そごう・西武は23日、西武池袋本店の店長に労働組合の寺岡泰博中央執行委員長(54)が5月1日付で就任する人事を発表した。寺岡氏はセブン&アイ・ホールディングスがそごう・西武の売却に動いた際、従業員の雇用への懸念から実行された2023年のストライキを主導し、大きな注目を集めた人物だ。西武池袋本店の売り場縮小に異議を唱えてきた寺岡氏を店舗営業の責任者に据え、年内に予定する改装オープンに向けて社内の団結を強める。
寺岡氏は1993年に西武百貨店(当時)に入社。西武高槻店、西武池袋本店などで主に婦人服、婦人特選などを担当し、販売部ゾーン店長や企画担当、商品部バイヤーなどを歴任した。組合役員としてはそごうと西武人事制度統一やセブン&アイHD傘下入りを経験。2016年中央執行副委員長、18年から中央執行委員長を務めてきた。
寺岡氏が注目を集めたのが23年8月31日の西武池袋本店でのストライキだった。セブン&アイがそごう・西武の売却を急ぐ中、蚊帳の外に置かれた労組は百貨店としては61年ぶりのストを西武池袋本店で決行した。売却後に旗艦店の西武池袋本店の面積を半減させ、ヨドバシカメラを入れる改装計画が持ち上がり、実行されれば従業員の雇用に多大な影響があると判断したからだった。だがセブン&アイは売却を正式に決議し、スト翌日にはそごう・西武は米フォートレス・インベストメント・グループの傘下になった。改装計画も断行された。寺岡氏は新しい経営陣と話し合いを重ねて、雇用の維持や従業員の受け入れ先確保に奔走した。労組で培った粘り強い交渉力と統率力で従業員からの信頼が厚い。
寺岡氏について同社広報は「会社が再生計画を進める中、それを最も理解する一人。現場の叩き上げで店舗へのロイヤルティーが高い。(創業以来の大型改装という)大きなプロジェクトを進め、軌道に載せる大役を任せるにふさわしい」と起用理由を話す。現職の久保田俊樹・執行役員副社長池袋本店長は顧問に退く。
西武池袋本店は新しい経営体制のもと、百貨店区画の面積を約半分の4.8万㎡に縮小し、ラグジュアリーブランド、化粧品、食品の3カテゴリー中心の店舗へと刷新する。約半分の区画には、土地・建物のオーナーになったヨドバシホールディングスの家電量販店ヨドバシカメラの大型店が予定通り入る。グランドオープンは当初「夏」を予定していたが、「年内」にずれ込む見通しだ。