ファッション

米「ヴォーグ」9月号表紙でビヨンセが着用したフラワーヘッドドレスの制作秘話

 1年の中で最も雑誌が広告で分厚くなり、表紙も各雑誌が力を入れる9月号、通称セプテンバーイシューで米「ヴォーグ(VOGUE)」が表紙に起用したのは、ビヨンセ(Beyonce)。ビヨンセはヘッドドレスのリストの中からどれを使うかを選ぶ権利を与えられ、その中で選んだのが、イギリス・マンチェスター出身のフラワーアーティスト、フィル・ジョン・ペリー(Phil John Perry)のフラワーヘッドピースだった。

 ペリーはロンドンの花屋、レベル レベル U.K.(REBEL REBEL U.K.)と共に花嫁のための花冠を制作してきた。それが英「ヴォーグ」のウェブサイトで取り上げられたことをきっかけに、米「ヴォーグ」の4月号の表紙に登場したケンダル・ジェンナー(Kendall Jenner)のために、カスミソウでヘッドピースを制作した。そしてその数カ月後、米「ヴォーグ」9月号の表紙の撮影に抜擢された。米「WWD」はペリーに、どうやって独立したビジネスを築いてきたのか、米「ヴォーグ」の撮影を手掛けたことでビジネスとプライベートにどのように影響があったかなどを聞いた。

WWD:米「ヴォーグ」9月号表紙の撮影では、クリエイティブ面でどのくらい自由が与えられた?

ペリー:(撮影は)あっという間に始まって終わったという感じだった。撮影の5日前にヘッドドレスを手掛けることを知らされたんだ。米「ヴォーグ」は参考となる画像やカラーを送ってくれたんだけど、ヘッドピースの形は完全に僕にお任せだった。後になって分かったんだけど、その参考資料を送ってくれたのはビヨンセ自身だったんだ!これまで僕がデザインしてきた花冠とは全く違うものをデザインしようと意気込んでいたよ。ビヨンセには花冠よりも戦士のような女帝のためのヘッドドレスでなくちゃいけないと思った。そんなエッジィさを加えるために、これまで僕が挑戦したことがないような形、非対称なドーム型にした。米「ヴォーグ」が保管するハットのアーカイブを見るように頼まれて、その中に美しい鉄の檻のようなヘッドドレスを見つけた。これをインスピレーションに、その日のために制作した。

WWD:表紙のヘッドドレスは特集ページのものとかなり違う印象だが。

ペリー:本当は1つだけヘッドピースを作る予定だったんだけど、僕はファッションが好きだし、それは僕の仕事の延長線上にあると思っているから、ビヨンセの「グッチ(GUCCI)」のスタイリングを見たときにすぐに感化されて「よし、今からすぐに何か作って、彼女が気に入ってくれるかどうか見てもらおう」と思ったんだ。それで、撮影の前夜に僕の大家さんのクローゼットで見つけたセーラーハットをベースにヘッドドレスを制作した。15分で構造も完璧なヘッドドレスを作ったよ。クジャクヤシやコショウの実、アンスリウム、コルディリネなどを使った。個人的にすごく気に入っているよ。

WWD:ビヨンセは中面で使用した2つ目のヘッドドレスを見たとき、どんなリアクションだった?

ペリー:皆には「大きすぎ」と言われたけど、僕は「ビヨンセならその大きさに負けない」と思っていた。スタイリストを通じてヘッドドレスを渡した時、ビヨンセは僕の目をまっすぐ見つめて「フィル、これは美しいわ」と言って自らかぶってくれた。僕たちはお互いにうなずいて、彼女は撮影に向かった。ビヨンセが認めてくれたんだ。表紙のヘッドドレスもすごく重くて大変だった。

WWD:撮影する前にあらかじめスケッチ画を準備したのか、それとも頭の中で描いた上で実際に花がうまくマッチするように調節するのか?

ペリー:花はすぐに枯れてしまうから、制作は数時間から1日で行う。たいてい作りながら考えるよ。基本的に色と形を簡単に描いて、それに沿って制作する。リスクもあるけど、そのかいがある作品ができる。撮影が終わりに近づくにつれ、水をやれないから花がしなってきたんだ。でもそれも、花の主張が減って、少し茶色くなってエッジィが利いて気に入ったよ。

WWD:米「ヴォーグ」のアーカイブの他、ビヨンセのこれまでの仕事から何か影響を受けた?

ペリー:僕はビヨンセの大ファンなんだ。子どもの頃から彼女の曲を聴いていたし、アーティストとして強い女性に夢中だし、インスパイアされている。「Run the World」や「Flawless」が特にお気に入りで、ヘッドドレスを作りながら聴いてた。今朝は彼女の曲はもちろんだけど、デスティニーズ・チャイルド(Destiny’s Child)時代の「Survivor」も聴いてた。デスティニーズ・チャイルドの曲が嫌いな人なんていないからね。

WWD:今回表紙の撮影に起用されたことで、ファッション業界におけるフラワーアートにどんな影響を与えたと思う?

ペリー:フラワーアートはすごく技術がいる仕事だし、それで名が知れた人もたくさんいる。例えば英「ヴォーグ」9月号表紙のリアーナ(Rihanna)のフラワーヘッドピースを手掛けた日本人フラワーアーティストの東信は、また僕とは違うスタイルを持っている。でもこの違いが業界を成長させていくのだと思う。今たくさんのコピーもあるけど、ファッション業界でフラワーアートの存在は大きくなっている。そして、花は一種のはかなさをファッションに与えてくれる。いつもそこにあって変化している服と、短命のはかない花を一緒にすることで、とても面白い効果が生まれる。

WWD:今後の自身の目標は?

ペリー:個人的には、かわいいという花のイメージを変えたいと思っている。花は美しく、ゴージャスだけど、女性が身につけるからといって柔らかいものである必要はないと思っているんだ。

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2022年春夏速報第二弾は、注目の3大ムードを解説 日本から唯一現地入りしたビームスのリポートも

今週号は、日本からパリコレ入りしたおそらく唯一のショップ関係者であるビームスの戸田慎グローバル戦略部長によるパリコレダイアリーからスタート。来年本格始動する海外ビジネスのために渡航した戸田部長が目にしたパリコレ、展示会、パリの街並みをお伝えしつつ、そこから感じたこと、業界人がみんなで再考・共有すべきファッションへの想いを存分に語ってもらました。トラノイやプルミエール・クラスなどの現地展示会の雰囲気…

詳細/購入はこちら