「令和の米騒動」では、蓄積されてきた農政の問題が一気に噴出した感があります。備蓄米の放出や米価の調整といった対処療法で収まる話ではないでしょう。構造的な問題が横たわっているからです。稲作農家の6割が70歳以上で、7割に後継者がいません。制度的に新規就農への参入障壁も高く、それ以上に労働に見合う収入が得られないことも理由と言われています。
政府のコメ政策は長らく減反が最大の柱でした。食生活の多様化で国民のコメ消費が減り続けたため、供給過多の調整が優先課題だったのです。それが高齢農家の大量リタイアによって、生産量が需要を下回る局面に近づいています。自給率ほぼ100%という前提が維持できなくなるかもしれません。
後継者不足と低賃金による先細り。話に飛躍があるのは承知ですが、私は繊維産業と重ねてしまいます。
特に縫製業は1990年に10億点を超えていた国内生産量が、2023年には6423万点まで減りました。国内に流通する衣料品に占める国産の比率は90年の50.1%に対し、23年はわずか1.5%です。“失われた30年”のデフレの進行とグローバル化の加速によって、衣料品は低コストの輸入品に席巻されてしまいました。もともと縫製業は中小・零細企業が多く、後継者不足と低賃金という課題を抱えていたため、廃業が止まらなくなりました。産業としては風前の灯火です。
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