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値上げする?それともしない? 関税引き上げの対応に追われる米小売業界

 米中貿易摩擦が激化する中、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は中国に対する制裁関税の第4弾を9月1日に発動した。これは約1100億ドル(約11兆6000億円)相当の中国からの輸入品に対して15%の追加関税を課すものだが、衣料品や家電などの消費財が中心となっているため、米国のメーカーや小売業、消費者への影響が大きいと見られている。

 米市場調査会社エヌピーディー・グループ(NPD GROUP)は、「追加関税の発動を受けてメーカーや小売店が値上げをした場合、消費者は必需品以外を買い控えるようになるだろう。例えば自動車用品、下着、スキンケア、ベビー用品は必需品のため、売り上げはあまり変わらないと思われる。一方で自転車、ハンドバッグ、ウオッチ、ゲーム機器、テレビ、ヘッドフォンなどは贅沢品と見なされ、売り上げが落ちる可能性がある。実際、2018年に追加関税が課された分野ではすでに売り上げが落ちたという調査が出ている」とするリポートを発表した。同社のマーシャル・コーエン(Marshal Cohen)=チーフ・インダストリー・アドバイザーは、「消費者は価格が安いからというだけで買い物をするわけではない。好みや必要性に基づいて価格と商品価値のバランスを検討し、納得がいかない場合にはさらに安い商品を探したり、必需品でないものを買い控えたりする」と語った。

 米銀行バンク・オブ・アメリカ(BANK OF AMERICA)が発表したリポートでは、15%の追加関税が課された上でこれまで通りの利益を出すには、アマゾン(AMAZON)で2.1~2.6%、家具に特化した米ECのウェイフェア(WAYFAIR)は4.6%の値上げをする必要があるとしている。これは、アマゾンのプライベートブランド事業で中国からの輸入品が占める割合は20%程度だが、ウェイフェアは同60%にも上ることが原因だという。同行のジャスティン・ポスト(Justin Post)=アナリストは、「ECは中国からの輸入比率が比較的高いため、追加関税で最も影響を受ける業界の一つだ。値上げを嫌う消費者が、中国以外の国で調達している小売りから購入するようになり、結果として多くのメーカーや小売りが中国以外から調達するようになるだろう」と説明した。

 これを裏付けるような話がある。米百貨店メイシーズ(MACY’S)が試験的に値上げを実施したところ、消費者の反応が芳しくなかったため、追加関税が25%に達するまでは値上げをしないと決定したのだ。アパレル業界では、「アメリカンイーグル アウトフィッターズ(AMERICAN EAGLE OUTFITTERS)」や「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」も値上げをしないという。

 一方で、ミレニアル世代をターゲットにしたファッションECサイト「リボルブ(REVOLVE)」は、「当サイトの顧客は何か新しくてエキサイティングなアイテムを探しているので、価格はそれほど重要ではない」とし、値上げを検討しているという。複数のフットウエアブランドを擁する米カレレス(CALERES)も、「部分的に値上げを検討している」とコメントした。

 「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」などのライセンス生産を行っているG-IIIアパレルグループ(G-III APPAREL GROUP)のモーリス・ゴールドファーブ(Morris Goldfarb)会長兼最高経営責任者は、「当社はノンブランド品や下着を生産する会社ではない。一流ブランドと提携し、ファッション性の高い製品を手掛けている。製品によっては適度に値上げをしたが、今のところマイナスの影響はない」と語った。

 なお、クリスマス商戦を控えている米小売業界に配慮し、携帯電話やパソコン、また一部のアパレル製品への追加関税の適用は12月15日まで延期された。しかし今後の米中交渉に進展がなければ、同期日以降はそれらの品目にも適用される。