
マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)が、「ディオール(DIOR)」での9年間の職務を経て、古巣である「フェンディ(FENDI)」に戻ってきた。キウリが宣言したのは、「Less I, more us (“私”よりも“私たち“)」。メゾンの歴史を築き上げてきたフェンディ家の2代目、創業者の5人姉妹でそれぞれブランドの世界的発展に尽力したパオラ(Paola)、アンナ(Anna)、フランカ(France)、カルラ(Carla)、アルダ(Alda)の結束力に敬意を表しながら、マリアが「ディオール」で探求した“シスターフッド“を「フェンディ」流に表現した。
キウリは1989年に「フェンディ」でキャリアをスタートし、99年までアクセサリーデザイナーとして在籍した。自身の記憶と新鮮な視点の両方でブランドの本質を見直したという。その結果、ロゴにも変化が現れた。イタリア人グラフィックデザイナーのレオナルド・ソンノリ(Leonardo Sonnoli)と協業し、縦横比をオリジナルの比率に。ロゴというビジュアル・コミュニケーションは、キウリにとってチームの個性を尊重しつつも「結束」を高めるための重要なツールだという。
新生「フェンディ」は、無駄のないジャストサイズのテーラードで幕を開けた。従来のポップさやガーリーさは感じず、芯のある強い女性像を明確に立ち上げる。
ただ、性別を強調した“女性像“と表現するよりも、“人物像“とした方が、正確だろう。黒のダブルブレストに淡いブルーシャツのスタイリングはメンズにもそのままシンクロさせ、あくまでジェンダーを問わない、現代の日常着として主張する。メゾンの原点であるファーコートは、日常着の延長として差し込まれていく。ファーは古い毛皮を解体し再構築するリモデルに職人技を生かしている。
強い人物像は、レザーライダースやデニム、カーゴバミューダパンツなどのワークウエアでも一貫する。フットボールスカーフやTシャツに載る言葉は、イタリア人の女性アーティスト、サグ・ナポリ(SAGG Napoli)の作品だ。「根ざしているが、とらわれていない(Rooted but not stuck )」「存在しているが、依存していない(Present but not dependent )」「Loyal but not obedient (忠実だが、盲従ではない)」「Committed but not consumed(献身的だが、消費されない)」といった言葉は、「Less I, more us」を宣言したキウリの目指すシスターフッドのあり方、そして今後のメゾンのチームのあり方を示す。
今季はロゴの刷新に始まり、文字と言葉が重要な鍵を握る。アクセサリーでも、言語をモチーフにするイタリア人アーティスト、ミレッラ・ベンティヴォーリオ(Mirella Bentivoglio)との協働で、1970年代初頭に彼女が構想したリングを限定で復刻した。ベンティヴォーリオのジュエリーを「身につけられる詩」と捉える発想をコレクションに加えている。
後半を華やかに盛り上げたドレス群。黒のレザードレスは、まるでレースのように繊細な花模様が透け、フェミニンな甘さを残しながらも、クラフツマンシップの強度で観客を圧倒した。
強い個人による確かな連帯。キウリのフェミニズムの精神が「フェンディ」に宿った。
