
年明け早々に報じられたサックス・グローバル(SAKS GLOBAL)の破綻、ミネソタ州での不法移民摘発を発端とする銃撃事件。米国を不穏な空気が包む中、2026-27年秋冬のニューヨーク・ファッション・ウイークが行われた。(この記事は「WWDJAPAN」2026年3月9日号からの抜粋です)
ニューヨークを愛するデザイナーたちは困難へ立ち向かう意思を原動力へと変え、ファッションを通した自己表明を試みた。今季は、長年リアルクローズを提案してきたアメリカン・ファッションだからこそ可能なラグジュアリーの再定義と、ブランド顧客に軸足を置いたリアリズムへのシフトが鮮明だった。
これまで欧州ブランドに比べ商業的で、どこか味気ないというレッテルを貼られてきたアメリカン・ファッション。老舗百貨店親会社の破綻や世界的なインフレによる価格高騰といった現実を前に、改めてその「地に足が付いた」クリエイションの価値が問い直されている。
今季のランウエイに通底していたのは、装いによって着る人をエンパワーし、自由と意志を宿す姿勢。レザーやテーラード、構築的フォルムによる明確なパワードレッシングはもちろん、声高に叫ばずとも内側に確かな炎を宿す、静かな強さが感じられた。主体的に選ぶこと、その選択に責任を持つこと。装いを通して、自立した女性像と反骨心を秘めたスタンスを提示した。“生き方”をまとい、混沌とした時代において自分を奮い立たせる。そんな服の持つ力を、改めて示したシーズンだった。
1. 静かに背中を押すリアリズム
EMPOWERING REALISM
ファッションはときに現実を離れ、私たちに夢を見せてくれるもの。しかし米国を不安が取り巻く今、NYのデザイナーたちは顧客が求める「リアルクローズ」を思い描き、そこに華やかなエッセンスを加えることで、静かに背中を押した。ここ数シーズン、デフォルメされた服で独自の世界観を打ち出してきた「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」は90年代的なリアリズムへと回帰。派手なパフォーマンスが売りの「エリア(AREA)」も今季は装飾を抑え、より現実的な提案へと舵を切った。「アルチュザラ(ALTUZARRA)」もファーリーで夢心地なテキスタイルを用いながらも、モノトーンや暗いマスタード、クラシックなチェックなど落ち着いた色柄で構成した。
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