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特集 CEO2026

【エスモードアート 祢宜裕貴CEO】組織を固め、攻めに転じる 新事業のグローバルな展開も

PROFILE: 祢宜裕貴/CEO

祢宜裕貴/CEO
PROFILE: (ねぎ・ひろき)1978年6月28日生まれ、大阪府出身。関西学院大学大学院の経営戦略科を修了。新聞社の広告局で勤務し、ファッションイベントの運営や協賛営業、大手流通会社の広告営業を担当した。その後PR 企業に転職し、CMをはじめとするメディア戦略や、タレント・モデルとの商品開発コンサルティング業に従事。2012年にジュエリーブランド「ステラハリウッド」を創業し、21年にエスモードアートを設立 PHOTO : SHUHEI SHINE

創業5年目のエスモードアートは2025年、独自の行動指針を策定し、組織の足元を固める「内なる改革」に注力した。祢宜裕貴CEOが描く26年は、グローバルな新事業やコミュニティー形成による「攻め」の展開だ。事業成長と同時に、社員のウェルビーイングや社会的意義を追求する次なるビジョンを聞いた。

抹茶ブランドのグローバル展開を計画

WWD:2025年はどのような1年だったか。

祢宜裕貴CEO(以下、祢宜):足元の組織強化と土台固めに注力した1年だった。事業拡大のスピードに耐えうる強固な地盤を作るため、あえて社内のインナーブランディングに焦点を当てた。

WWD:社内体制の強化に踏み切った理由は?

祢宜:エスモードアートも創業5年目を迎え、組織が拡大する過渡期にあると感じたからだ。私自身が大切にする価値観や考え方、会社としての在り方、そして社員に期待するマインドセットを、改めて浸透させる必要があった。そこで、ミッション・ビジョン・バリューから事業戦略、行動指針までを網羅した冊子「SCS(S mode art Culture Standard)」を策定した。これを全社員に配布し、共通言語として定着を図っている。「SCS」を通して、“考え”“マーケティング”“アート思考”“ソーシャルグッド”、この4つを備えた人材を育成していきたい。併せて評価制度の刷新や既存事業の見直しを行い、次の成長フェーズへ進むための準備を着実に整えた。

WWD:社員の意見も反映させた?

祢宜:組織が大きくなれば、多様な視点が生まれる。自分自身も偏っている部分はあるだろう。多様な価値観を理解するためにも、社員の意見を踏まえて自分の考え方を見つめ直し、冊子にも反映させた。

WWD:事業面でのトピックは?

祢宜:ジュエリーブランド「ステラハリウッド(STELLAR HOLLYWOOD)」は 、スタイリストの風間ゆみえさんにシーズンビジュアルのディレクションに関わっていただいた。彼女独自の視点が追加されたことで、感度の高い層へ向けたブランド訴求力が格段に向上した。ビーガンフードショップ「ザ ビー(THE B)」では、廃棄されてしまう食材を活用したメニュー開発を行うことでフードロス削減に貢献したり、近年深刻化している放置竹林を活用した商品を販売したりするなど、環境課題の解決に直結する取り組みを強化した。当社の強みであるファンマーケティングの領域では、国内外で活躍する赤西仁さんおよび錦戸亮さんとの共同プロジェクトによるジュエリーブランド「ジェラージェン(JERAGEN)」を発表し、大きな反響を得た。

WWD:社名の「エス(S)」には、“サステナブル”や“セーブ・ザ・フューチャー”などに加え、“ソーシャルグッド”という意味も込められている。この観点ではどんな活動を行ったか?

祢宜:難病と闘う子どもたちの夢をかなえる公益財団法人「メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパン」との取り組みが印象深い。この団体を通じて、「自分でデザインした服を着てがんの啓蒙活動を行いたい」という夢を持つ大輝くんに出会った。デザインから服の制作、撮影を含めたルックブックの作成までを一気通貫で支援した。今後も会社として何ができるかを考え続け、社会に貢献する活動を継続していきたい。

WWD:現在の課題は?

祢宜:AI活用の定着とリテラシーの向上だ。私自身を含め、全社的なリテラシーの向上が必須だと痛感している。すでに外部講師を招いたセミナーなどは実施しているが、座学だけでは不十分だ。一人ひとりが業務の中で真に使いこなせるレベルに到達するよう、より実践的な教育の場や、浸透のための工夫が必要だと考えている。

WWD:26年の展望は?

祢宜:世界に通用するブランドを育てることを、今年も変わらず目標にしている。具体的には、「ザ ビー」で培ったノウハウを生かして京都・宇治の茶畑をM&Aし、抹茶ブランドのグローバル展開を計画する。そのための準備が昨年完了し、ようやくスタートラインに立った。本格的に海外でチャレンジするのは27年からになるだろう。「ザ ビー」自体も、現在の形態とは少し形を変えてファッションビルでも展開する。また、事業戦略の鍵となるのが「コミュニティー作り」だ。現在も「ザ ビー」主催でシティークリーンイベントを開催し、店舗スタッフとお客さまが一丸となって街の清掃活動を行い社会貢献に取り組んでいる。これはあくまで一例だが、他の事業においても顧客を積極的に巻き込みファンを増やし、熱量の高いコミュニティーを形成していきたい。加えて、お客さまの満足や社会的意義の追求と同時に、エスモードアートの社員が心身ともに「幸福」であることも、当社の存在価値だと考えている。現在も、福利厚生の一環として「ザ ビー」のサラダランチを無料で提供したり、コーチングをはじめとする社内研修を導入したりするなど、あらゆる側面から支援をしているが、今後もこうした支援を拡充し、社員の心身の幸福を追求していきたい。

個人的に今注目している人

松葉屋創業者兼CEO 小島鉄平さん

盆栽事業「トラッドマンズ ボンサイ」を率いる小島鉄平さんに注目している。元々はセレクトショップのバイヤーだったが盆栽に魅了されて起業した人物。ラグジュアリーブランドなどともコラボレーションしている。日本の伝統産業は良くも悪くも“本流”を重んじる傾向が強い。だが、彼のように異業種から参入し、伝統に新しい風を吹き込む存在は非常に貴重だ。SNSの活用や自身のキャラクター作りを含め、「非本流」であることすらも独自のブランド価値へと昇華させている。

COMPANY DATA
エスモード アート

2021年に祢宜裕貴CEOが設立。12年にジュエリーブランド「ステラハリウッド」を、18年にビーガンフードショップ「ザ ビー」を立ち上げたことから、両ブランドを運営する企業として始まった。重盛さと美、吉野北人、窪塚愛流、山中柔太朗ら、タレントやインフルエンサーとのコラボブランドも多く実現してきた。現在の社員数は38人、売上高は非公表

TEXT : YU HIRAKAWA


問い合わせ先
エスモードアート
03-6712-6461