今回もパリ&ミラノ、ニューヨーク、そしてロンドンのコレクションを現地取材した4人でトレンド座談会を開催。「トレンドが見えない」と言われる2025-26年秋冬シーズンで見出した大きな傾向から、K-POPの影響が強いリアルマーケットの動向、新たなスタイルが次々と現れるSNSムーブメントまで、ざっくばらんに話し合った。(この記事は「WWDJAPAN」2025年4月21日号からの抜粋で、無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください)
Editors
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村上要/「WWDJAPAN」編集長
今回もミラノ&パリを担当。20日越えの出張で欠かせないのは、どんなに短い時間でも日々の運動。今回は2日に1回はランニングできて大満足
藪野淳/「WWDJAPAN」欧州通信員
パリの取材とトレンド分析を担当。デザイナー交代が絶えず潮流も見えづらい過渡期だが、その分インディペンデントな才能をより多く取材できたのが今季の収穫
本橋涼介/「WWDJAPAN」ヘッドリポーター
ニューヨークを担当。凍てつくような冬のNYの洗礼を受けながらも、「カルバン・クライン コレクション(CALVIN KLEIN COLLECTION)」の見事なカムバックショーで心に炎を灯された
木村和花/「WWDJAPAN」記者
ロンドン&ミラノ、バイヤー取材を担当。今季は同世代で、「フェラガモ」を手掛けるマクシミリアン・デイヴィス(Maximilian Davis)への評価が高まっていたことがうれしかった
村上要「WWDJAPAN」編集長(以下、村上):デザイナー交代劇の影響なのか、2025-26年秋冬は、トレンドがわかりにくいシーズンでした。
藪野淳「WWDJAPAN」欧州通信員(以下、藪野):そうですね。印象的だったのは、不安で不穏な時代ゆえ、安心感に通じる優しいムードと、現実に立ち向かうべくエンパワーメントしたり憤りをあらわにしたりする力強い雰囲気の双方が際立ったこと。その中で女性らしさをどう表現するか?が問われたシーズンでした。優しいムードは、包み込むようなシルエットやゆったりしたサイズ感、ファーやシアリングのほかブランケットのように触り心地のよい素材、懐かしさを感じさせる色柄使いなどで提案。一方の力強さは、パワーショルダーやミリタリー由来のアイテム、レザー、オールブラックのコーディネート、「プロテクション」という言葉を連想する首から顔の一部までを覆うハイカラーなどが表現していたように思います。
木村和花「WWDJAPAN」記者(以下、木村):バイヤー取材を終えて、「癒やし」や「コンフォート」もムード感のキーだと思いました。トレンドの回転の速さやデザイナーの交代劇に市場全体が疲弊している。だからこそ、「癒やし」につながる優しいファブリックや人の手の温もりを感じるクラフト的な要素へのニーズが高まりそうです。
村上:ミラノの「フェラガモ(FERRAGAMO)」やパリの「サカイ(SACAI)」のように、双方を融合する動きもありましたよね。形あるシルエットなのに、首元をストールでふんわり覆ったかのようなコートが素敵でした。シルエットはオーバーサイズ一辺倒から形あるものにシフトしている印象ですが、最後に一枚、首周りに大きな布をあしらうと途端に柔らかくエレガントに見える。相反する要素の融合が定石になっている今っぽさも感じます。米「WWD」が主張するほど「マキシマム」ではなかったけれど、ロマンチックなムードは確実に広がっていますね。
ビクトリアンなつけ襟からストールまで
ランウエイは首元コンシャス
藪野:「ディオール(DIOR)」のビクトリアン調の「つけ襟」がついたシャツは、リアリティーのある新提案でした。フリルの「つけ襟」は取り外しでき、単体で細いストールのようにも活用できる。汎用性が高そうです。
村上:ストールやフリル、ハイカラーなど、ランウエイは“首周りコンシャス”だった印象ですが、リアルマーケットではどうですか?私は、タートルネックさえ息苦しい気がしてあんまり好きじゃないんだけれど(苦笑)。
本橋涼介「WWDJAPAN」ヘッドリポーター(以下、本橋):温暖化が進んでいるので、ストールなどを見かける機会は減っています。ここ数年は各社の秋冬の展示会でもだんだん見なくなっているような……。
藪野:自由なスタイリングには活躍しそうですけどね。トレンドの発端は数年前から捻りの効いたスタリングを見せている「ザ・ロウ(THE ROW)」(今季はカシミヤのタイツをストールのように使用)だと思いますが、最近はメンズ、しかもクラシックなブランドさえスーツの上からニットを巻きつけています。ウィメンズは、もっとダイナミックに肩を包み込んだり、2枚重ねて腰に巻いたり。「どう使っているの?」というスタイリングや、「どういう構造になっているの?」と思うほど再解釈したスタンダードアイテムで、着こなしに新鮮さを加えるのは楽しそうです。あと、昨年一時帰国した時、「イーファー(IEEFAR)」のシャギーなカシミヤの大判マフラーを買ったんです。首に巻きつけるとボリュームたっぷりなんですが、サイズは3種類あって売れているそう。50色という豊富な色展開も魅力的で、いつもの着こなしの上に加えるだけで季節感や華やかさを表現できる。そんなアクセサリーは割と取り入れやすいんじゃないかと。
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