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H&Mが2020年に傘下の「ウィークデイ」でカスタムジーンズを発売 3Dボディースキャンでサイズを測定

 H&Mヘネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ以下、H&M)は、2020年に傘下のデニムブランド「ウィークデイ(WEEKDAY)」で、3Dボディースキャンとソフトウエアを用いて製作するオーダーメード仕様のジーンズを発売する。

 米サンフランシスコと香港にオフィスを構えるスタートアップ企業アンスパン(UNSPUN)は、人体をスキャンしてその情報を型紙に落とし込むことのできるソフトウエアを開発した。この技術によって、それぞれの体形にぴったりフィットしたジーンズを製造することが可能になる。同社は“自動化、そしてローカライズ化されたインターナショナルな製造”を通じて、地球上の二酸化炭素排出量を最低でも1%削減することを企業目標に掲げており、17年にはH&Mの「グローバル・チェンジ・アワード(Global Change Awards)」を受賞している。アンスパンは同年12月に香港市内のショッピングエリアでフィッティングルーム仕様のバスを走らせてこのアイデアを宣伝していた。この時3Dボディースキャンを体験した人びとの中に、H&Mの社内シンクタンク、ラボラトリー(LABORATORY)の循環/サステナブル型ビジネス開発チームのメンバーであるローラ・コッペン(Laura Coppen)がいた。

 3Dスキャンを体験するためには、レギンスにアンダーシャツなど体のラインがはっきりわかる格好になる必要がある。コッペンは「香港の中心街のバスの中でほとんど下着姿になるなんて、始めは奇妙なことだった」と語ったが、すぐにこのアイデアが持つポテンシャルを見抜き、ファッション業界全体の大きな変化につながることを確信したという。

 H&Mのラボラトリーは昨年9月、「ウィークデイ」の顧客100人の協力のもとにこのソフトウエアをテスト使用した。

 コッペンは「主な目的は“フリーサイズ”という選択肢をつくることで、デニムのサイズとフィット感の問題を解決することだった。また、カスタム製品に対応するというオンデマンド形式の製造についても調査したいと考えていた。その結果は期待をはるかに超えた」と語っている。この試みで、顧客は「ウィークデイ」の人気デニム2種から好きなデザインを選び、ポケットやステッチをカスタマイズした上でボディースキャンを行い、それぞれの体形に合ったデニムを発注して、商品は10日後に顧客のもとに届けられた。

 H&Mはソフトウエアの試験後、このサービスに対する顧客満足度調査を実施。コッペンのチームはおよそ65%の顧客が高く評価すると予想していたが、それを上回る80%から“満足”との回答が得られた。

 コッペンは「この結果は全体のシステムを再定義するという意味で、かなりの混乱を招く可能性が考えられる。デザインからサプライチェーンに至るまで、あらゆる製造サイクルのステージを一から見直すことになる。しかし、オンデマンド形式の製造はサステナブルであり利益も見込める。無駄の削減や、在庫過多の解消にもつながる」と語っている。

 20年秋に「ウィークデイ」の実店舗でこのシステムが試験的に運用されるが、どの店舗で行うかは未定だ。H&Mは一連の調査にかかった費用を明らかにしていないが、コッペンはこのカスタマイズジーンズは1着およそ900スウェーデンクローナ(約1万円)で販売されると考えており、調査に参加した顧客もこの価格を妥当だと答えたという。

 カスタマイズできるジーンズのバリエーションも来年には増やす予定だ。コッペンは、自分仕様にカスタマイズされた衣服にはより愛着が湧くものだと指摘し、この事業が衣服の廃棄量削減にもつながると考えている。

 しかし、このシステムの普及にはまだ時間がかかる。デジタル技術を用いる上での難点としては、オリジナルのデザインに則してリサイズやカスタマイズが行われるように、ソフトウエアの確実な調整が求められる。

 もうひとつの難点は、サプライチェーンレベルでどのように拡大していくかだ。ひとつひとつ異なる製品を扱える製造業者の十分な確保が必要となるし、デザインのバリエーションを増やす際には、デザインを保ちながらリサイズを行うようアルゴリズムの正しい動作も確認する必要がある。しかし、H&Mはすでにこの問題に前向きに取り組んでいる。