引き合いに出し、「彼は世界をリードしているが、さらに進化するべくトレーニングを怠らない。私も同じだ」と締めくくった。