ファッション

高校から服飾を学んだ販売員 目指すは「お客さまの気持ちがわかるデザイナー」 チャオパニック ティピー船山佳純

 デザイナーに憧れてファッション業界を目指す人は多い。筆者も学生時代はデザイナーを目指していた。実際にこの業界に足を踏み入れてみると、デザイナーというのは実に一握りの人ができる仕事であり、そのデザイナーたちも才能に加え、お客さまに喜んでもらえる商品作りのためにさまざまな知識を駆使している。学校では技術的な面は習得できるが、市場のことは学校で学ぶことができない。一番学べるのは店頭ではなかろうか。その面で最高のキャリアと言えるのが販売員。現在、販売員からデザイナーを目指して奮闘する「チャオパニック ティピー(CIAOPANIC TYPY)」イオンモール越谷レイクタウン店の船山佳純さんに話を聞いた。

―私も工業高校で専門課程のある学校に行きましたが、どうして服飾科のある高校へ進学しようと思ったんでしょう?

船山佳純さん(以下、船山):小学生の時から絵を描くのが好きで、いつも描いていたんです。それと同じくらい洋服も好きで、毎日好きな服の絵を想像して描いていられる仕事って何だろう?と調べたら『デザイナー』という仕事があることを知って、その道に進みたいと親に相談し、高校からファッションを学べる学校に行きました。

―90年代生まれの方はナルミヤブランドの影響が大きいですよね(笑)。

船山:当時、私の周りでは『メゾピアノ』が流行っていました(笑)。洋服が好きな子はみんな着ていましたから、その影響は大きいと思います。

―高校のファッション課程ではどんな勉強を?

船山:縫製の授業を中心に、デザイン画や服装史の授業がありました。ファッションに関する授業があるので、一般的な普通科コースよりも普通科目が少なかったと思います。縫製の授業で縫い終わらず、放課後に残って進めていたこともよくありました。3年生のときに集大成のファッションショーを行うので、それに向けてたくさんの服を作りました。

―普通科目の授業が少ないのは工業高校も同じですね。さらに服飾の大学にも行かれたんですよね。

船山:そうです。もっと専門性の高い学校で勉強したくなり、特にデザイン画を本格的に学びたくて大学に進学しました。個人的にはモノを作る、縫うことも好きなんです。でも、どうも手先が不器用なことに自分で薄々気が付いてしまいまして…(苦笑)。高校時代に先生からはデザイン画を褒めていただくことが多かったので、そっちを伸ばしていこうと。本格的にデザインが学べるところへ行きました。

―今でも最終ゴールとしてデザイナーや企画職を目指しているんですか?

船山:そうです。

―デザイナーの魅力とは?

船山:デザイナーである自分が考えた洋服を、お客様が「可愛い」といってお買い上げいただけるところです。販売員のように店頭で直接、お客様が喜ぶ姿を見ることはできなませんが、喜んでもらえるものを作れることに憧れます。もともと絵を描くことが好きですし、自分の考えたことをデザインに描き出し、服として表現できるところが魅力です。服作りを学んでいると自分のデザイン画をパターンに起こして作ってみても、全然上手くいかなくて想像していたものと違うものができ上がるんです。デザイナーは出来上がりを想像して、デザイン画を描いているという点も凄いなと思います。

―確かに!自分の学生時代を思い出しました。

船山:でも、高校の服飾科と大学は全く違う世界で、大学には全国からファッションを学びたくて集まってきた、いわば精鋭というか、秀でた生徒が集まってきているので、作品を出すとその差が歴然と見えてしまいます。単に「好き」という気持ちだけではどうにもならないというのを目の当たりした学生生活でした。

―熱量が半端ないんですね。

船山:本当にすごくて、刺激にもなりましたし、頑張ろうとも思いました。ですが、大学は家庭の事情で3年次に中退することになり、販売のアルバイトを始めました。

―そうなんですね…。中退だとデザイナー職での入社が難しかったですか?

