ファッション業界のご意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。10月後半以降、気温が低下し、店頭では衣料品が一気に動き出した。百貨店や大手小売りチェーンの10月度の既存店売上高は、前年同月比25%増のユニクロ(国内事業)をはじめ、好調な成績が相次ぐ。そこで今回は、冬物商戦で間違わないVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)について考察する。
11月になってようやく冷え込み、防寒アウターやニットが動いて売り上げが稼げるシーズンとなったが、下手なVMDでチャンスを損なっては目も当てられない。12月商戦に焦点を当てて「売り上げを稼ぐVMD」の基本を確認しておこう。
基本はMDの一覧性と「元番地」「出前」
VMDはマーチャンダイジングの展開を視覚的に(とは限らないが)訴求して顧客の購買行動を喚起・誘導するものだが、季節のウエアリングとその核となるアイテムが明確でMDのラインナップがそろい、かつ在庫の奥行きが厚くないとVMDのインパクトも限られ、期待する売り上げも得られない。ウエアリングとMD展開が的確に設計されていないと効果的なVMDは組めないし、在庫を積まないと早々に欠品して仕掛けが崩れてしまう。
「売り上げを稼ぐ」VMDの基本の基本が「MDの全容を一覧させる」ことで、インクルーシブ※1.なMDを志向するユニクロやジーユーはこの点で突出している。オンラインストアのサムネイルでもアイテム毎のデザインラインナップ、品番毎の商品詳細ページでもSKU(色×サイズ)ラインナップの全容が一覧できるが、単品の羅列に終始してMDの全容が見えないECサイトも多い。それは実店舗でも同様ではないか。
一瞬にして店内MDの全容を一覧させるのが理想だが物理的に困難だから(壁面の小型店では可能)、店頭や主通路沿いにMDのダイジェストを的確に「出前」する必要がある。デザインやSKU(色×サイズ)がそろった元の陳列フェイスがフェイシング管理(補充と陳列整理)する「元番地」であり、そこから目立つ所にダイジェストして持ち出す陳列が「出前」と捉えていただきたい。
「元番地」はユニクロのように単品の色・サイズ展開を「棚割り」陳列する「単品展開型」をイメージしがちだが、上下に「セットアップ」(同素材)陳列したり「定型ルック」(異素材)陳列するよう企画段階からMDを組む場合もある。詳しくは後述する。
「出前」は通常、継続販売する「縦売りアイテム」※を「元番地」からピックアップして、短期間で売り切る「横売りアイテム」と「定型ルック」を組むことが多いが、1アイテムで1カ所とは限らない。お相手や色組みを変えて複数仕掛ければ、それだけ販売チャンスは増えるが、「縦売りアイテム」は十分な在庫を抱えていることが前提になる。上手い店長?のいるジーユーに行けば、「縦売り」ボトム×「横売り」トップスの多重「定型ルック」出前を実見することができる。
SKU(色×サイズ)を揃えて補給するインクルーシブなMDでは「元番地」は本部指示を基本とした「棚割り」陳列が基本だが、売り切り御免のファストなMDでは新規アイテムは「出前」され「元番地」は売れ残りの旧アイテムが詰め込まれがちだから、下手すればいかにも「売れ残り集積」に見えてしまう。色・サイズが欠けた売れ残り品番をどう編集して「売れる」陳列に見せるかが現場VMDの技の見せどころで、「単品再編・階梯誘導型」と「ルック回転編集型」の2つの方法がある。
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