新しいテクノロジーの導入には慎重、ゆえに遅れを取りがちなイメージがある大手ファッション企業。しかし各社で今、企画やデザインといった事業の中枢領域にもAIが入り込み、一般社員の業務レベルでも生成AIの活用が着実に浸透している。余剰業務を削ぎ落としながら、人が担うべき「想像・判断・決定」へエネルギーを集中させる。そんな“人の力”を最大化するAI活用が、次の競争力の源泉になるのは間違いない。(この記事は「WWDJAPAN」2025年12月1日号からの抜粋です)
AIエージェントの代替で
作業時間は半分以下に
ワールドは生成AIプラットフォーム「メゾンAI(Maison AI)」を導入し、業務フローの刷新を進めている。メゾンAIはワールドの完全子会社であるオープンファッションが開発・提供するファッション特化型の生成AIプラットフォームだ。「チャットGPT(ChatGPT)」「ジェミニ(Gemini)」など複数の生成AIモデルによるチャット、AIエージェントの作成・共有、画像生成など幅広い用途に対応する。
実際にメゾンAIで働き方をアップデートする社員の1人が、EC主軸ブランド「クロエンス(CLOENC)」でPR・ECを担当する岡村悠花さん。商品説明やメルマガ作成、販促施策などの実務をほぼ1人でこなす。「これまでECの商品説明を作るのに1型10〜20分かかった。それが今はAIエージェントに写真とキーワードを入れるだけ。作業時間は半分以下」。その分、インスタコンテンツ制作などに時間を使えるようになった。
新規事業担当の常盤和樹さんは、生成AIを使ったブランド作りに取り組む。商品デザイン、ビジュアル、動画、ホームページ制作まですべてメゾンAIで作ったブランド「オーオー(OO)」をこのほどテストローンチした。商品企画は、トレンド情報や作ってほしい色や形をAIに読み込ませ、生成されたデザインを仕様書へ落とし込むだけ。「人間が行ったのは最終調整のみ」。メゾンAIはビジュアライズに強い生成AI「フラックスローラ(Flux-Lora)」を搭載しており、ビジュアル生成は1カット約5分で済み、ディテールカットも自然。価格は自社ブランドや競合の価格情報をベースにした。
これまで複数人が関わるのが当たり前だったアパレルの仕事も、AIの助けで「一人でこなす」ことが現実味を帯びてきた。ワールドは生成AIを軸に、働き方、組織のあり方を変えるフェーズに踏み出す。