ファッション

世界で高まるMDカレンダー見直しの声 UA、ロンハーマンなどの有力セレクト店はどう考えているのか

有料会員限定記事

 新型コロナウイルスのパンデミックを機に、MDカレンダーを再考する議論が欧米を中心に活発化している。特にドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)らがこの件について提言した「ファッション業界への公開書簡(以下、公開書簡)」に、有力ブランドのデザイナーやCEO、有力小売店のトップや要職を担う人々が次々と賛同し大きなうねりとなっている。日本国内に目を向けると、近年、暖冬や増税による消費の冷え込みもあり、以前からビジネスモデルの再考が求められていたが、日本の有力店はこの「公開書簡」を起点とした動きをどう考えるのか。ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)の竹田光広・社長兼執行役員、エストネーション(ESTNATION)の大田直輝サザビーリーグ エストネーションカンパニー カンパニープレジデント兼商品部部長兼VMD課課長、ロンハーマン(RON HERMAN)の根岸由香里・事業部長兼ウィメンズディレクター、リステア(RESTIR)の柴田麻衣子クリエイティブ・ディレクター、バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)の中箸充男MD部アシスタントディレクター、アデライデ(ADELAIDE)の長谷川左希子ディレクターに聞いた。(2020年7月13日号の「WWDジャパン」の「セール再考、変わるのは今だ」特集で掲載した記事から抜粋しています)

Q. 秋冬シーズンの販売を8~1月に、春夏シーズンを2~7月に戻し、また、正規価格での販売期間を長くするためディスカウントはシーズン末(秋冬は1月、春夏は7月)にしようという「公開書簡」の提言に欧米を中心に多くの企業が賛同しているが、この「公開書簡」に賛同するか、しないか?

ユナイテッドアローズ
竹田光広/社長執行役員

A.賛同する
 当社ではまず「価格と価値のバランスを適正化することでお客さまの安心感につなげたい」と考えている。これまでの業界都合によるシーズン進行や値引き販売などは、商品価値そのものを下げることにもつながっていた。商品価格の適正化、過剰生産の防止、商品廃棄の極小化などに取り組むことで、「お客さまからの価格と価値に対する信頼」≒「プロパー販売期間の健全化」につながると捉えている。そのほか、商品の生産、廃棄の工程に関わる環境負荷の低減など業界全体の課題については、当社としても積極的に取り組むべき問題であると認識している。

エストネーション
大田直輝/サザビーリーグ エストネーションカンパニー カンパニープレジデント兼商品部部長兼VMD課課長

A.賛同する
 SDGsに取り組む上でも重要な考え方だと捉えているが、それ以上に天候不順や暖冬など温暖化の影響が恒常的に起こっており、今後もこの影響は常態化すると考えると、経営的にも戦略的にも適時・適品・適量が今まで以上に求められる。お客さまに対しては、そのシーズンを考えると不都合にも不満にも捉えられることが生じてしまう可能性があるものの、これからは少し足りないかな?くらいの目安が重要な判断視点になると思っている。その視点からMDが適正化され、プロパー期間の担保とディスカウントの最小化につながるものと捉え、結果的に持続可能なMDになって、お客さまにとっての価値を高めることにつながると考えている。

ロンハーマン
根岸由香里/事業部長兼ウィメンズディレクター

A.賛同する*個人としても企業としても
 すでにこの2020年春夏シーズンから、夏のセールを今までよりもかなり後ろ倒しにする。例年7月初めからだったが、半月以上後ろにずらす。近年、セール時期がどんどん早くなりその現状をよいと思っていなかったため、この機会は非常に重要で、社会にとっても、会社にとってもこの変化はとてもよいことだと感じている。しばらくは企業によって考えが二極化する可能性があるが、当社はこの機会から今後も引き続きMDスケジュールを見直していく予定。サステナビリティの観点から考えても、この考え方は非常に有効と感じている。

リステア
柴田麻衣子/クリエイティブ・
ディレクター

A.賛同する
 現状は、主なデリバリーは6~11月と12~4月で、セールは11月と5月にスタートせざるを得ないというサイクル。理由は同じブランドを扱っている場合、主にアメリカをターゲットにしたECに合わせる必要があるから。季節に合った売り場作り、秋冬シーズンの販売を8~1月、春夏シーズンを2~7月に少しだけずらすというのもよいけれど、ただカレンダーをずらすだけでは堂々巡りになる懸念もある。問題の一つはセールのタイミングとプレで発表する商品の内容。温暖化が進み、消費者もファッションに対して飢餓状態というわけではないから、これまでよりいっそう季節に合った商材を戦略的に組み込む必要がある。また、セールをしなくても消費者に響く商品も考えていくべきだ。プレで展開されるものの多くは、その前に発表されたメインの焼き直しやリピートであることも多く、前のシーズンのものはセール対象で次のプレがプロパー商材なんていうおかしな事態も起こりがち。もう一つは、ショーやプレゼンテーションのタイミングも大切。発表されてから、SNSやインターネット上に画像が拡散し、セレブやインフルエンサーが着用し、売り場に届くころには鮮度も消費者の物欲も薄れる。プロパー時期を長く保つためには、消費者にフレッシュな感動を届けてブランドの世界観に賛同してもらえるようなプロモーションも欠かせなくなってくるだろう。

