資生堂のメイクアップブランド「マジョリカ マジョルカ(MAJOLICA MAJORCA)」は6日、ロングセラーの単色アイシャドウ“シャドーカスタマイズ”を5月21日にリニューアル発売すると発表した。Xでは、在庫限りでの販売終了が告知されて以降、ファンによる駆け込み購入の動きや仕様変更をめぐる憶測が広がっており、今回の発表で詳細が明らかになった。
同製品は2003年のブランド誕生とともに登場し、23年にわたり仕様を変えることなく販売されてきた。トレンドや処方の更新が頻繁なコスメ市場の中でも、とりわけカラーコスメでこれほど長期間同一仕様で展開されてきた例は多くない。「マジョリカ マジョルカ」はこのタイミングで見直しに踏み切った。
リニューアルにあたっては、「私たちの覚悟がある。愛されてきた製品を、その価値を損なわずに育て続けていくという強い意識で取り組んできた」(高橋佳子 資生堂ジャパン「マジョリカ マジョルカ」ブランドマネージャー)と強調する。
新たな名称として販売する“マジョスコープシャドウ”(全16色、各880円※編集部調べ)は、より高い密着力やきらめきの持続性を実現した。既存の人気色をベースに「選ぶ楽しさを残しながらトレンドに対応したカラーをそろえた」という。単色アイシャドウの形状変更に合わせ、専用ケース(1320円)も刷新。従来品で指摘されていた開けにくさを改良した。今後は「シーズンに合わせた限定カラーを投入し、新鮮さを保ちながらファンの皆さまに楽しんでもらいたい」と話す。
もっとも、この変更はブランドの方向性を変えるものではない。高橋ブランドマネージャーは「03年の誕生から『かわいい魔法』をかけるという根幹は変わらない」と説明する。刷新の目的はあくまで技術面のアップデートにあり、世界観や価値の軸は維持したまま、使用感や仕上がりの向上を図った。
こうした製品開発の考え方の背景には同ブランドに一貫する方針がある。変えるべきものと、変えてはいけないものを明確に分ける。その姿勢が「マジョリカ マジョルカ」を支えてきた。
「かわいい+毒」が生む中毒性
PROFILE: 高橋佳子/資生堂ジャパン メイクアップマーケティング部 「マジョリカ マジョルカ」ブランドマネージャー

象徴的なのが、ブランド誕生時から続く物語の存在だ。美の女神に選ばれた鳥「マジョリカバード」が“美の伝道師”として、人々に「かわいいの魔法」を届けるというストーリーは03年の立ち上げ以降、一貫してブランドの中心に据えられている。製品パッケージに描かれるロゴやネーミング、さらには店頭コミュニケーションに至るまで、この物語を軸に設計されており、ブランドの骨格として機能してきた。
ただし、「魔法」というコンセプトは単なる演出では成立しない。「『マジョリカ マジョルカ』にとっては“速攻で変身できる魔法”が重要なポイント。ただ、魔法は嘘をつけない。機能面でも魔法を感じられる技術が必要」と、機能面での裏付けを強く意識した技術開発を進めている。
例えば2月に発売した“ラッシュエキスパンダー ネオラッシュ”(全2色、各1760円※編集部調べ)は、カールの持続性とお湯オフという相反する機能の両立を可能にする新たな皮膜剤を採用している。手に取りやすい価格帯でありながら機能性を高めることで、ブランドコンセプトと実際の使用体験の整合性を高めている。
ブランドが重視するのは「かわいい」だけではない。高橋ブランドマネージャーは「そこにひとさじの“毒”を加えた世界観を大切にしている」という。この「かわいい+毒」という設計が、視覚的なインパクトに加え、本能に訴えかけるような感覚を生み出し、結果として差別化につながっている。個性や違和感を含んだデザインやネーミングは記憶に残りやすく、そうした要素が“中毒性”となり、リピート率も高い。ブランド名の「マジョリカ マジョルカ」も“マジョマジョ”と呪文のような愛称で親しまれている。
目元カテゴリーが成長を持続
ビジネス面ではコロナ禍以降、毎年成長を続け、ブランド全体の売り上げは25年においても前年を上回って推移している。成長を支えているのが、目元カテゴリーへの注力だ。売り上げ構成では、まつ毛美容液が最も大きく、マスカラがそれに続く。特にコロナ禍以降、マスク着用によって目元への関心が高まったことが追い風となり、市場シェアを拡大した。
両カテゴリーの25年の売上高はそれぞれ前年比で2ケタ成長を記録している。昨年は、まつ毛美容液“ラッシュジェリードロップ EX”シリーズ(2種)を「すっぴん美まつ毛降臨」と打ち出し、デジタル中心に展開。愛用者やインフルエンサーによる発信を通じて認知拡大や新規ユーザーの獲得につなげ、まつ毛美容液は過去最高のシェアを更新した。
一方のマスカラカテゴリーでは、定番のマスカラ“ラッシュエキスパンダー ロングロングロング EX”をリニューアルした“ラッシュエキスパンダー 孔雀ロング”(3色、各1650円※編集部調べ)が売り上げを押し上げた。繊維がまつげにフィットし、毛先まで長さを強調した仕上がりと高い発色を実現している。まつ毛を全方位に広げる設計で、存在感のある目元を演出する。
また、ファンとの関係性の深さも特徴的だ。現在、約12万人の会員を抱える公式ファンクラブ「マジョリピア(MAJOLIPIA)」は、19年に発足した。「マジョリピア」を通じてユーザーとの接点を持ち、新製品発表会やヒアリングへの参加機会を提供している。ファンは単なる購入者ではなく、使い方や世界観を発信する存在としてブランドの価値形成に大きく関わっている。この構造が長期的な支持の土台となっている。
“日本のかわいい”を世界へ
現在、展開店舗はドラッグストアとバラエティーショップで、専用什器の導入店舗が約5000店、メイクコーナーを含めると約1万店にのぼる。ターゲット層は20代であるが、10代の支持も厚い。手頃な価格帯から、初めて購入するブランドとして選ばれるケースも多い。一方で、ブランド誕生時から愛用する層も多く、幅広い顧客層に支持が広がっている。
海外に目を向けると、日本と台湾を中心に展開しつつ、韓国では越境ECを通じて評価を高めている。韓国ではアイシャドウやまつ毛美容液が人気を集めており、現地のメイクアップアーティストによるSNS発信をきっかけに認知が広がった経緯もある。訪日客が日本で購入するケースも多いという。
高橋ブランドマネージャーは、「大げさかもしれないが、『マジョリカ マジョルカ』は日本の“かわいい”文化の一端を担ってきたブランド。グローバルでさまざまなメイクトレンドが入ってくる中で、日本の“かわいい”はもっと世界に注目されていいはず。その中で『マジョリカ マジョルカ』が先端を走れたらうれしい」と話す。
2026年は、引き続き強みである目元カテゴリーに注力する。上半期はアイシャドウやマスカラを中心に展開し、下半期に向けても新商品の投入を予定している。