毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2025年12月1日号からの抜粋です)
横山:AIが話題になって久しいですが、業界でどう実際に活用されているのか。どうゲームチェンジしていくのかを探りたいと特集を企画しました。僕自身は、思った以上に業務に使われているというのが、取材してみての感想でした。
本橋:同感です。例えばアンドエスティHDでは店頭での接客で得た「お客さまの声」を店員が自分の声で録音し、その音声内容をAIにまとめさせて、本部にフィードバックとして共有。その結果、情報が多く集まり、商品力が上がって、いい効果が出ているという話を聞きました。AIによって「人がいらなくなる」という世間の論調は当てはまらないと感じました。
横山:ただ、今回AImodel社と協業で表紙のビジュアルを作りましたが、AIを使うと最低1人のクリエイターがいれば世界観を表現できるというのも体験しました。モノ作りのやり方も、変わりそうです。
本橋:そうですね。バロックの「リエンダ」がAIモデル5人に人気の“女神ワンピ”を着せてプロモーションを開始したのですが、服のディテールまですごく精巧に作られていて驚きました。OEM・ODMが主業のレオン・インターナショナルが制作しているのですが、同社が蓄積してきたアパレルの3DCGパターンを活用しているからこそ、リアルに再現できているんですよ。既存の資産にどうAIを掛け算するかが重要ですね。
横山:ともあれAIは人間がどう使うのかが始まったばかりのフェーズ。業務効率化で生産性が上がるから、1人がこなせる業務量としては増えるけれど、質が上がるところまでにはまだ至っていないし、「真にAIを使いこなせていない」というのが現状です。
ヒトが磨くべきは妄想力
本橋:皆さん、「AIは魔法ではない」と語っていました。AIがルーティン業務を代替してくれる分、レオン・インターナショナルの林真吾社長が言うように、人が磨くべきは「妄想力」、つまりアイデア勝負になってくるのでは。
横山:今のところ、自分にひきつけてもAIの原稿はまだ僕よりうまくない(笑)。でも、来年、再来年はどうなっているのか。キャッチアップし続けましょう。