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「フォーエバー21」「アメリカンイーグル」「エディー・バウワー」 再進出にみるスキームの選択【小島健輔リポート】

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 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。少し前に日本市場から撤退した米国カジュアルブランド「フォーエバー21」「アメリカンイーグル」「エディー・バウワー」が相次いで再上陸を発表した。コロナを経て、厳しさを増す日本のアパレル市場で復活できるのだろうか。どこよりも詳しく分析する。

 日本から撤退した外資アパレルの再進出発表が続いているが、一度は撤退しただけに再進出の成功は容易ではあるまい。元より日本市場での評価が低かったから撤退に至ったわけで、よほどイメージを刷新するか次元を画したマーケティングで強襲しない限り成功はおぼつかない。ライセンシングで挫折したのなら直営で、直営で挫折したならライセンシングでという選択もあるのではないか。

「アメリカンイーグル」に成算はない

 19年末に撤退した青山商事子会社イーグルリテイリング運営の「アメリカンイーグルアウトフィッターズ(AMERICAN EAGLE OUTFITTERS)」は米国本社が運営を肩代わりするという観測もあったぐらいで、20年7月には早くも米国本社が運営する日本向け公式オンラインサイトが開設され、22年10月には渋谷と池袋に直営店を開設して再上陸する。

 公式サイトで確認した限りでは価格も商品も撤退前と同様で新味がなく、根本的な敗因となった「『ユニクロ(UNIQLO)』より高いのに『ユニクロ』より格段に見劣りするチープな品質感」も変わっていないようだ。再進出するなら撤退に至った要因を検証して日本向けに素材や縫製をレベルアップするべきだと思うが、それでは価格が上がって居場所がなくなるから苦戦覚悟で強襲することになったのだと推察される。その分、家賃負担の大きい都心の大型店舗に依存せず、後述する「フォーエバー21(FOREVER 21)」同様、半分前後をECで販売して採算を図ると思われる。

 そもそも外資アパレルは上から目線で本国企画を押し付けることが多く、よほどの事業規模にならない限りローカルフィットやローカル企画に踏み切ることはない。「ザラ(ZARA)」など1998年に進出してコロナ前の最盛期には94店に達していたのにローカルフィットにもローカル企画にも踏み込まず、貧困化しモード離れする日本市場に見切りをつけた感がある。ローカルフィットに積極的だった「ギャップ(GAP)」も価格設定が日本市場の値頃感と乖離して値引き販売が常態化し、「オールドネイビー(OLD NAVY)」の短期間での撤退もあって、いつ撤退するのかと危ぶまれている。

 日本のカジュアル市場には「ユニクロ」というガリバーがいて大きな参入障壁となっており、品質感でも値頃感でも「ユニクロ」に劣る“アメカジ”の「アメリカンイーグル」が日本市場に定着するのは極めて困難だ。カジュアルインナーの「エアリー(AERIE)」はまだ競争力があるが、より低価格の「ジーユー(GU)」や「スリーコインズ(3COINS)」がカジュアルインナーを拡充していけば価格が通らなくなるのは時間の問題だろう。

 イーグルリテイリングによるライセンス運営から米国資本による直営へと転じても、商品も価格もMD展開も変わらないとすれば、インフルエンサーを起用してのキャンペーンも期待するほどの効果は得られないのではないか。「アメリカンイーグル」の再上陸に成算はないと思う。

「フォーエバー21」はアダストリアがライセンス展開

 米国本社の連邦破産法申請に伴い19年10月末に日本国内店舗を閉鎖して撤退した「フォーエバー21」の場合はかなり状況が異なる。米国本社が運営して米国と同じ商品(サイズなどアソートはローカライズされるだろうが)を展開する「アメリカンイーグル」と異なり、ライセンス契約したアダストリア(正確にはライセンス事業を専門に行う子会社Gate Win)が独自のローカルマーケティングに基づいて商品企画・生産、MD展開・販売運営するからだ。

 「フォーエバー21」は経営破綻後の20年2月、リブランディング再生のオーセンティック・ブランズ・グループ(ABG)がサイモン・プロパティ・グループ、ブルックフィールド・プロパティ・パートナーズと共同で買収後、大量廃棄のファストファッションというイメージから脱却してサステイナブルを志向し、ローカルマーケティングで米国のみならず海外でも再拡大を図っている。

 ABGは19年の「バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)」、20年の「フォーエバー21」と「ブルックスブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」、21年のPVHからの「アイゾット(IZOD)」「バン・ヒューゼン(VAN HEUSEN)」「ジェフリー・ビーン(GEOFFREY BEENE)」「アロー(ARROW)」の買収を経て20年7月にニューヨーク証券取引市場に上場。21年にはさらに日本から撤退した「エディ・バウアー」、22年には「リーボック(REEBOK)」、「テッドベーカー(TED BAKER)」も手中に収めている。

 日本ではマスターライセンシーとなった伊藤忠商事とライセンス契約したGate Winが米国企画をベースに、独自のローカルマーケティングでデザインやパターン、素材や生産仕様まで日本市場向けにローカライズした商品を展開する。商品点数は以前の10分の1に絞り込んで23年春夏は100余型で立ち上げ、日本オリジナル企画を8割、米国企画は2割として以降は反応を見て対応するとしているが、立ち上げの型数から見ても4000円という平均商品単価から見ても開発チームの陣容から見ても、かつてのファストなバイイングSPAとは一線を画した企画・開発になると期待される。

 それで客単価が5800円ではパック率が1.45に留まるからコーディネイト設計を欠く単品構成かと疑いたくなるが、6割をECで売る流通設計ゆえのパック率で、店舗販売だけ取れば1.7とか1.8ぐらいにはなると推察される。

 来年2月21日からアダストリアの自社ECサイト「ドットエスティ(.st)」で先行スタートし、店舗販売は4月下旬から郊外大型SCで始めるとしており、「6割をECで売る」こと、100〜150坪の標準店を展開して高コストな大型旗艦店を設けないことも含め、MDも流通コストも慎重に設計されているようだ。その意味では「駅ビルも視野に入れる」はリップサービスというべきで、賃料や人件費などの運営コストを考えれば郊外ターミナルかローカルターミナルまでになるのではないか(期間限定のポップアップなら都心駅ビルでも可)。

 初年度3店舗を出店してEC含めて13億円を売り、5年で15店舗、EC含めて100億円売るという計画も近年のアダストリアの力量からすれば控えめで、早期の黒字化を見込んでいると思われる。

微妙なプライスポジションとブランド価値

 平均商品単価4000円というプライスは「ユニクロ」より半マーク上という微妙なポジションだが、アダストリアの開発体制と生産ロット、販売消化歩留まりや販管費率から導かれる損益構造には無理がない。逆にいうなら今のアダストリアの開発体制や販売体制の延長を出ておらず、新生「フォーエバー21」というリブランディングのマジックを期待するには心許ない。

 日本市場から脱落したモノづくり背景もないブランドをわざわざライセンス契約してトライする意味があるのか、という疑問も浮かぶ。どうせライセンス契約するなら「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」や「チャンピオン(CHAMPION)」クラスのグローバル・ナショナルブランド(国毎に直販・直卸かライセンシングを選択して世界で数千億円のマーケットを獲得している)であるべきではなかったか。ならばリユースまで含めた息の長い大きな市場が期待できたのに、選択するブランドを間違ったのではないか。

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