ファッション
連載 販売員特集2022

「ウィゴー」「ジェラート ピケ」「パブリック トウキョウ」店長が語る 店からの発信とスタッフ育成

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 販売員がその魅力を存分に発揮するためには、周囲からのサポートも重要だ。

 そこで今回、ウィゴー(WEGO)から「ウィゴー」渋谷109店、マッシュスタイルラボから「ジェラート ピケ(GELATO PIQUE)」錦糸町テルミナ店、TOKYO BASEから「パブリック トウキョウ(PUBLIC TOKYO)」丸の内店の店長を招いて座談会を開催。店長としてどんな風に店頭やスタッフを盛り上げているのか。その実際を聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2022年11月7日号からの抜粋です)

WWD:コロナ禍による店舗休業などもあり、この2年で一気にSNSやLINEなどを通じたコミュニケーションが重要になりました。それに伴い、販売員の役割も変わったのではないでしょうか。今、どんな発信をしていますか?

青木優津希「ウィゴー」渋谷109店店長(以下、青木):私はインスタグラムを最初は個人でやっていましたが、今はコーディネートを見てフォローしてくれる方が多いようです。あとはスタッフスタート(※1)にスナップを載せています。また、お店で東京エリアの「ウィゴー」複数店舗共同でインスタアカウントを持ってやっています。TikTokもやっていますが、今一番力を入れているのは、東京エリアのインスタグラムです。

今田千尋「ジェラート ピケ」錦糸町テルミナ店店長(以下、今田):「ジェラート ピケ」は個人でのSNSはやっておらず、店舗スタッフのスナップ写真はオフィシャルサイトと公式インスタグラムに載せていて、私も時々そこに出しています。でも基本的には、お客さまごとに顧客カードを作成し、猫が好きな方だったら、猫の新作が入るたびに、お客さまに電話をして、「きっとお好きだと思います」という連絡をしたり、事前に入荷が分かっていれば、DMやはがきを出します。

菅澤由紀「パブリック トウキョウ」丸の内店ショップマネージャー(以下、菅澤):TOKYO BASEは全社員TikToker計画が始まっていて、全員アカウントを持っています。

一同:すごい。

菅澤:でもなかなかバズらないです(苦笑)。そのほかにスタッフスタートもやっています。インスタグラムはやりたい人が積極的に上げていて、TikTokは全社員。スタッフスタートに関しては、ブランドで限られた人数が選ばれて上げていて、私は全部やっています。

WWD:今一番効果が高いと感じるのはどれですか?

菅澤:インスタグラムは、やはり見てくださる方が多くて、インパクトのある商品を上げると、保存数がすごく伸びます。それを持って、「これ、ありますか」と来店する方も増えてきました。スタッフスタートは、同じ身長の人が何を着用しているかを見る方がすごく多いです。

今田:お客さまと同じ身長のスタッフのスナップを見せることが、購入の後押しになることもありますね。アナログですが、はがきや電話も響きますよ。「はがき届いたよ」と持って来てくださったり、職場が近いという方も多いので、お電話したその日に「見にきたよ」と来店してくださったり。はがきに書いた内容がお客さまとの会話のきっかけにもなったりします。

菅澤:手書きはすごく効きますよね。私も配送の際に手書きでメッセージを入れたりします。会社としてはLINE WORKS(※2)を利用しています。「今日買っていただいた商品に合うものを次に紹介させてください」という感じでLINEを交換し、「もう少し寒くなったらコートですね」といったことを画像付きで提案すると、すごく響きます。お客さまも何を買ったらいいか分からない、時間もそれほどないという方が多いので、“その人のためのスタイリスト”みたいな提案ができます。

青木:「ウィゴー」で多いのは、インスタグラムをフォローしてもらった上での、ストーリーやスナップなどの投稿へのコメントやDMでのやりとりです。スタッフスタートは全社的に力を入れていて、「これを見て買いに来ました」と来店される方が私だけでも日に少なくとも1、2回あるので、かなり効果を感じています。渋谷109は特にかもしれませんが、コロナ禍でSNSのコーディネートを見て、来店する形に変わったなと思っています。

WWD:デジタル発信のための作業時間をどのように捻出していますか?