バーニーズ ニューヨーク
中箸充男/MD部
アシスタントディレクター

A.賛同する
 MDスケジュールを見直し、季節区分に合わせた売り場作りをするため立ち上がりの時期を遅らせることは、お客さまのニーズ、用途に合致していて賛同する。ただし、セール時期に関しては、賛同、賛同しないのどちらでもない。商品の特性によってはシーズン末前のセールでもいいし、全体の状況が異なれば前年より早まることもあるかもしれない。状況に応じて慎重に判断すべきだ。翌シーズンに持ち越さず、しっかりシーズン内に販売できる策を講じることが重要だと思う。

インターナショナルギャラリー
ビームス
片桐恵利佳/ディレクター

A.賛同する
 オンライン、実店舗を含めディスカウントキャンペーンが飽和状態になり、購買のサイクルも崩れた。各ブランドは生産が加速していく一方、お客さまの多くは以前のようにたくさん所有したいという思考から欲しいときに必要なものを購入するという思考に変化していて、購買意欲に落ち着きが見られていると感じている。新しいことを立ち上げ、定着するまでには時間がかかるし、各ブランドのレギュレーションにばらつきがあるので多少の不安を感じるが、取り組みは今から始めるべきで、意識の変化にはきっかけ作りが必要だと思う。

アデライデ
長谷川左希子/ディレクター

A.賛同する
 今思えば、ファストファッションの拡大とともに、約10年前から、いつの間にか普通でないことが普通になった気がする。セールの時期をどんどん早めた米国の百貨店の影響で、米国のブランドを筆頭にデリバリーも早まり、ちょうど受注会の時期に受注するべき商品の一部が店頭にすでにある現象が始まり、お客さまからも「どのシーズンのものを買っているのかよく分からない」という声を多くいただくようになった。業界内でも、実売期にセールが始まるというこの異常なシステムを変えることができないかと話し合う機会がよくあった。バイヤー視点でも近年買い付けの回数が増え、パリ出張だけでも年に6~8回になり、経費だけでなく自分の健康面への負担も多く、悩みの種だった。プレの意味とセール時期を再考し、業界全体のためにもこの“古い”体質から抜け出すことに大いに賛成する。

6月15日号で「公開書簡」の
キーマン、
ドリス・ヴァン・ノッテンに直撃

 5月12日、ドリス・ヴァン・ノッテン、「アルチュザラ」のシラー・スー・カルミ最高経営責任者、香港の高級専門店レーンクロフォードやセレクトショップのジョイスを手掛けるアンドリュー・キース社長らが発表した「ファッション業界への公開書簡」。ムーブメントになったことを受けて、キーマンのドリス・ヴァン・ノッテンにZoomでインタビューを行った。「ファッション業界はバブルのようなものだとみんな知っていた。商品が多過ぎるうえ、スピードも速くてまるでカオス。健康な状態ではなかったから、新型コロナウイルスのパンデミックにより皆が再考するようになった」という彼の言葉が示すように、業界人がオンラインで議論を始めるようになり、「計画的に組織されたのではなくごく自然に起こった」という。「公開書簡」はプロパー販売の期間を延ばすことで、生地の発注を抑えるなど無駄を省き、在庫の廃棄を少なくし、現在のプレコレクション7割、メインコレクション3割の買い付けのボリュームに代えて、再びメインのボリュームを大きくしようというものでもある。また、デジタルショールームを活用して出張をより少なくするなど、ファッションウイークの意義の見直しにも言及している。

この続きを読むには…
残り0⽂字, 画像0枚

この記事は、有料会員(定期購読者)限定です。記事を購入することもできます。

¥100

記事を購入する

プランを選択

定期購読に申し込む

最新号紹介

WWD JAPAN

アウトドア消費の現在地と未来 ブームは一過性か、それとも日常に定着するか

「WWDジャパン」11月30日号は「アウトドア」特集です。アウトドアウエアが日常的に着用され、商業施設の目玉テナントとして誘致されるなど、市場を席巻しています。キャンプやハイキングなどはコロナ禍に最適なレジャーとしても注目されていますが、このブームは一過性のものなのか、あるいは日常に定着するのか。特集では、自然の豊かさを多角的に発信するアウトドア企業のトップや、ファッション視点で市場を見てきた名物…

詳細/購入はこちら