
2023年に新卒で入社した新米記者トッシーが、東コレ取材を初めて担当した。ほぼ全てのショー会場に行き、持ち前の根性で突進取材して得た情報や、いろいろな人やコレクションに笑ったり泣いたりしたドタバタを記録した。東コレをあまり知らなかった新米が、6日間を必死に駆け抜けて見たものとは。(この記事は「WWDJAPAN」2024年3月25日号からの抜粋で、無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください)
3月11日:
「ハイドサイン」で出陣の決心
起きた瞬間から緊張で手汗がじわり。まずは、ユニホームデザイン企業が手掛ける「ハイドサイン(HIDESIGN)」のショーへ。労働着の新たな可能性を感じ、作業着で仕事に向かう実父の姿を思い出して「ファッションと社会は地続きだ」と感極まる。次々とショーに出席しながら合間に記事執筆を試みるも、全く集中できない。「チカ キサダ(CHIKA KISADA)」の後は、東コレ公式車のイケてるBMWに乗り込みひとときのセレブ気分。渋谷百軒店通りに移動し、「カミヤ(KAMIYA)」の商店街ショーのほとばしるエネルギーで元気をもらう。最後は「タナカ(TANAKA)」で、デニムの美にうっとり。あれ、今日はおにぎり1個しか食べていない。
3月12日:
「コウタ グシケン」の漫才式が斬新
「ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)」のバックステージ取材に行きたいが、記事も書きたい。原宿のモスバーガーでギリギリまで作業し、外に出たら土砂降りの雨で絶望した。カメラマンとモデルのオフショットを撮りながら、いい撮れ高にホクホク。次の「コウタ グシケン(KOTA GUSHIKEN)」はショーではなく漫才を披露。ピースの又吉直樹らがブランドの展示会で新作を試着するネタで、思いのほか服の良さが伝わり「新しいショーの形!」と大興奮。昨日からレッドブルを飲みすぎて腹痛に苦しみつつ、「ヴィヴィアーノ(VIVIANO)」の高輪貴賓館に向かう。席に扇のギフトを見つけ、テンションアップ。
3月13日:
「ヨウヘイ オオノ」の香りに放心
「タナカダイスケ(TANAKADAISUKE)」の夢のような世界観に浸ったのもつかの間、運転手さんとうまく落ち合えず、「『ヨウヘイ オオノ(YOHEI OHNO)』に間に合わない!」とアワアワ。そこへスタイリストのコギソマナさんから「私の車、乗る?」と救いの手が。運転席の限られたスペースで、ブランドに合わせた服に爆速で着替えるマナさんを見て「さすが業界人」と感嘆。会場では金屏風の前を歩くモデルを凝視しつつ、必死にメモを取っていると、空間を包む芳香に気づく。おみやげに同様の香り玉をもらえてうれしい。次の「フェティコ(FETICO)」に到着すると、バックステージでカメラマンが撮影準備中。「ショーはみんなで作るもの」と気が引き締まる。
3月14日:
「ミキオサカベ」のショーで激震
朝から「フォトコピュー(PHOTOCOPIEU)」のバックステージへ。マネキンを並べたインスタレーションは、照明も相まって神秘的なムードが高まる。現場チェックに忙しいスタッフのタイミングを測り、なんとか竹内美彩デザイナーへの取材に成功!静かなデザイナーの芯の強さを感じ、同じ女性として励まされた。それから公式車で「タエ アシダ(TAE ASHIDA)」「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」に急ぐ。次の「ミューラル(MURRAL)」では会場内で道に迷い猛ダッシュすることに。ラストの「ミキオサカベ(MIKIOSAKABE)」では開演前の代々木体育館から長蛇の列が伸びており、約3000人が集まったと知って驚がく。ショーの最中に貞子のような衝撃のルックが登場し、黒々とした美髪から目が離せない。
3月15日:
風弦の美声で潤う精神
アラームをかけ忘れ、起きると出発ギリギリの時間。「ミスターイット(MISTER IT.)」のために駅へ全力で走る。会場で「C席はどこ!?」と慌てていると、かわいい案内板が。次の「メアグラーティア(MEAGRATIA)」で、バックミュージックを歌うアーティスト風弦の声に酔いしれ、今朝のハプニングも忘却。ラストの「マリメッコ(MARIMEKKO)」に向けて表参道から上野まで運転手さんに車を飛ばしてもらうも、到着時にはすでにスタート間際で冷や汗をかく。ショー後、SNS担当の同期と公園で夜空を見上げ、「明日も頑張ろう」と励まし合う。
3月16日:
深夜のショーにまい進
最終日は「ヘンネ(HAENGNAE)」で幕開け。会場のブランドロゴを見つめながら怒涛の1週間を振り返り、涙で視界がにじむ。夜に「ソウシオオツキ(SOSHIOTSUKI)」で渋いおじさんモデルにハートを射抜かれた後は、青海に移動。「アンリアレイジ オム(ANREALAGE HOMME)」の舞台裏でカメラマンの写真を確認し、ポップなスタイルにワクワク。最後は「ヒスイ ヒロコ イトウ(HISUI HIROKO ITO)」のため、渋谷に急ぐ。地方出身でいまだに土地勘がつかめず、キャッチの兄ちゃんに泣きつくが「僕も道分からん」と一蹴される。22:30、会場に滑り込み。アートとファッションが融合したショーを堪能し、家路に向かう。お疲れさまでした!