菅澤:スタイリングから撮影、写真や動画の選択、編集、アップまで全部みんな自分でやってるので、結構時間がかかりますし、店頭でスマホをいじるのは、やはり見栄え的にも良くないです。ですから、「顧客連絡時間」とシフトに記載して裏へ入ったり、お客さまがいない時間をうまく活用してます。

青木:同じですね。でも、そんなに長い時間はあげられないです。何分までと時間を決めて、その時間内にやってもらうようにしています。顔の加工など、いろいろやりたい場合は時間外にやってくださいという感じです。

菅澤:シフトを回すのは結構大変ですが、東京駅は朝の時間がすごくきれいなので、前向きな人たちは、自主的に早く集まってスナップを撮ったりしています。

WWD:店頭での接客が得意でもデジタル発信は苦手という人もいませんか?

青木:そうですね。でも、みんな自分のスタイルに合ったコーディネートを探して、毎回投稿しています。投稿をきっかけに商品が売れるとすごく喜びますし、モチベーションも上がります。店舗としてやっていて良かったと感じます。

菅澤:確かに、撮られ慣れてないというか、やりたくないな、面倒くさいな、みたいな人もいますが、毎週何曜日のこの時間は撮りにいきましょうと決めたりしています。SNSにアップするスタイリングを考えるのは、お客さまに対しての提案にも連動するので、プラスになっていると思います。

店長が背中を見せるし、背中を押す

WWD:やはり店長が率先してやっていますか?

菅澤:そうですね。やはり自分がやらないとスタッフにもやってもらえないですね。毎日インスタグラムを更新していた時期もありますが、結構しんどかったです(苦笑)。

青木:私もスタッフに言うときに、「あなたはやっていないじゃん」と思われるのが一番良くないと考えていて。正直、上司がやっていなかったら、私もそう思ってしまうので、そう思われないように気をつけています。

今田:私も接客から購入決定まではもちろん、どんな会話をしながらレジへ向かうと顧客カードを作りやすいか、書いてもらう内容にプラスアルファでするといい質問など、近くで見て学びとってもらうようにしたりしています。

菅澤:得意不得意はもちろんありますが、言葉よりも、見せて真似てもらう方がより伝わりますし、背中を見せるのが一番やる気になってくれるように思いますね。

WWD:スタッフとのコミュニケーションについてはどのようにしていますか?

青木:今、スタッフは9人で全員女性で、少なくとも月に1回、それぞれと個別に話す時間を作っています。ずっとアルバイトでいいと考えている場合もあったりするので、どうなりたいかを必ず私が把握して、それぞれに合った教育をすることを心掛けています。出勤した日の朝礼や終礼で「今日どうだった?」と聞くと、それぞれ必ず何か言ってきてくれるので、そこでも話したり。「ウィゴー」が初めてのアルバイトという人もいるので、分かる前提ではなく、言葉使いや上下関係も含めて、分からないところから全部教えていきます。ダメなことはダメと叱るので、私が怒ったら副店長がフォローする、副店長が怒ったら私がフォローすると2人で決めています。

今田:うちも女性5人で、毎月1対1のミーティングをしています。そのときに目標を聞くのはもちろんですが、例えば、退勤の際に着替えているときや掃除しているときなどにも何気なく目標を聞くようにしていて。そういう時の方が本音が出やすいのかなと思っています。目標も「店長になりたい」から「ワンピースをきれいに着たい」までいろいろありますが、私も目標達成に付き合うようにして、「言ってよかったんだ」と思ってもらえるように心掛けています。そうした大小さまざまな目標を他のスタッフにも伝えると「えー、それ、私も頑張ります!」という感じになることも。みんなで頑張るという流れにしたりします。

