毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2025年9月22日号からの抜粋です)
林:年1回の恒例企画・販売員特集で重視したのが量です。一口に販売員と言っても、ビューティも含めていろいろな種類があります。多くの人を取り上げたいと考え、37人の事例をまとめました。
伊藤:私は今回初めて販売員を取材したのですが、何もかもが新鮮でした。これまで年上の方を取材することが多かったので、自分と同世代が頑張っているのを取材できて、良い刺激を受けました。一番驚いたのは、国内外からわざわざ来る顧客がたくさんいらっしゃること。「マウジー(MOUSSY)」の大谷愛加さんには沖縄や広島から、「リズリサ(LIZ LISA)」の加納美幸さんには中国から毎年来てくれる顧客がいるそうです。
“わざわざ足を運ぶ”価値こそ大事
林:SNSの力だよね。今はデジタルで遠くの人ともつながれますが、販売員に必要とされるスキルは本質的には変わらない。わざわざ足を運ぶ価値がある、いい体験ができる――そこを愚直にやっている人は結果を出しています。「メーカーズシャツ鎌倉」の庄子晃功さんは若いのにトラッドファッションに精通していて、「結婚式のために白いシャツを買いにきた人にネクタイ、ポケットチーフ、靴下を売る自信がある」と語っていました。今はなんでもインターネットで買えるけれど、店に来たからにはそれ以上に満足してもらえる接客をして、「また来たい」と思ってもらうことが販売員の真骨頂です。オーダースーツの「カシヤマ(KASHIYAMA)」には、大学の入学式や成人式需要など、若い人が初めてスーツを作りにくるそうですが、生地選びから採寸、フィット感の調整まで時間をかけて販売員と話して作るので、深い付き合いになりやすいです。家族や友人を紹介することもあるそうで、それは信頼の証です。やりがいがある仕事だと感じました。
伊藤:私は、皆さんが販売するブランドが本当に好き、というのも印象的でした。「ジュエティ(JOUETIE)」の竹内さやさんも「ジュエティ」で働きたくて上京したそうですし、ブランド愛にあふれていました。販売員を志望する人が減っていて、業界としての危機感をよく聞きますが、好きなブランドを販売している人は本当にキラキラしていて、素敵だなと心から思いました。