2026-27年秋冬のコレクションサーキットが終わり、シーズンを象徴するムードやトレンド、デザイナーたちの考えが見えてきました。「パリコレダイジェスト」では、毎回一つのトピックをもとに気になったブランドのコレクションを取り上げます。
今回は、1月のメンズに続き、ウィメンズでも広がりを見せた「愛着」や「記憶」という価値観やノスタルジックなムード。懐かしさ漂うアイテムのハイパーミックスを見せた「ラバンヌ(RABANNE)」、周年を機に自分たちのヘリテージや軌跡を振り返った「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」と「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」、デザイナーがファッションに目覚めた1990年代を起点にした「ウジョー(UJOH)」を紹介します。
代表格の「クロエ(CHLOE)」と「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」のコレクションリポートは別途アップしていますので、併せてご覧ください。
レトロなミックススタイルが光る
トレンドど真ん中の「ラバンヌ」
「ラバンヌ」は、ビンテージライクなアイテムや色柄を組み合わせたレイヤードスタイルで、シーズンを象徴するノスタルジックなムードに合流しました。今季のクリエイションの背景にあるのは、「磨き上げられすぎた完璧さから距離を置く姿勢こそが、モダンなフェミニニティー」だというジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)=クリエイティブ・ディレクターの考え。さまざまな時代のエッセンスを取り込み、再構築するアプローチを通して“今”の美学を表現し、現代を生きる人々の個性を際立たせるための着こなしを提案しました。
ショーは、レトロなプリントを施した控えめなパフスリーブのブラウスと1940年代風のティードレスを重ねたルックからスタート。その後も、フェアアイル柄のハーフジップセーターの上にセンシュアルなドレスをコーディネートしたり、タートルネックセーターとレーストリムのキャミソール、ボウタイ付きブラウス、チェックのミディスカートを組み合わせたりと、レイヤードを軸にした自由なスタイリングが光ります。
また、祖父母のワードローブから借りたようなチェック柄のテーラードジャケットやレザーのフライトブルゾンには、脱着可能な人工ファーの大きな襟やライニングをプラス。懐かしさ漂う小花柄のツインセットは総スパンコール刺しゅうとビーズフリンジで仕上げ、ブラウスやドレスはフラワープリントのメタルメッシュを作るなど、クラフツマンシップを生かした装飾を日常着に加えています。
最近の「ラバンヌ」は特別なシーンのためのドレスに傾倒しすぎることなく、日常の中にいかにブランドらしさを落とし込むかを探求していますが、特に今季のスタイルはジュリアン自身が最近引っ越して住み始めたパリ北駅周辺からインスピレーションを得たそう。「人々が気取らない様子で行き交い、独自のスタイルに合うさまざまなアイテムを組み合わせているのを見かける。その少しだらしなく、良識と悪趣味が隣り合わせになっているようなアプローチが好きなんだ。そんなアイデアを極限まで追求したかった」と話しました。
クラシックにひねりを効かせた
30周年の「アクネ ストゥディオズ」
今年設立30周年を迎えた「アクネ ストゥディオズ」の今季の出発点となったのは、2010年にロンドンのケンジントン宮殿内にあるスノードン卿(Lord Snowdon)のアパートメントで開いたショー。ジョニー・ヨハンソン(Johnny Johansson)=クリエイティブ・ディレクターは「過去を振り返るのはとても怖い」と打ち明けつつも「古いものとは戦わなければならないという気はしなかった。私は本当に安心で安定した環境を望んでいるし、私たちにとってのヘリテージであるものを、現代的に昇華させたい」と話し、これまで積み重ねてきた歴史から未来を思い描きました。
今季のベースは、貴族的な装いにヒントを得たクラシックで優雅なスタイル。テーラードスーツやボックスプリーツのフレアスカート、コンパクトなケーブルニット、ドレープやプリーツを生かした柔らかなドレス、シルクスカーフといったアイテム、そして伝統的なチェックやレオパード、アンティークなフローラルといった柄使いがカギになりました。ただ、スーツをピタピタのフィット感で仕上げたり、チェックジャケットを襟の付け根に入れたスリットに頭と通して着られるようにアレンジしたり、スカーフをスカートやスーパーロング丈に作り変えたり、カラフルなバイカージャケットやセカンドスキンニットを差し込んだり。「アクネ」らしい捻りを効いかせたデザインとスタイルで現代的に再解釈しているのが特徴です。
