2019年11月にリニューアルオープンした渋谷パルコは、コロナ禍に苦しみながらも23年2月期に当初の目標だった売上高200億円をクリア。今年は渋谷にオープンして50周年というメモリアルイヤーだ。塩山将人パルコ渋谷店店長に上半期の商況と今後の計画について聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2023年8月28日号付録「ビジネスリポート」からの抜粋です)
WWD:2023年上半期の商況は?
塩山:売上高は前年同期比53%増、入館客数同64%増、レジ客数同47%増。客単価は6470円の微増だった。売上高は3〜6月だと同60%増。コロナ禍でブッキングしていたパルコ劇場分を除いて、物販だけで見ると同70%増くらいで伸びており、端的に言って、非常に良い実績だった。7月1〜9日のグランバザール期間中は売上高同90%だったが、それ以降も数字は変わらない。23年2月期の売上高は228億円で、開業時の目標200億円をクリアしたが、今期は300億円を超えると見ている。
WWD:特に好調なショップは?
塩山:伸長率でいうと1階と6階が非常に高い数字になっている。1階は2月に「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」、3月に「ジル サンダー(JIL SANDER)」、4月に「バーバリー(BURBERRY)」がオープンし、3〜6月の売上高は同130%増だった。「ル ラボ」も4坪とは思えぬ売上高を叩き出している。
6階はもともと「ポケモンセンターシブヤ」と「ニンテンドートウキョウ」に凄まじい集客力があることに加えて、さまざまなポップアップ企画もあり、全国だけでなく海外からも来店。「誰かのためにも買って帰ろう」と購買意欲が高いお客さまが多いのが特徴だ。3〜6月の売上高は同140%増と大きく伸ばした。夏休みや「ニンテンドーキョウト」がオープンする10月も盛り上がるだろうと期待している。
3階の「ステュディオス(STUDIOUS)」や「ヌビアン(NUBIAN)」もそもそも売上高が大きいのに伸ばしたし、6月に4階にオープンした美容室「アルバム」もいい感じにお客さまが入っている。5階はゲームや映画のグッズを扱う「トーチトーチ」を5月にオープンしたところ、予想の10倍ぐらい売れている。ファンからするとたまらない商品が並んでいるということで、階段に列ができたりもする。これ以外も正直、前年クリアが当たり前で、どこも好調だ。
WWD:インバウンド需要については?
塩山:23年2月期に関しては、海外発行カードと免税額を足した海外想定売上高が全体の中の12%だった。しかし、3〜6月で見ると約29%。直近の6月については33%で前年同月の約11倍。前年の3〜8月はまだインバウンドは全然戻っていなかったが、今、過去最高を更新している。今期売上高300億円を超える予測だが、100億円くらいがインバウンドになるかもしれない。国別では1位が香港を含む中国で、2位が台湾。9月29日からの中国の国慶節の連休にはさらなる訪日があると期待している。
WWD:今年は渋谷パルコが開業して50周年だ。
塩山:6月14日が50歳の誕生日。6月下旬に、9階のドミューン(DOMMUNE)と共同開催で、コーネリアスやサカナクションの山口一郎らの限定ライブを行ったが、大丸松坂屋の外商のお客さまにも一部声掛けしたところ、大変好評だった。今後、大丸松坂屋およびギンザ シックスとの連携がグループとしても期待されている。11月に周年祭を予定している。盛大に盛り上げたい。
WWD:周年記念以外の今後の計画は?
塩山:3階については今秋、世界一号店になる店や、某ラグジュアリーブランドが最近まで路面で展開していたアートカルチャーの店、某ラグジュアリーブランドのクリエイティブ・ディレクターによるフラッグショップなどを入れていく。11月には1階にトップメゾンを導入予定だ。また、スペイン坂下の渋谷ゼロゲートには「コメヒョウ」が出店する。
WWD:課題と感じている分野は?
塩山:インバウンド客への対応だ。コインロッカーの場所の問い合わせから、タクシー手配やレストラン予約の依頼までさまざまな要望があるので、そこに応えられるサービスレベルを保ちたい。また、海外への発信も強化したい。ライバーの専属化も進んでおり、週に5、6本のペースで配信している。パルコだけで個人で1億円売るライバーもいる。越境ライバーの顧客が日本に来るようになったら、彼女たちにツアコン機能を担ってもらい、渋谷パルコで買い物を楽しんでもらえるようにしたい。中国で人気のSNSレッドに公式アカウントを持つ計画。コンテンツが命で、私たちはそこに時間と労力を割くべき。そうしたコンテンツをTikTokも含めて、プロにアウトソースしながら海外に向けても情報発信したい。