PROFILE: 加福真介/社長

人材サービスを祖業に、教育、店舗運営代行、マーケティング、空間デザイン、海外展開支援まで、ファッション・ビューティ産業の現場を横断的に支えるワールド・モード・ホールディングス(以下、WMH)。国内7事業会社と海外に7拠点を擁する同社は今、“人的資本経営”を軸に事業領域の連携を加速させ、産業の基盤そのものを強化していくフェーズに入った。加福真介社長に、現在地と次の一手を聞いた。
“人的資本経営”で
ファッション・ビューティ産業の
プロフェッショナル集団に
WWD:2025年の業界をどう振り返る?
加福真介社長(以下、加福):小学生の甥が「今年の漢字は“熊”でなく“高”だ」と言っていたが、確かに、高市早苗首相誕生、物価高による市場の二極化、高気温によるMDの変化、高機能商材の伸長など、複数の“高”が連なる年だった。美しさだけではなく、機能性を備えたプロダクトが評価される傾向は、ファッションでもビューティでもより明確になった。中でも注目する変化はAIの台頭だ。これからさらに一般化し、仕事や生活に深く浸透していく。今後AIを店頭や業務の生産性向上に生かし、顧客への付加価値と収益性の両立につなげることを目指す。
WWD:WMHが掲げる“人的資本経営”の核となる考え方とは?
加福:ファッション・ビューティ産業に貢献するプロフェッショナル集団でありたい。核になるのは、企業理念の内外への浸透だ。パーパスやビジョンを通して社員、顧客、パートナーの思いを一つに束ね、大きな目的の実現に向かう。そこから人の成長やブランドの形成が生まれる。ファッションは人の暮らしを豊かにする産業であり、人が生き生き働くこと自体が価値になる。AIの時代だからこそ、人にしかできない仕事や共感の力がより重要になる。人への投資こそが、産業の未来を明るくすると信じている。
WWD:祖業の人材サービスではラグジュアリー店頭領域で70%の市場シェアを築いた。
加福:基幹システムや転職サイト「MyBRANDS」への投資もしてきたが、シェアを高めた最大の理由は、人材の専門性とマッチングの精度だ。この業界に貢献したいという意欲の高い人材を集め、ブランドに寄り添い続けてきた。単なる人材紹介ではなく、成長の場を作り、育成し、業界に定着してもらうところまで関わる。近年は、業務委託、新卒採用、スポットワークなど、人材や雇用機会の多角化も進め、採用側にも、働く側にもメリットが生まれる仕組みを整えてきた。また、店舗運営代行事業も拡大しており、ポップアップの運営代行支援も好評だ。市場環境や求められるスキルが目まぐるしく変わる中で、事業と人材に深く寄り添う提案が求められている。26年は、専門人材や経営人材の提供に一層注力する。
WWD:マーケティング領域では、14年にAIADを、23年には双葉通信社という2つの広告代理店をグループに迎えた。両社の関係性は?
加福:デジタルに強いAIADと、外資ブランドを支えてきた双葉通信社の知見が融合した。両社が緊密に連携をとりながら、クライアントの課題解決を起点にサービスを設計し、EC開発やSNS運用、CRM、PRなど、広告に着地しない案件も含めて事業成果に向き合っている。既存の広告代理店モデルを脱却し、顧客へのソリューション提供を第一に据えることで、自社グループ内の人材、教育、空間デザイン、店舗運営事業とも自然に連携が進む。クライアントの事業全体を良くしようという視点が、結果として収益性の向上につながっている。
WWD:かねてからAPAC地域での海外事業に投資を続けてきた。手応えを感じる点は?
加福:日本企業の海外進出における店舗運営サポート事業だ。ブランドの方針を守りながら自社運営に近い形で展開したいというニーズは強い。販売代行も含めて、国内で培ったモデルを海外に持ち込んだことで評価された。特にシンガポールでは、政府関連機関との協業で、販売員の地位向上と教育を目的とした研修プログラムを構築し、それを導入した紹介予定派遣が助成対象にもなっている。日本の高いサービスレベルを広める事業であり、今後他国にも展開していきたい。
WWD:WMHが「Bコープ」認証を目指す意義は?
加福:ファッション・ビューティ業界の持続的な成長のためには、人と仕事の質を高めることが不可欠。その前提として、私たち自身が“正しい会社”である必要がある。「Bコープ」への申請は、その姿勢を明確に示すためのもの。認証取得が目的ではなく、プロセスを通じて自社の基準と提供価値を高め、サステナブルな価値を業界に還元していきたい。
WWD:上場を視野に入れた上で、喫緊の目標は?
加福:上場は目的ではなく手段だ。海外で事業を拡大する上で必要だと考えている。しかし“人的資本経営”の土台が整い、パーパスが社内外に浸透し、社会とのつながりが明確になってからでなければ意味がない。人の成長と文化醸成こそ至上命題だ。100年続く企業の基盤を作りたい。
個人的に今注目している人
創業者 会長 藤田晋さん
藤田晋さんの「勝負眼 『押し引き』を見極める思考と技術」を購入した。サイバーエージェントは、若手社員が活躍しやすく、様々な事業を社員が立ち上げていて勢いがある。WMH も多くの経営人材や業界でも際立つスペシャリストが集まり育つ会社にしたいと思っている。藤田さんの経営哲学に触れてみたいので、講演会などの機会があれば、ぜひ足を運びたい。
ワールド・モード・ホールディングスは、ファッションおよびビューティ領域に特化したソリューショングループ。iDA、BRUSH、AIAD、AIAD LAB、フォーアンビション、VISUAL MERCHANDISING STUDIO、双葉通信社の国内7社とベトナム1社で構成し、国内27拠点、海外7拠点で展開。1600社を超える国内外のクライアントに対し、各事業の強みを生かした統合的なソリューションを提供している
ワールド・モード・ホールディングス
03-3374-8107