そして、1月のメンズでインタビューした際にもクリエイターとの継続的なコラボレーションの大切さについて話したジョニー・ヨハンソン(Johnny Johansson)=クリエイティブ・ディレクターは、昨年パリにオープンしたギャラリー「アクネ ペーパー パレ ロワイヤル」で個展を開いたポール・コイカー(Paul Kooiker)との取り組みを継続。彼が同ギャラリーで展示した美術学生のポートレート作品を大胆にプリントしたスカートやドレスをコレクションに加え、クリエイター集団という理念に根ざしているブランドの姿勢をあらためて示しています。
「ステラ マッカートニー」は25周年
自身の人生をたどるコレクション
「ステラ マッカートニー」は、2001年の設立から今年で25周年。そんな節目ということもあってか、自身の幼少期からさまざまなマイルストーン、そして現在にいたるまでの人生をたどるようなコレクションに取り組みました。ショーの会場となったのは、ブローニュの森の中にある歴史ある乗馬アリーナ。今年が午年であることにもちなみ、23-24年秋冬ショーでもタッグを組んだ馬術家ジャン・フランソワ・ピニョン(Jean-Francois Pignon)と13頭の馬によるパフォーマンスの中でショーを行いました。
動物を愛し、共に生きることを大切にしているステラはブランド設立以来、レザーやフェザー、ファーなどを一切使わないクリエイションで知られ、年々オーガニックやリサイクル・再生繊維など環境に配慮した素材の割合も高めています。今季の提案は、その割合が93%になったそう。きっとモノ作りにはいろんな制約もあると思われますが、そんなことを全く感じさせない豊かな素材感がランウエイを彩りました。
彼女が表現したのは、今季もマスキュリンとフェミニンという二面性のある女性像。ボクシーから絞ったウエストからペプラムが広がるデザインまで多彩なテーラード仕立てのアイテムを筆頭に、ファーライクなコートやビッグマフラー、幼少期を過ごしたスコットランドが着想源のフィッシャーマンリブニット、「ステラ」らしいパワーショルダーで仕上げたシルキーなブラウス、100%リサイクル素材のジーンズ、初期のコレクションのランジェリーからヒントを得たモアレやシャンティリーレースを用いたアイテム、総スパンコールの煌びやかなドレスまでがそろいます。そこにノスタルジックな雰囲気をもたらしたのは、カラフルなクロシェ編みのベストやマフラー、そして1980年代風のスポーツウエア。他のブランドでも見かけましたが、テーラードパンツやインディゴジーンズに加えたスターラップ(土踏まずにひっかけるストラップ状のディテール)は懐かしくもあり、あらためて新鮮にも感じる提案です。
そして最後のルックは、会場にも駆けつけたポール・マッカートニー(Paul McCartney)への愛を感じる「My Dad Is A Rockstar(私の父はロックスター)」とプリントされたタンクトップに、カラフルなビジューをたっぷりあしらったジーンズ。ステラらしいユーモアに思わず笑みがこぼれました。
「ウジョー」は90s音楽に着目
ルールに縛られない精神をスタイルに反映
「ウジョー」の西崎暢&亜湖デザイナーが着目したのは、ファッションに目覚めた1990年代。グランジやポストロックが示した既存の価値観からの逸脱や完成された美意識への反骨をもとに、2人はこれまでに築いてきた同ブランドのコードを見直しながら、自由に着崩したスタイルで表現する新しいエレガンスを探求しました。
とはいえ、ベースは変わらずブランドの象徴であるテーラリングを軸にしたレイヤード。ただ、いつも以上に服に動きやシルエットの変化をもたらすデザインが盛り込まれているように感じます。特に印象的だったのは、ジャケットの前身頃にV字を描くように斜めに加えたファスナー。スカートのサイドにも水平にファスナー開閉があったり、フライトジャケットの袖がボタンで脱着可能だったり、コートの袖がボタン開閉になっていたりと、ますます拡大するルールに縛られないスポンテニアス(自発的)な着こなしを後押しするようなデザインが満載です。
また、伝統的なメンズウエアを想起させるピンストライプや落ち着いた単色の生地を中心とした「ウジョー」らしい生地使いに加えたナイロンフィルムを織り込んだチェック地やきらめくフリンジ素材、繊細なレースが、意外性のあるコントラストを生んでいます。