フォーカス

「エクセル」史上最年少の若さで部長に就任 どんなキャリアでも常に“楽しんでいたい”

 常盤薬品工業の人気メイクブランド「エクセル」は30年以上の歴史を持ち、売り上げは右肩上がりが続いている。その好調の裏には、昨年11月にマーケティング統括部の部長に30歳という史上最年少の若さで就任した田島奏氏の功績も大きい。兼務する商品プランナー業ではブランドの全製品の企画開発を手掛け、トレンドと使いやすさを兼ね備えたアイテムでヒットを連発している。

WWD:常盤薬品工業に入社した経緯や理由は。

田島奏・常盤薬品工業マーケティング統括部部長(以下、田島):中学生の頃から、“化粧品は自分の目で選んで自由に試したい”という思いがあったため、セルフ化粧品を好んで使用していました。当時から「なめらか本舗」のスキンケアや「エクセル」のアイシャドウなどは愛用していましたね。学生時代にドラッグストアでアルバイトもしていましたが、常盤薬品工業の製品はいつもインパクトが強く、毎回新製品の入荷を楽しみにしていました。消費者と販売者の目線、そのどちらにも魅力を感じたことが入社の決め手となりました。

WWD:入社後の、これまでの業務について教えてください。

田島:入社1年目は営業、その後は商品企画部に異動となり、現在はマーケティング統括部部長兼「エクセル」ブランドをメイン担当とする、化粧品全般の商品企画(プランナー)です。もともと、もの作りをしたい気持ちで入社しましたが、作った商品がどんなふうに商談され、どんなインパクトがあれば小売側に魅力的だと思われるかが約1年の営業経験を通じて理解出来たと思います。どれだけ頑張って作った商品でも店頭に並ばなければお客さまの手にも届かないので、このやりとりを肌で感じ経験できたことは大きかったですね。とはいえ、営業的な視点に偏りすぎると「売りやすいもの、確実に売れるもの」という考えに陥りやすくなる懸念もあるので、やはり基本はメーカーの商品企画を担う者として、新たな価値を世に送り出すことを念頭に置くよう心がけています。

WWD:史上最年少でマーケティング統括部部長に就任。どういった点が評価されたと思いますか。

田島:評価いただいた点は、ここ数年間担当してきた「エクセル」の成長に寄与したことだと思います。昨年までの約6年間は、ブランド全体のマネジメントを行いながら全商品の企画を一人でやっていました。私が「エクセル」に携わるようになった2013年当時は、売り上げの半分近くがアイブロウでした。同アイテムを軸にしながら、ここ数年はアイシャドウやそのほかのアイテムの強化と充実をし、最大のターニングポイントは15年に発売したアイシャドウ「スキニーリッチシャドウ」です。この商品をきっかけに、爆発的にブランドの知名度が上がり、売り上げも大幅に伸長しました。ただ、これらのヒット商品を世に送り出せたのも先輩方が長年作り上げてきた礎があって成し遂げられたこと。正直、部長拝命は全く想像もしていなかったので当初は戸惑いしかなかったです。キャリアについても、自分の感覚が衰えない限りずっと商品企画を続けたいというタイプだったので……。しかし、商品企画との兼任を認めてもらったことや、これまで積み重ねてきた経験を生かし部全体に波及させていくことも私の使命であると感じたことから、とにかくチャレンジという気持ちで一歩踏み出してみることにしました。

WWD:部⻑としての苦労ややりがいは。

田島:まだまだ手探りの状態ではありますが、マーケティング統括部は商品企画やデザインなど部内で5つのグループに分かれているので、それらの横のつながりをどう作っていくかが課題でもありやりがいだと感じています。当社のメンバーは各々の思いやこだわりが強い分、意見がまとまらないこともしばしば。ただ、向かうべき方向はブランドチーム皆同じはずなので、そこをどう束ねていくか、道筋を示していくかが私に課せられた責務だと思っています。

WWD:では、プランナー業務での苦労ややりがいについては。

田島:薬機法や商標の関係で、言いたいことや付けたい商品名、色名がほぼ使用できないのが最も苦労している点です。そのしがらみの中で語彙やアイデアを絞り出すのがプランナーの腕の見せどころであり、醍醐味ともいえるかもしれません。最もやりがいを感じるのは、SNSで「色が可愛い!」「お気に入りのコスメ」などの生の声に触れた瞬間ですね。自分が生み出したもので誰かが少しでも嬉しい気持ちになれたり、可愛くなって自信を持てたり、もしかすると人生まで変えることが出来るかもしれないこの仕事を、心から誇りに思います。大切にしているのは、常に自分の企画を客観視し、疑いを持つこと。「本当にこれがベストな配色なのか」「使い方の説明は本当にこれで十分か」など、あらゆる角度から客観視することを重視して、企画の進行途中で大きく色味を変えることもしばしばです。

WWD:これまで携わった製品で思い出深いものは?

田島:どのアイテムも壁にぶち当たっていますが、「スキニーリッチシャドウ」の開発は、ブラウンとベージュ系だけでアイシャドウを作ると決めたものの、4色入り×4SKUで一度に16色開発せねばならず、微妙な色の差やニュアンスをつけることなど、当時は一人だったので本当に苦労しましたね。デザインについても、これまでの「エクセル」のパレットアイシャドウに比べて薄くしたり、社内の反対を受けながらも容器色を既存品と異なるブラウンカラーにしたりするなどデザイナーと二人三脚で何度も改良しました。さまざまな苦難を乗り越え最後までこだわり抜いたことが、結果としてこの商品がこれほど多くの人に愛されることにつながったと思うので、本当に頑張ってよかったと感じています。

WWD:今後、「エクセル」をどのように成長させていきたいですか。

田島:「エクセル」はこれまで、「こんなコスメがあったら毎日のメイクが楽しくなる」というリアルな発想で商品を生み出してきました。その結果、多くの人がブランドのファンとなって、新商品を心待ちにしてくれています。今後もわれわれのスタンスは基本変えるつもりはありません。これからもお客さまの毎日に心地よくフィットしながらも、どこかきらりと光る存在でありたいと願っています。10月20日には、4種の質感の異なる単色アイシャドウ「エクセルアイプランナーS/R/F/D」と、粉っぽさのない新感覚のマットリップ「リップベルベティスト」が登場します。このアイテムも、色、質感、きらめきなどに徹底的にこだわり抜きました。普段使いにもアクセント使いにも必須な一品となると思います。

WWD:仕事によって自身がどのように成長したいですか。

田島:何事においても、全体像から物事の本質を捉えられるようになりたいですね。今の立ち位置になってからは、その必要性をより肌で感じています。この見方は仕事だけでなく人生においても重要なことだと思い、今後も仕事を通じて養っていきたい力です。また、この先の具体的なキャリアは未知ですが、トキメキやワクワクを生み出すメーカーで働く以上、どんな状況でも常に“楽しんでいたい”と思っています。