
2025年は、1月に就任した米ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領による大規模関税によって世界中の国々が身構えることから始まった。コロナ明けから続いた消費の伸びは完全に収束し、ファッションやビューティ各社の地力が試されることになった。中国の景気失速が響くラグジュアリーブランドでは、デザイナーの交代劇が相次いだ。そしてモードの帝王と呼ばれるジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)氏の死去は一つの時代の終わりを印象付けた。国内外の重大ニュースを通して1年を振り返ってみよう。(この記事は「WWDJAPAN」2025年12月22日&29日合併号からの抜粋です)
7月
・CFCLがMCFと資本業務提携
・西武池袋本店が化粧品売り場を大規模改装
・TSIがデイトナ・インターナショナルを子会社化
・「ティファニー(TIFFANY & CO.)」がアジア最大旗艦店を銀座に開店
・アルタ ビューティが英美容小売りスペースNKを買収
・欧州で化粧品の環境スコア開示がスタート
免税売上高が乱高下
「為替」や「7月5日風評」も
政府が12月17日発表した2025年1~11月の訪日外国人客数(推計値)は前年同期比17%増の3906万人で過去最多を記録した24年の年間数3687万人を11カ月で更新した。ただ今年は、インバウンドによる消費が激しく乱高下した1年だった。3月以降は百貨店の免税売上高が前年同月を大きく下回るようになり、大手百貨店企業は通期の免税売上高の業績予想の下方修正を強いられた。失速したのはラグジュアリーブランドや時計・宝飾品といった高額商品。春先は為替が円高にふれたこと加えて、前年同月の実績がかなり高かったためだ。「2025年7月5日に大災害が起きる」という風評が広がり、特に香港からの旅行客が減る現象も起きた。秋以降は為替が円安にふれたこともあり、高額商品を含めた免税売上高も回復基調になった。ただ11月に高市早苗首相による台湾有事の発言が中国政府から問題視され、日本への渡航自粛を呼びかけるなど、緊張が走ったが、現時点では影響は一部に留まっている。
企業再編の嵐が吹き荒れる
ヴェルサーチェ、ヘインズ、デイトナ…
国内外で大型のM&Aが相次ぎ、業界再編が進んだ。国内で最も活発な動きを見せたのがワールドだった。三菱商事ファッションを買収し、エムシーファッション(MCF)と商号を改め、グループ内の生産機能を飛躍的に高めた。10月に子供服のナルミヤインターナショナル(ワールドが19年に持分法適用会社化、22年にTOBで子会社化)を株式交換で完全子会社化した。また26年3月にジーンズカジュアル専門店のライトオン(25年1月にワールドが共同出資するファンドが子会社化)も株式交換で完全子会社化する。TSIホールディングスにも大きな動きがあった。この数年は構造改革で複数のブランドを他社に売却していたが、9月にはセレクトショップ「フリークス ストア(FREAK’S STORE)」を運営するデイトナ・インターナショナルを283億円で買収して業界を驚かせた。デイトナが持つ若い世代の顧客基盤や小売機能にシナジーを見出した。ダイドーリミテッドは、「モモタロウジーンズ(MOMOTARO JEANS)」などを運営するジャパンブルー(岡山県倉敷市)の株式の80%を58億円で取得して子会社にした。一方、ユナイテッドアローズは、08年から低価格カジュアル店を運営する子会社コーエンをジーイエット(アパレル物流大手GFホールディングス傘下の旧マックハウス)に売却している。
欧州ではプラダ グループ(PRADA GROUP)がカプリ ホールディングス(CAPRI HOLDINGS)から「ヴェルサーチェ(VERSACE)」事業を12億5000万ユーロ(約2275億円)で買収した。北米ではカナダのアパレルメーカー、ギルダン・アクティブウェア(GILDAN ACTIVEWEAR)が米ヘインズブランズ(HANESBRANDS)を22億ドル(約3410億円)で買収している。
8月
・シドニー・スウィーニー(Sydney Sweeney)出演のアメリカンイーグル広告が炎上
・西武池袋本店の「エルメス」が8月末で撤退
・グンゼの国内4工場閉鎖 人員削減を発表
・米ヘインズブランズ、3256億円で事業売却 カナダの衣料品メーカーに
・村田晴信が「プラステ(PLST)」のウィメンズ・クリエイティブディレクターに就任
・アダストリアがヨーカ堂に供給するファウンドグッドの終了を発表 26年2月で
・「ルイ・ヴィトン」がビューティラインを始動 パット・マクグラスが参画
・バッグ老舗のスタイルが事業停止
・良品計画の堂前宣夫会長が11月23日付で退任と発表
・ユニチカがウイスキー「山崎」蒸溜所に隣接する繊維子会社の土地建物をサントリーに売却
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