新たに就任したクリエイティブディレクターによるデビュー作が多数登場し、瞬く間に過ぎ去っていった2026年春夏パリ・ファッション・ウイーク。新デザイナーによる話題のショーのほかにも注目すべきショーが数多見られた。シルエットやプロポーション、素材、色彩といった多様な要素を通じた独創的なデザインが光るシューズが、多くのブランドのショーで存在感を放った。「トム・ブラウン(THOM BROWNE)」の錯視を誘うハイブリッドルックから「ディオール(DIOR)」の特大ロゼット装飾を施したミュールなど特に際立ったシューズを厳選し紹介する。
「トム・ブラウン」
トロンプルイユ風(トロンプルイユ=だまし絵)のハイブリッドデザインは、繊細なサンダルにソックスを合わせたような錯覚を与える。実際には、細いストラップで装飾されたジップアップブーツ1足だ。この錯覚技法は別のジップアップブーツにも応用され、ソックスとパンプスの組み合わせのように見える。
「シャネル」
マチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)新クリエイティブディレクターによる「シャネル(CHANEL)」のアイコニックなキャップトゥデザインが再解釈し登場した。このヒールはより小さなキャップトゥと高い甲部分を採用し、クラシックなカラーブロックルックのプロポーションを大幅に刷新している。
「サカイ」
阿部千登勢クリエイティブディレクターが率いる「サカイ(SACAI)」は、誇張したタッセルを披露。アバンギャルドな創作で知られる同ブランドは、長いタッセルの房が躍動感を与える洗練されたブラックのポインテッドトゥシューズを発表した。
「バレンシアガ」
「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のランウエイでは、トングサンダルがひときわ目立つ存在感を放っていた。つま先が反り返ったドラマティックなプラットフォーム仕様に、ふっくらとしたストラップをあしらったデザインが印象的だ。ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)新クリエイティブ・ディレクターの提案を見る限り、来年もビーチサンダル風のトレンドは継続しそうだ。
「ロエベ」
「ロエベ(LOEWE)」のショーでは、新クリエイティブディレクターのジャック・マッコロー(Jack McCollough)とラザロ・ヘルナンデス(Lazaro Hernandez)が、高い甲部分でブーツの領域に迫る硬質なキティヒールパンプスのさまざまなバリエーションを完成させた。透け感のあるバージョンでは何も履かずに見せたり、甲部分の深い切り込みに合わせてソックスを組み合わせることで、魅惑的なレイヤードスタイルを創出していた。
「ヴァレンティノ」
「ヴァレンティノ(VALENTINO)」は、昨年からクリエイティブディレクターを務めるアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)のもと、“トランスペアレントの美学”を独創的なミニマリスト的解釈で表現し、クリアシューズのトレンドを取り入れた。オープントゥのヒールには、甲を横切る透明ストラップが施され、アッパーの側面をつなぐことで、独特な視覚的効果を生み出している。
「ディオール」
ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)が率いる「ディオール」は、業界ベテランのニーナ・クリステン(Nina Christen)をシューズデザインディレクターとしてチームに迎え、ディオールで新たな時代を切り開いた。「ディオール」が発表したフットウエアの中で特に際立っていたのは、アッパーにドラマチックな特大のロゼットをあしらったミュールで、パステルカラーのチェック柄など、さまざまなカラーバリエーションが展開していた。