ファッション

エルメス、香港のデモをものともせずアジアで絶好調 19年上期も増収増益

 エルメス・インターナショナル(HERMES INTERNATIONAL以下、エルメス)の2019年1~6月期決算は、売上高が前年同期比15.1%増の32億8400万ユーロ(約3907億円)、営業利益は同9.0%増の11億4400万ユーロ(約1361億円)、純利益が同6.7%増の7億5400万ユーロ(約897億円)の増収増益だった。

 カテゴリー別での売上高は、レザーグッズが同15.9%増、衣料・アクセサリーが同18.4%増、シルク・テキスタイルが同6.8%増、香水が同3.5%増、ウオッチが同17.5%増だった。

 地域別の売上高は、日本以外のアジア太平洋地域が同21.1%増の12億9930万ユーロ(約1546億円)、日本は同16.2%増の4億60万ユーロ(約476億円)だった。フランス以外のヨーロッパが同8.8%増の5億4460万ユーロ(約648億円)、フランスが同4.0%増の4億580万ユーロ(約482億円)、南北アメリカが同16.2%増の5億6920万ユーロ(約677億円)、その他の地域が同17.8%増の6460万ユーロ(約76億円)と全ての地域で増収となった。

 香港では中国本土への容疑者引き渡しを可能にする条例に抗議する大規模なデモが6月から続いており、ポール・チャン・モー・ポー(Paul Chan Mo-po)香港特別行政区政府財政長官によれば、8月の観光客数は前年同月比で40%近く減少しているという。また香港統計局の発表によれば、特にラグジュアリー業界が大きな打撃を受けており、ジュエリー、ウオッチ、高級贈答品などの7月の売上高は同24.4%減となっているが、エルメスはこうしたマイナスの要因を吹き飛ばす勢いでアジアを中心に業績を伸ばしている。

 アクセル・デュマ(Axel Dumas)最高経営責任者(CEO)は、「『エルメス』は香港に7店舗を構えており、デモの関係で数店舗が臨時休業を余儀なくされたが、現地の強い顧客ベースのおかげでアジアでの売り上げへの影響はなかった。香港には昔から出店していることもあって、とても親しみを覚えている。誰もが納得できる政治的な解決策が見つかり、日常が戻ることを願っている」と語った。同氏はまた、「パリで暴動が続いていた19年4~6月でも、フランスにおける『エルメス』の売り上げは前年同期比6.2%増を記録した」と述べ、観光客数の変動にうまく対応していると説明した。

 なお、ティファニー(TIFFANY & CO.)も同じく香港にある10の店舗のうち数店舗が6日以上休業した。デモが収束しない場合、今年の売り上げは同社見込みの下限まで落ち込む可能性があるとしているものの、香港市場に対する戦略は当面変更しないという。

 エルメスは事業の好調ぶりに後押しされ、店舗の拡充や新規開店を続けている。7月に福岡・岩田屋の店舗を、8月には東京・日本橋三越の店舗をリニューアルオープンした。今後は中国、ドイツ、カナダ、ポーランドなどに新規出店し、22年にはニューヨーク・マディソンアベニューに新旗艦店をオープンする。化粧品事業では、メイクアップラインを20年の第1四半期に発売する。これは「エルメス」の店舗や自社ECサイトに加えて、英百貨店ハロッズ(HARRODS)や、米国と韓国の小売店で取り扱われる。

 ロゲリオ・フジモリ(Rogerio Fujimori)RBCキャピタル・マーケッツ(RBC CAPITAL MARKETS)アナリストは、「予想通りの結果だ。エルメスは収益基盤がしっかりしており、ラグジュアリー業界の中でも危機に対する耐性が強い。難点があるとすれば、高い需要に対して生産が追い付かないことだろう」とコメントした。

 デュマ=エルメスCEOは、「売り上げの約半分を占めるレザーグッズ部門は、主に“ケリー(KELLY)”や“バーキン(BIRKIN)”などのクラシックなモデルがけん引して同15.9%増(為替の影響を除くと同12.4%増)となったが、下期はやや緩やかになると思う。しかし年間の成長目標である10%増は維持できると考えており、その3%程度は値上げによるものになるだろう」と話した。

 消費者からの高い需要に応えるため、エルメスは工房(ワークショップ)にも投資している。現在、フランス国内にはレザーグッズ専門の工房16カ所と、拡張が決定しているテキスタイル専門の工房を含めて42カ所があるほか、スイス、イタリア、イギリス、アメリカ、オーストラリアに合わせて12カ所の工房を構えているが、新たにハンドバッグの工房を3カ所オープンする。しかし、同社では「一人の職人が最初から最後までバッグを仕上げる」ことを掲げているため、一人の職人が1週間に作ることができるのはバッグ2つ程度だという。こうしたことを踏まえると、今月フランスの上院で審議にかけられる売れ残り品の廃棄を禁止する法案は、同社にはあまり影響がなさそうだ。

 デュマ=エルメスCEOは、「『エルメス』のバッグは最高級のレザーを使っており、熟練の職人が16時間かけて作っている。廃棄しなければならないときは胸が張り裂ける思いだ。ゆえに当社では廃棄率ゼロを目指し、可能な限りリサイクルしている」と語った。同社ではカシミアなどの素材は再利用しているほか、“プティ アッシュ(PETIT H)”という余った素材を活用したコレクションを展開。また売れ残った商品は、ブランド価値を毀損しないようにタグなどを取り除いた後で寄付していると説明した。

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