「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は、ブランド初となるビューティライン「ラ・ボーテ ルイ・ヴィトン(LA BEAUTE LOUIS VUITTON)」をローンチする。8月25日にオンラインストアで先行発売した後、8月29日に世界の計92の「ルイ・ヴィトン」店舗で発売する。キャンペーンビジュアルには、ブランドアンバサダーを務める俳優でモデルのチョン・ホヨン(Jung HoYeon)を起用する。
ビューティを再定義し芸術の域へ
同コレクションは、2024年に「ルイ・ヴィトン」のコスメティック部門 クリエイティブ・ディレクターに就任した英メイクアップアーティストのパット・マクグラス(Pat McGrath)が手掛けた。発表から半年を経て、55色のリップスティック、10色のリップバーム、8種のアイシャドウパレットが登場する。マクグラス=コスメティック部門 クリエイティブ・ディレクターは米「WWD」の独占インタビューで同コレクションについて、「これは旅の芸術(The art of travel)に根ざしたビューティ体験だ。ラグジュアリーは日常の一部になり、美は日々のリズムやリチュアル(儀式)、世界に溶け込む」と語る。「ルイ・ヴィトン」は、「ラ・ボーテ」を通じてビューティをライフスタイルとして再定義し、芸術の域へと高めることを目指している。
メゾンの歴史に見る美容との深いつながり
「ルイ・ヴィトン」は創業当初から美容とかかわりが深い。1854年に設立された同メゾンは、最初のトランクに香水瓶や化粧道具を保護するコンパートメントをしつらえ、1920年代にはバニティーケースやべっ甲製ヘアブラシ、象牙の鏡やコンパクト、ガラス製の香水瓶なども作っていた。
マクグラスは、「リップスティックから始めるのは自然な流れだった。次にアイメイク、そしてバームが続いた。唇と目は真に物語を語るものだ」と説明する。マクグラスは今回の開発にあたり、同ブランドのアーカイブを調査したという。オペラ歌手マルト・シュナル(Marthe Chenal )のために1925年に製作したバニティーケース“ル・ミラノ”や、作曲家イグナツィ・ヤン・パデレフスキ(Ignacy Jan Paderewski)のためのトイレタリーケースなどからインスピレーションを得た。また、クリエイティブ・ディレクターのニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquier)と20年以上にわたりファッションショーでメイクアップを作り上げてきた経験も生かされている。
旅に根ざした遺産から着想したビューティ製品
「『ルイ・ヴィトン』の世界からインスピレーションを得ることが、純粋な喜びだった」と語るマクグラスは、仏パリ西部近郊の都市、アニエール=シュル=セーヌにあるトランクの製造工場を訪れた。「旅行に根ざした『ルイ・ヴィトン』の真の遺産と、その美の芸術品を見ることができて素晴らしい経験だった。それは常に進化し、常に前進し続ける、“動きに宿るラグジュアリー”を体現している」と続けた。マクグラスは過去20年間にわたりかかわってきた「ルイ・ヴィトン」のショーを振り返り、いくつかのメイクアップのカラーを厳選し、アイデアを練り上げた。そして、あらゆる肌色に合う色を創造し、世界中の人々に響く色を開発する自由を与えられたという。
「ラ・ボーテ」に偶然の要素はない。「ルイ・ヴィトン」のイニシャルであるローマ数字のLVは55を意味し、これがリップスティックの色数となった。マクグラスはあらゆる気分や場面に合う色を作ることを目指した。リップスティックのフォーミュラには、「ルイ・ヴィトン」にとって象徴的なローズ、ジャスミン、ミモザの花からアップサイクルされたワックスを使用し、シアバターとヒアルロン酸を配合した。「リップスティックは非常に使いやすく、強さと柔らかさを兼ね備える。着け心地も良く、塗りやすい」とマクグラスは説明する。「ルイ・ヴィトン」のマスター・パフューマーであるジャック・キャバリエ・ベルトリュード(Jacques Cavallier Belletrud)は、口紅のための香りを創作した。その香りはミモザ、ジャスミン、ローズのノートを特徴とし、ブランドの工房「レ・フォンテーヌ・パルフュメ」が仏グラースで生産した原料を使用した。
「時計のように精緻で時代を超える美」
製品パッケージのデザインは、インダストリアルデザイナーのコンスタンティン・グルチッチ(Konstantin Grcic)が手掛けた。マクグラスは「真の欲望の対象となるものを作ることが重要だった。『ルイ・ヴィトン』のバッグのように大切にされ、代々受け継がれるにふさわしい製品を作りたかった」と話す。花柄モチーフのロックシステムを採用したリップスティックとアイシャドウのパッケージには、アルミニウムや真鍮など耐久性のある金属を使った。マクグラスはこれらを「時計の内部のように精緻で、時代を超える美しさ」と表現する。
メイクアップトランクの最高峰を考案
マクグラスはまた、オーダーメイドの“ビューティ・ステーション・トランク”のコンセプトを発案した。これはガストン ルイ・ヴィトン(Gaston-Louis Vuitton)が考案し、家具デザイナーのピエール・エミール・ルグラン(Pierre Emile Legrain)が制作した1920年代の化粧台と、現代のドレッサーを融合したデザインで、細部まで一切の手抜きはない。「あらゆる気分に合わせて照明が調整できるようにした。目元を写すためのマクロミラーや、スマートフォンを置いて録画するためのスペースも備えている。これはまさにメイクアップトランクの最高峰」と説明した。マクグラスは自身で使用するためのステーション・トランクが既に手配されていることを明かし、「船に載せられていると聞いた。リビングのソファを移動して、トランクを置く予定」と付け加えた。マクグラスはソーシャルコンテンツの制作にも携わっており、ハウツー動画なども手掛けている。「デジタルにおいては、試着体験の質が格段に上がるだろう。楽しみなことをたくさん用意している」と述べた。
ニューヨークでは体験型ポップアップを開催
ニューヨークでは、8月29日(現地時間)から年末までプリンス・ストリートで「ラ・ボーテ」のポップアップストアをオープンする。店内は赤を基調とした空間で、バーチャル試着ルーム、メイクアップ・コンサルテーションルーム、ルックルームを用意した。ルックルームでは、アンケート回答後に色やスタイルの提案が行われる。赤いラッカー仕上げの棚は曲線を描き、入り口も同様の設計で、周囲を48のデジタルスクリーンで囲んだ。中央のモノグラムと花の形のメイクアップステーションでは、「ラ・ボーテ」の全コレクションを展示する。スクリーンルームでは、10の主要なカラーコスメのシェードを背景に、テーマに沿った没入型のストーリーテリングを展開する。マクグラスはプレスカンファレンスで、「美を創造するだけでなく、単なる美を超えた現実の世界、地球そのもの、宇宙のような世界を作り上げることができた。非常に楽しい経験だった」と語った。