ファッション

歌手からフェムテック起業家に 信近エリが開発した吸水ショーツ&吸水ブラの「リネ」

 シンガーソングライターとして活動してきた信近エリがフェムテックブランド「リネ(RINE)」を立ち上げた。着心地にこだわった吸水ショーツと授乳期の女性に向けた吸水ブラレット(ノンワイヤーのブラジャー)を開発。環境に配慮した素材使い、ビジュアルは“シェアしたくなる“イメージを追求している。歌手として活動する傍ら、飲食店のマーケティングを経験するなど、異色バックグラウンドを持つ信近に、ブランドを始めたきっかけや、商品作り、資金調達の道のりを尋ねた。

WWDJAPAN(以下、WWD):これまでどのような活動をしてきたのか?

信近エリ・ネイト代表取締役(以下、信近):19歳でソニーミュージックからデビューし、エイベックスなどにレーベルは変わりながらも、シンガーソングライターとして活動を続けてきました。2017年にはスイーツ店に企画から携わり、SNSを活用したマーケティングや海外へのフランチャイズ展開も担当し、ビジネス目線のクリエイティブに興味を持ちました。

WWD:フェムテックとの出合いは?

信近:生理日が管理できるアプリの「ルナルナ」などを使ってきいましたが、“フェムテック“として意識して触れたのは吸水ショーツが最初でした。1年半前に存在を知り、オンラインで購入。最初はナプキンを付けなくていいことだけでとても快適で満足していたのですが、多くのブランドを試す中でもっと「普段の日と変わらないはき心地の吸水ショーツがあったらいいな」と思うようになりました。

試作品は46型!
はき心地や品質を“変態的に追求”

WWD:商品作りのこだわりは?

信近:これまで試してきた吸水ショーツは、はき心地や品質に改善の余地があると思うことがあり、これは誰かが“変態的”に追求する必要があると約1年前に自分で作ってみることを決めました。はき心地の面では、ショーツのそけい部は圧迫してむくみ、赤みや黒ずみが気になるところなので、デリケートな部分を避けながら、お腹が冷えないような深めのカッティングをミリ単位で調整しています。また吸水量の多さも「リネ」の強みです。本当は3月末に商品をリリースしたかったのですが、その直前で優秀な吸水素材が発表されて、そちらを採用するために発売を2カ月延期して6月になりました。そのおかげで、フルタイプは約110mLの経血を受け止めることができます。試作品は計46型も作っていて、妥協せず、満足いくショーツができました。さらに下着が上下でチグハグにならないよう、吸水機能のないブラレットも一緒に提案しています。

WWD:授乳期の乳漏れに対応するブラレットも開発している。きっかけは?

信近:吸水量を上げるために、さまざまなナプキンを購入して構造を調べていました。そのリサーチ時に母乳パッドの存在を知り、使用する友人に話を聞くと、ズレたり、ムレたりと使い心地の悪さを感じていることが分かったんです。ネットで検索してみても吸水ブラジャーは出てこず、ニッチだけれど、必要としている人がいるのであれば作りたいと思いました。授乳中の友人に試着してもらい、頂いた意見をもとに改善しています。出産祝いとなると、赤ちゃんに向けた商品が多いので、このブラレットを新しい出産祝いとしても広げていけたらと思っています。8月に発売予定です。

WWD:環境に配慮した素材も採用している。

信近:まずはオーガニックコットンを考えましたが、通気性、速乾吸収、機能性を考えると難しい素材。リサーチしていると、機能性にも環境面も優れたテンセルに出合いました。テンセルは木材を原料とし、速乾吸水性、抗菌防臭機能、伸縮性にも優れているといい、生分解性で土に還る素材です。ただテンセルではなく、防水素材は化学繊維を使用していて、細かいことを考えれば完全にサステナブルではありません。しかし、生理ナプキンの使用量を減らすことはできると思います。私たちはショーツを普及させるべきだと考えました。

“吸水ショーツといえば”という
ブランドに成長させたい

WWD:ブランド名の由来は?

信近:生まれ変わりを意味する輪廻(りんね)からとっていますが、海外だと発音が難しいので“リネ“にしました。

WWD:5000万円の資金調達を行ったが、意識したことは?

信近:工場が決まり、ある程度商品を製作できる目処がついてから事業計画を作ってピッチに進みました。投資家には男性の方が多いので、生理やナプキンの説明から徹底して資料に織り込みました。

WWD:フェムテック市場の成長をどう見ている?

信近:認知度の高まりを感じていますが、実際に使用している人はそう多くない。吸水ショーツは「漏れそう」「洗うのがめんどくさそう」と踏み出せない人もいる。一つの選択肢として、もっと女性にとって身近なものになるように、使い方を発信していくことが必要だと思います。

WWD:「リネ」の今後の目標や計画は?

信近:“吸水ショーツといえば”というようなブランドに成長させていきたい。一緒に面白いお取り組みができたら、ポップアップやコラボレーションも考えたいですし、卸ももしご縁があれば検討したいです。また起業を経験し、いつか女性のビジネスコミュニティを作りたいと思うようになりました。資金がないからと、やりたいことを諦めてしまうのはもったいない。世の中のニーズに合わせて、事業計画を立てて協力を得られれば新しいビジネスを立ち上げることができるはず。一生懸命なだけじゃダメで、数字と成功できるイメージをきちんと提示することも大事。もっと多くの方にビジネスを身近に考えて欲しいですね。

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