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アダストリア、EC事業「アンドエスティ」を子会社に移管 金融サービスも拡充し経済圏創出

アダストリアは12月1日付で、ECモール運営や関連する事業を、100%子会社のアンドエスティに移管する。アンドエスティ社長は木村治アダストリア社長が務める。それに先立ち10月23日に、自社ECモールのサービス名称を、従来の「ドットエスティ(.st)」から「アンドエスティ(and ST)」に変更。既に2022年に、外部企業やブランドの自社モールへの乗り合いを開始しているが、子会社に事業移管することで外部企業の参画を加速させ、「お客さまとも、パートナー企業とも深くつながった“ファッショントータルプラットフォーム”を目指す」(木村社長)。

「アンドエスティ」は「ドットエスティ」として14年に事業開始。24年2月期末時点で「流通総額約360億円、会員数約1800万人に成長している」と田中順一アダストリア執行役員マーケティング本部長兼アンドエスティ取締役。現在、「アンドエスティ」にはビューティ機器やシューズ、インナー、アイウエアなど、アダストリアが手薄な分野から17社22ブランドが乗り入れているが、「乗り入れブランドを増やして商品カテゴリー拡大を進める」。例えば、ウェルカムの「ディーン&デルーカ(DEAN & DELUCA)」が25年春に出店することが決まっているという。

「アンドエスティ」に乗り入れるブランドや企業には、アダストリアの生産背景やノウハウを生かした事業プロデュースも提供する。また、「アンドエスティ」上のスタッフのスタイリング投稿コンテンツ“スタッフボード”の仕組みなど、デジタルソリューションも外販していく。既にインナーウエアの「ピーチ・ジョン(PEACH JOHN)」とは、アダストリアの生産背景や企画ノウハウのもとアウターウエアを企画、「アンドエスティ」や「ピーチ・ジョン」店舗などで販売していく予定という。そのように、アダストリアと参画企業との、また参画企業同士でのシナジー創出を目指し、同社が中計で掲げる“グッドコミュニティ共創カンパニー”というあり方に近づける。

「アンドエスティ」に客も外部企業も呼び込み、経済圏を作っていく上で、金融サービス面も強化する。「ドットエスティ」としてドコモ「dポイント」と5年間ポイント連携を行ってきたが、25年秋から「楽天ポイント」とも連携し、「アンドエスティ」やアダストリア実店舗での購入につき、「アンドエスティポイント」「dポイント」「楽天ポイント」の3つが貯まるようにする。また、デジタルバンクのみんなの銀行とも連携し、銀行口座直結での決済の実現を目指していく。クレジットカード会社など中間業者を挟まない分、客への還元率を高められるという。他にも、みんなの銀行の提供サービスに則り、一部ポイントの現金化なども予定している。

「ECモールへの価格の不信感」払拭

ECモールであると同時に、「アンドエスティ」として実店舗(『アンドエスティストア』に改称)も全国で22店運営しているのが、他モールにはない強み。25年には「アンドエスティストア」の旗艦店もオープンする予定。以上のようなモノ、サービス両面の強化策により、30年に流通総額で1000億円を目指す。乗り入れブランド数の目標値は非公開。

客にとっても、パートナー企業にとってもメリットを感じられるようなサービスを拡大し、「アンドエスティ」として多様なコミュニティーを創出。それをアダストリアやパートナー企業の成長ドライバーにしていくのが狙い。同時に、「アンドエスティ」が目指すあり方として木村社長が言及したのが、ECモールにおける価格への不信感だ。タイムセールやクーポン発行などを頻繁に行うECモールは多く、それがリアルとECを合わせた小売業全体としてセールの瞬発力を失わせ、価格への不信感を生んでいるとは一般的によく言われる。「『アンドエスティ』としてセールやクーポンを全て無くすとは言わないが、国内だけでも1300以上の実店舗を運営する企業として、セール開始時期や価格の下げ幅はできるだけ実店舗と歩調を合わせる。それにより参画する企業との間で信頼関係を築いていく」。物流コスト高騰など各企業共通の課題に対しても、「『アンドエスティ』参画企業の共同配送などにゆくゆくはつなげていければ」と話す。

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