アダストリアグループは4月24日、東京・原宿駅前に、ECモール「アンドエスティ(and ST)」と連動した旗艦店として、「アンドエスティ トーキョー」をオープンする。「当社は小売業からプラットフォーマーへの転換という、創業以来5回目の️“チェンジ”を今目指している。この店舗の開業は、プラットフォーマー化への軸となる」と、木村治アダストリア社長は力を込める。同店は物販のみを目的としないメディアストアを目指し、外部ブランドから出店料収入を得てのポップアップやサンプリングなどを積極的に行う。
場所は「ユニクロ(UNIQLO)」「イケア(IKEA)」などが入る商業施設「ウィズハラジュク」の1階で、2024年8月まで「資生堂ビューティ・スクエア」だった場所。通りに面した約760平方メートルの売り場に、2000SKU以上の商品をそろえる。原宿エリアの特性を踏まえ、訪日客売り上げ比率50%を目指し、初年度は訪日客、国内客合わせて年間100万人の集客が目標。中華圏の訪日客の誘致に向けて、ウィーチャット上での発信も強化している。
季節のイベントなどに合わせてテーマを設定し、売り場を編集していく。外部ブランドのポップアップは、2週間から1カ月での入れ替えを想定。自社ブランドもコーナーを固定化せず、テーマに合わせて入れ替えていく。柔軟に売り場を編集できるよう、店舗内の内装は可変性を意識した。扱うテーマにもよるが、平均して売り場面積の30〜35%で、外部ブランドによるポップアップや外部とアダストリアブランドとのコラボレーションを展開し、常に話題を発信する。
サンリオの次は「名探偵コナン」
オープン時は、「ローリーズファーム(LOWRYS FARM)」「ジーナシス(JEANASIS)」「ハレ(HARE)」のコーナーを設けると共に、雑貨の「ラコレ(LAKOLE)」を核とした訪日客向けスーベニアコーナーを展開。外部ブランドでは、化粧品や雑貨の「ポール&ジョー(PAUL & JOE)」が入り口すぐでポップアップを行っているほか、レジ前では、スタイリングライフ・ホールディングスの「キャス キッドソン(CATH KIDSTON)」が、「ローリーズファーム」のウエアとのミックスコーディネートでポップアップを実施している。
オープン時の集客の目玉としては、アダストリアの複数ブランドとの横断企画で、サンリオキャラクターズとのコラボを実施し、店内の大型サイネージでも打ち出す。フォトスペースや巨大ガチャも設置し、キャラクターと写真が撮れる撮影会イベントも企画した。こうしたIPコラボは訪日客獲得のために重視しており、オープン時は「ジーナシス」と漫画・アニメ「ハイキュー!!」とのコラボコレクションもそろえる。サンリオキャラクターズコラボの次としては、5月24日から「名探偵コナン」とのコラボを実施予定だ。
また、ECモール「アンドエスティ」の強みである、全国約4000人の販売員が参加するスタイリング投稿コンテンツ“スタッフボード”とも連携。人気スタッフがデザインしたトートバッグのコーナーを設け、スタッフの来店接客イベントも実施する。
「原宿エリアはポップアップスペースが不足している。また、通常はポップアップは販売員を自社で手配しなければならないが、『アンドエスティ トーキョー』ではアダストリア側が接客も行う」(小林千晃アンドエスティ取締役CBO)ことを打ち出し、外部ブランドのポップアップ出店を促す。店内でのポップアップや商品サンプリングだけでなく、サイネージや店内放送などもメディアメニューとして売り出す。好立地でのポップアップを目玉に外部ブランドとの関係性を深め、ECモール「アンドエスティ」への外部ブランドの出店の呼び水にする考え。
東南アジアにも出店へ
アダストリアグループは、プラットフォーマーへの転換に伴い、30年2月期に「アンドエスティ」で流通総額1000億円を掲げている(25年2月期実績は403億円)。そのためには、「アンドエスティ」の外部ブランドによる売り上げ比率を、現状の3%から40%にまで引き上げる必要がある。現時点で「アンドエスティ」に出店している外部ブランドの数は33。これを数百にまで増やすイメージだ。「アンドエスティ トーキョー」の開業を起爆剤に、外部ブランドの「アンドエスティ」への出店につなげる。
同時に、地方や郊外では、メディアストアとしての「アンドエスティストア」ではなく、21年以降展開してきた自社ブランド集約型の「アンドエスティストア」の展開を続ける。人口が減少する地方都市では、ブランド別の店舗を「アンドエスティストア」に集約して効率化を進めるという狙いがある。
メディアストア型の「アンドエスティストア」は、原宿でニーズを見極めた上で、「大阪など大都市への出店を考える。当社の戦略成長エリアと位置付ける、東南アジアの都市にも、26年2月期以降出店を目指す」(木村社長)。