「ティファニー(TIFFANY & CO.)」の時計が存在感を増している。ブランドは2021年にLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン グループ(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)に仲間入りすると、時計のラインアップを根本的に見直し、ジュエリーに着想を得た時計の開発をスタート。170年を超える高級時計の製造に関するノウハウを詰め込み、“ファイン・ジュエリー・ウオッチ”と呼ぶ、「ティファニー」でなければなし得ない、ジュエリーとウオッチの遺産を融合したコレクションを生み出した。その姿勢は、より手が届きやすい価格帯の時計にも及び、若い世代にも人気の“ティファニー ハードウェア”も時計へと姿を変え、人々の手元を彩っている。なぜ「ティファニー」は、わずか数年で時計ビジネスを刷新し、魅力的なコレクションを次々と生み出すブランドへの進化を遂げられたのだろう?
LVMHグループへの加入以降ブランドを統括するアンソニー・ルドリュ(Anthony Ledru)=ティファニー社長兼最高経営責任者(CEO)は、「我々の時計はいずれも、高級時計の製造に関する専門の知識と『ティファニー』の象徴的なデザイン、そしてジュエリーの芸術性が完璧に融合している。『ティファニー』の時計は、ジュエリー・コレクションとの一貫性を持ち、そのシンボリックなモチーフを時計に昇華することで、伝統と革新を体現しつつ、歴史的な遺産とも言えるコレクションにおける新しい魅力にもなっている。今の時計コレクションは新しいものばかりだが、『ティファニー』をご存じの方なら、その由来がすぐに分かるだろう」と話す。
ジュエリーを着想源としつつ、時計製造の伝統的なヘリテージを融合させる役割を担ったのは、ファイン・ジュエリーと高級時計双方のビジネスを手掛けるブランドでの経験が豊かなニコラ・ボー(Nicolas Beau)=ティファニー オルロシュリー(時計製作部門)担当ヴァイス プレジデントだ。ボー ヴァイス プレジデントも、「『ティファニー』のウオッチ・メイキングは、ジュエリーから着想を得るとともに、伝統あるヘリテージとも結び付いている」と話す。例えば2022年に発表した“バード オン ア ロック”は、伝説的なデザイナー、ジャン・シュランバージェ(Jean Schlumberger )を讃える一連の“ジャン・シュランバージェ バイ ティファニー”のウオッチ・コレクション。美しいファセットの宝石とダイヤモンドの鳥は、まるで青空のように鮮やかなブルーのターコイズの文字盤と複雑機構のフライング・トゥールビヨンを搭載した文字盤の上を優雅に飛翔。ジェムストーンのマルケトリー(象嵌細工)やゴールドの彫刻、ダイヤモンドのセッティングなど、精緻な技を組み込んだ文字盤は、時計業界で初めてというファセットカットのサファイヤクリスタルのドームの下に収められている。この時計には、848石(合計3.9カラット)のダイヤモンドを100時間以上を費やしてセット。サファイヤクリスタルのケースバックから見える2枚のプレートにも143石(合計0.55カラット)のダイヤモンドをメタル部分がほとんど見えないようにスノーセッティングで配した他、リューズには「ティファニー セッティング」から着想を得た0.42カラットのソリティア ダイヤモンドをあしらった。時計とジュエリー、二つの世界の技術と美意識の融合という「ティファニー」の時計の精神を象徴する。
この“バード オン ア ロック”コレクションには、文字盤上の回転リングの上で羽根を休めている鳥が手首の動きに合わせて優雅に回転するシリーズも。 手首の動きに合わせて大空を回旋するかのような鳥の動きは、独自開発のボールベアリングに正確な重みを加えることで実現している。最高峰のジュエリー技術を継承する職人たちと、時計製造に関する現代の革新的な技術が融合した。
2羽の飛躍する小鳥で表現するハイジュエリーと高級時計の融合
“バード オン ア フライング トゥールビヨン”は、「ティファニー」を象徴する“バード オン ア ロック”ブローチが着想源で、ハイジュエリーと高級時計の製造技術が見事に融合している。文字盤上を小鳥2羽が飛び回る時計には、ブランド初のフライング トゥールビヨンを搭載。文字盤のマルケトリー(象嵌)、ムーブメントに施されたダイヤモンドのスノーセッティングなど、360度どこから見ても美しく、隅々にまで精緻な職人技が息づいている。
タイムレスな新アイコン“ティファニー ハードウェア”が時計に
二つのアイコンが文字盤の上で出合う“バード オン ア ロック レガシー”
1965年に誕生した“バード オン ア ロック”ブローチは、デザイナーのジャン・シュランバージェが手掛けたアイコンジュエリーだ。この長年愛され続ける小鳥とさまざまなカラーストーンを組み合わせた楽観的なスタイルが時計にも登場。文字盤の主役である小鳥がたたずむのは、初代ジェモロジストのジョージ・フレデリック・クンツが発見した“モルガナイト”だ。小さな文字盤にブランドのアイコン二つを閉じ込めた夢のあるデザインになっている。
ダイヤモンドの権威「ティファニー」を象徴する大胆なデザイン
“ティファニー エタニティ”は、さまざまなシェイプのダイヤモンドのエンゲージメントリングを提案した1960年代の広告がイメージソースだ。ラウンドブリリアントをはじめ、バゲットやハート、ペアなど12種類の形のダイヤモンドをインデックスに使用し、リューズには“ティファニー®セッティング”から着想を得たデザインを採用。ブレスレットにもシェブロン状にダイヤモンドをセット。「ティファニー」ならではの大胆かつユニークなスタイルが特徴だ。
伝説のダイヤモンドを究極のジュエリーウオッチで表現
伝説的な128カラットの“ザ ティファニー ダイヤモンド”に敬意を示した“カラット 128”。風防には、そのダイヤモンドを想起させるようなカットを施した35カラットのアクアマリンを使用。ブレスレットには、大きさの異なるダイヤモンドにアイコニックな“ティファニー セッティング”を施し連ね、華麗に仕上げている。「ティファニー」のDNAの一つであるダイヤモンドの魅力を最大限に生かした究極のハイジュエリーウオッチだ。
革新的なムーブメントと職人技で紡ぐ新時代のラグジュアリー
「ティファニー」の精巧なクラフツマンシップと革新性を象徴する新作時計が登場した。ジャン・シュランバージェを代表するモチーフである“ロープ”にフォーカスしたデザイン。ロープのしなやかさを緻密な金細工で表現し、分針のモチーフにも用いるなどディテールにこだわっている。また、ブランド初のソーラー ムーブメントを搭載。ラ・ジュ・ペレ社と協働開発したこのムーブメントは、太陽光を浴びなくても約8カ月持続する革新的なものだ。