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エスティ ローダー、免税市場の復調見据え新流通センター開設

 エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES、以下ELC)はこのほど、スイス・チューリヒ郊外のガルゲネン(GAlGENEN)に、世界中のトラベルリテールチャネルに対応する最新鋭の流通センターを開設した。トラベルリテール向け商品供給の倍増を目指す。

 ELCのファブリツィオ・フリーダ(Fabrizio Freda)社長兼最高経営責任者(CEO)は、ガルゲネンで米「WWD」が行った独占インタビュー「(新流通センターは)今後のトラベルリテールの成長を支えるために建設した」と語った。同センターの開設により、取扱量が増加するだけでなく輸送の質も向上するという。約2万8千平方メートルの広大な敷地では自動ロボットと人間が同居し、たくさんの箱がベルトコンベアを流れる。高さ20mの未来的な倉庫は、さながら金属製の格子のようにも見え、箱を積載したトレイを34万枚以上保管できる。

 空港やダウンタウン、航空機内、クルーズ内、国境などに広がる免税販売を扱うトラベルリテール部門は、コロナ禍で大打撃を受けた。2020年前半から、世界各地で旅行がほぼストップし、免税店の売り上げも急降下した。トラベルリテール業界を専門とするリサーチ企業、ジェネレーション・リサーチ(Generation Research)の調査によれば、コロナ禍前の19年、業界の総売り上げは前年比9.8%増の863億ドル(約11兆6343億円)にのぼった。そのうち、フレグランスと化粧品は最大の商品カテゴリーで前年比20.1%増の376億ドル(約5兆689億円)の売り上げを担っている。ジェネレーション・リサーチによると、免税店全体の売り上げは24~25年ごろにコロナ前の水準まで回復する見込みだという。しかし、ELCの回復ペースはそれ以上に速い。

 フリーダ社長兼CEOは、「コロナ下、世界各地の空港での免税店の閉店、渡航制限にもかかわらず、トラベルリテールチャネルは成長を続け、2019年よりも大幅に拡大している」と話す。1年に述べ30億人以上の消費者と接触する機会のあるトラベルリテール事業は、ELCの中でも特に成長が著しく、21年度には総売り上げの28%を担った。中国、特に海南島でのビジネスが貢献している。海南島は、中国政府の離島免税制度の対象となっており、「ゼロコロナ政策」のため国外に出られない国内旅行者も利用できる。

 「この島を訪れる中国人の数はすでに19年の国外渡航者を上回っており、特にコロナ禍の初期には欧米諸国での旅行の落ち込みをほとんど埋め合わせてくれた」とフリーダ社長兼CEOは説明する。しかも、国外渡航者はたいてい大都市から出発するのに対し、海南島には高級品が流通していない中小都市からのショッピング客も多い。「海南島への旅行者は、ビューティ業界にとってボーナスのよう。海外旅行は(中国人の約20%にあたる)パスポート所有者しか楽しめないが、国内の免税店はすべての中国国民に開かれている。パンデミックが収束すれば、海外からの海南島訪問者も増えるだろう」とフリーダ社長兼CEOは語り、世界有数のぜいたくなショッピング環境も整いつつあると説く。

 ただしELCは、現時点で全てのブランドを中国で展開できているわけではない。それでも自社を「海南島のマーケットリーダー」と称するフリーダ社長兼CEOは、「トラベルリテール全般、特に海南島にはまだまだ可能性がある」と話す。加えて中東やブラジル、インドネシアなどの新興市場からの旅行客を筆頭に、海外旅行自体の伸び代も大きいと分析する。ポイントは、1人あたりの購入額はもちろん、旅行だけでなく買い物を楽しむ人を増やすこと。買い物も楽しんでもらうには旅行前からのアプローチが重要だ。航空券を買った段階で商品を購入して空港や機内で引き取るサービスは、アジアではすっかり定着しているが欧米では普及していない。「利便性の向上で1人あたりの購入額が増えると共に、買い物を楽しむ人さえ増加すればと胸が高鳴っている」と期待を寄せた。

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