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地域住民のインフラを目指す玉川高島屋S・C 濃い関係を築く“なじみの店”に軍配(2023年下半期)

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玉川高島屋S・Cは、買い物を楽しむ場としてだけでなく、心地よい時間を過ごしたり、集えたりする場として、地域住民の“インフラ”となることを目指す。インバウンド需要がほぼ望めないなかでの商況を、東神開発の青木浩営業本部玉川事業部第一営業担当部長に聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2024年2月26日号会員限定特別付録「ビジネスリポート 2023年下半期」からの抜粋です)

WWD:2023年下半期の商況は?

青木:売上高は専門店合計で前年同期比4.5%増、衣料品は同2.5%増だった。夏は上半期からの継続で、長い自粛生活から解放され、マスクフリーの生活楽しみたいというマインドを持ったお客さまが非常に多く、大変好調。セールやプロパーの盛夏物を含めて、夏物は売り切ったという店も多かった。風向きが変わったのは秋物に切り替わった9月からで、気温が下がらず、お客さまの消費マインドが一気に下がったのを感じた。9〜12月だけで見ると、衣料品は同0.7%減。上顧客に向けて1万円以上の購入でハズレなしのクジが引けるキャンペーン施策「タマガワ プレミアム チャンス」を打つなど、9、10月の落ち込みを11、12月で挽回するかたちになった。顧客向けのプレセールが始まった12月後半にアウターも動き出し、数字を作った。 1月12〜15日の「スペシャルデイズ」のセールも同6.5%増で好調だった。セール期でもプロパーの時と同じようにしっかり接客して購入を決めてもらう販売態勢を取れたところ、またこれだけ節約志向が深まるなかで、値引き率を踏み込んだ店が特に好調だった。

WWD:客単価は上がり続けている?

青木:前年同期比で5%ほど上がっており、春夏でも3万円を超えるようになった。レジ客数は微減。衣料品の値上げが続くなかで、まとめ買いが減る傾向も見られており、そこが秋冬商戦で顕在化した流れもある。

WWD:そんななかでも好調な店舗は?

青木:引き続き、ラグジュアリーは好調。特に「シャネル(CHANEL)」「ロエベ(LOEWE)」は伸ばし続けている。ただ、価格上昇にお客さまがついていけなくなっているブランドも出てきているのと、都心の大型店へ回帰する動きも見られる。 ファッションでは、トレンドに左右されず、シーズンレスアイテムが豊富な「スリードッツ(THREE DOTS)」が好調。長い夏にもうまく対応しながら、SNSもうまく活用してお客さまとの関係性を築けている。「トゥモローランド(TOMORROWLAND)」はコロナ禍が明けて、きっちりしたテイストの服が支持されている。ニットや中衣料が好調で、オンオフ兼用アイテムがよく売れた。「ヤヌーク(YANUK)」は、2、3本目のジーンズを買いに来るお客さまも多い。スタイリング提案もSNSで発信しつつ、お客さまからの口コミでの来店もあるようだ。「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」「ビームス(BEAMS)」も堅調。そもそもの品ぞろえが幅広いこともあり、気温に合わせてディスプレーのスタイリング提案など柔軟に対応できていた。「ロンハーマン(RON HERMAN)」は顧客との関係が強く、限定品やコラボ商品など、顧客にマッチした提案ができている。「ミズイロインド(MIZUIRO IND)」も近隣に「トゥデイズスペシャル(TODAY'S SPECIAL)」が出店したことによる回遊性の向上などもあり、好調を維持している。

WWD:ビューティは?

青木:「モルトンブラウン(MORTON BROWN)」「ディプティック(DYPTYQUE)」が継続して好調だ。

WWD:好調店に共通点はあるか?

青木:価格と気温に関しては、いかんともしがたい要因で、アウターが出ないなかでも、お客さまが欲しいものに合わせて、店頭で提案・接客できたところが健闘した。玉川という立地上、近隣に住む方が日常的に利用する商業施設になっている。顔見知りの顧客をどれだけたくさん抱え、濃い関係を築けるかが重要。例えば、着物「東京ますいわ屋」は、顧客に着物を着る機会を提供する食事会を催すなど、“販売”以外で顧客接点を持つ機会を作っている。メンテナンス含めて、そうした施策に取り組んでいる店が着実に売り上げを伸ばしている。同じ商品を買うならば、“近しさ”や“つながり”を感じる人がいる店で買うだろう。お客さまにとって“なじみの店”になれているか、そうした関係作りがうまい店長がいるところが好調だ。

WWD:効果的だった取り組みは?

青木:シューズやバッグ、衣類の不用品と、店頭で使えるクーポンを引き換えるキャンペーンは、お客さま数もクーポン利用率も上がっており、非常に好評だった。過去に何回か開催しているが、お客さまは「まだ持っている」ようで、需要の喚起につなげられたと思う。また、2カ所展開に増やしたポップアップスペースも、お客さまの認知が広がり、内容を楽しみにしてもらっている。1月の「ギャルリー・ヴィー(GALERIE VIE)」のポップアップは月間1000万円以上を売り上げている。シーズンの立ち上がりである9月にポイントアップキャンペーンを打ったが、秋物の購買意欲がわかないタイミングで全く効果が得られなかった。どのタイミングで集客のヤマを作っていくか、再検討が必要かもしれない。

WWD:24年秋に開業55周年を迎えるが、そこに向けては?

青木:今以上に気軽に立ち寄れて、生活のインフラとなるような館を目指していく。ショッピングセンターとして、買い物するための環境が支持されてきたが、館内はやはり少し緊張感を与える雰囲気があると思う。今後はよりリラックス感のある空間も作り、メリハリをつけていく方針だ。具体的には、人々がリラックスできたり、集えたりするような“溜まり場”を作っていく。ショップの入れ替えもあるが、まだ話せる段階ではない。

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