菅澤:今、スタッフは男性2人、女性3人ですが、月1で面談をしています。コミュニケーションの場を大切にというのは皆さんと同じで、パーソナルな会話の中で、「どういう感じ?」かは日常的に気にするようにしています。私は例えば、めっちゃくちゃ売り上げが取れる人は売り上げのスター、清掃が本当に丁寧な人は清掃大臣みたいな感じで、1人1人トップですよと伝えています。みんなリーダーにすることで責任を持たせ、週1の店舗ミーティングで「この人はここがすごかったね」と共有しつつ、苦手なところをどう克服させるかも考えています。小さい丸を都度与えながら、地図を作ってあげて、それを共有することをすごく心掛けてはいます。

WWD:いろいろなタイプのスタッフがいるからこそ、店も多様なお客さまに対応できそうですね。

今田:自分と同じようなタイプには、教えるのも難しくないですが、そうではないスタッフももちろんいますよね。自分がこうしてほしいと思っても自分は自分、人は人だから同じじゃないよと、自分にまず言い聞かせて。そういう人からは自分が持ってないものを盗みつつ、その人に合った接客の仕方を一緒に見つけていくようにしています。私がいろんな自分を出していれば、そのスタッフに当てはまる部分もあったりするので。1人1人に合わせた言い回しや接客法を探すようにしています。

青木:私は、良くないことがあったらちゃんと伝えて、それを直すために行動してないことに気がついたらきちんと指摘するようにしています。誰よりも見ているよっていう。いいことをしたらすごく褒めますが、良くないことをしたら、私、めっちゃ怖いと思います。でも、考えていることを正直に伝えるのは本当に大切だなと、最近すごく思っていて。最初は多分、「うざい」とか、「なんでそんなふうに言うんだろう」と思っているんです。だから「あなたを見て、あなたのために言っているんだよ」と、なるべく伝えるようにしています。そして自分の目で見たこと以外は、言わないようにしています。そうするとやっぱり1、2カ月ぐらいで、プラスにいく人がすごく多くて。時には傷つけるようなことを言ってしまっているかもしれませんが、今、スタッフはみんな仲がいいですし、「社員になりたい」と言っています。

菅澤:スタッフとの時間が大事だと、コロナ禍以降の方が強く感じているかもしれません。一緒にいる時間が減りましたし、成功体験も少ないと思います。接客する機会が少ないから、予算に対してのギャップが大きくなってしまうことも。でも、せっかく同じ店にいるからには、「楽しんでほしい」というのが一番あって。「私たちが楽しくなかったら、多分お客さまも来ないよ」ということを、みんなと一緒に話し合ってやっています。私はスタッフに「これってこうした方がいいんじゃないですかと思ったら、絶対に言ってほしい」と伝えていて、言ってもらえるような関係性作りを心掛けています。店長歴が長くなればなるほど、ちゃんと受け止めて吸収できるような器にはなってきたかなと思います。

※1 バニッシュ・スタンダードによる企業と販売員と顧客のエンゲージメント向上アプリケーションで、商品の下げ札内の、バーコードをスキャンするだけで商品をひもづけたスナップ投稿が簡単にできるのが大きな特徴。アプリ経由でのデジタル接客や業務の成果を計測し、販売員ごとの個人の成績表も生成できる

※2 ワークスモバイルジャパンが提供する企業向けのクラウド型ビジネスチャットツール。スマートフォンやパソコンに対応し、LINEユーザーとのメッセージのやりとりだけでなく、個人や組織の予定管理、ファイル共有、アドレス帳、アンケートなども可能


EDITOR’S VIEW
 「ウィゴー」の青木さんは若い女性スタッフを統率しつつ、裏表なく接することで、信頼関係を築いている。「ジェラート ピケ」の今田さんは明るさと細かな気配りをお客さまだけでなく、スタッフに対しても発揮。「パブリック トウキョウ」の菅澤さんは、スタッフそれぞれの長所を皆で認め合い、フラットな関係性を心掛けている。それぞれやり方は異なるが、スタッフが力を発揮できる雰囲気の良い店が作れる店長だと大いに納得した。顧客とのコミュニケーション方法が三“社”三様なのも、非常に興味深い。

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