船山:はじめは探してみました。デザイナーアシスタントなどでも探してみましたが、面接時にアパレル未経験だったため難しかったんです。それまでアルバイトも飲食業界ばかりで、アパレル業界で働いたことがなかったので、まずは販売員から経験を積もうと考えたのです。

―未経験でデザイナーや企画をするよりも、販売などで売り場を知っている人の方が採用にも有利だと思います。結局は作ったものを販売して、気持ち良く着てもらうことがファッション業界の基本だと思うので、販売経験と通して着る人たちの気持ちを知っていることは強みになると思います。

船山:そう思います。お客様の意見やニーズ、気持ちがダイレクトに聞ける場所なので、販売の仕事を始めて良かったです。

―実際に販売職をしてみていかがでしたか?

船山:元々、人と話すこと好きなので、販売員の仕事も合っていると思っていました。お客様との会話はとても楽しいですし、悩んでいても会話をして、解消して、お買い上げしていかれるのがうれしいです。いろいろと提案して、最終的に「コレにします!」と決めた服を後日着て来店してくれるのは幸せです。幸せというか感謝ですね。

―学生時代に学んだこと、例えば色彩やデザインなどは接客に生かされていますか?

船山:生かされていると思います。トレンドに基づいた提案もしますが、お客様の好みを聞きつつ、お客様にとってどう良いのか、バランスや色がどうして似合うのかを伝えるように心がけています。例えば、肌の色や髪の色と持っている服の色を聞き出して、合わせやすいものとかを提案しています。服って買って終わりではないので、他の手持ちの服と着回しがしやすい色を提案したり、今後ほかのアイテムを買っても活躍できるスタイリングの提案をしたり、コーディネートで楽しんでいただけるように心がけています。

―理由もなく「お似合いです」とか「カワイイ!」といわれても、お客様からしたら「本当かな?」と思いますもんね。

船山:なぜ似合うのかを伝えるとお客様から「聞いてよかった」と言われて、私も良かったなってなります。他にも「こういう服は持っているけど、何をどう合わせればいいか分からなくて」という悩みもよく聞かれます。コーディネートを考えるのは好きなので、一緒に悩み過ぎてしまい接客に時間がかかるときもあります(笑)。

―個人的にはそうやって一緒に悩んでくれると信頼感が増しますね(笑)。楽しいですし。

船山:私も楽しいです(笑)。私も買い物するときは悩む方なので、気持ちは分かります。

―では、今の目標は?

船山:最終的な目標はデザイナーですが、まずはその前にお店の顧客、リピーターを増やしていくこと。それと店長になりたいです。

―一歩ずつステップアップしていくということですね。

船山:そうですね。まずは店長。それから本部で働きたいです。その為には店長になることもですが、インスタグラムのフォロワーも伸ばしていきたいですし、少しずつステップアップしていこうと思っています。

―ちなみに今でもデザイン画は描いていますか?

船山:以前よりは頻度が少ないですが書いています。特に素材感を書くのが好きで、よく生地のシワを丁寧に描いたりしています。あとは好きなイラストレーターさんの絵を見て勉強しています。

―デザイナー職を目指していることは上司に伝えていますか?

船山:面談などで機会があるときに言っています。実は「チャオパニック ティピー」のアルバイト面接で私を採用してくれた当時の北千住店店長が、現在は企画に在籍しているんです。

―なるほど!

船山:私の理想とする方で、今もいろいろなアドバイスをいただいています。道しるべになる人がいるということは、自分を磨いていくことで評価もしてもらえるということだと思うので、まずは目先の目標を一つずつクリアしていき、最終的にはデザイナー職で働きたいと思います。

苫米地香織:服が作れて、グラフィックデザインができて、写真が撮れるファッションビジネスライター。高校でインテリア、専門学校で服飾を学び、販売員として働き始める。その後、アパレル企画会社へ転職し、商品企画、デザイン、マーケティング、業界誌への執筆などに携わる。自他ともに認める“日本で一番アパレル販売員を取材しているライター”